クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

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ペッテション=ベリエル 交響曲第2番

2011.08.01 (Mon)
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ヴィルヘルム・ペッテション=ベリエル(PB)は日本では知られているとは言えないので
ウィキペディアをもとにまずその人となりから。

PBはスウェーデン北部のボスニア湾に面する海岸のウランゲル(Ullanger)で1867年に生まれ、
北部のヴァステルボーテン(Vasterbotten)海岸で
学校生活を送った。
音楽の素養は母から受け継いだ。
母がベートーヴェンの月光ソナタを弾くのに聴きほれたのが、最初の音楽体験とされている。
1886年にストックホルムの王立音楽大学オルガン科に入学。
すぐに作曲科で学ぶことも認められた。

1895年秋にストックホルムへ移り、翌年には、スウェーデンの大手新聞
ダーゲンス・ニュヘテル(Dagens Nyheter)の音楽評論家として1930年までそのポストにあった。
彼の批評は正直であるが刺があり、評論は大衆に受け入れられて読まれたが、
同時に敵意と嫉妬を煽った。(ニックネームはPeterson-Bitter)

この時期の大規模作品で最初から認められたのは、5曲の交響曲のうち
第3番『ラップランド』、歌劇は『アルンヨート』だけだった。
同時代の作曲家ヒューゴー・アルヴェーンとヴィルヘルム・ステーンハンマルと比べると、
どうしてもその影は薄い。

1914年にイェムトランドのストゥーシェン(Storsjon)湖にあるフレースエー(Frösö)島に
別荘「ソンマルハーゲン」を作り、自分では世界で最も美しい景色の土地と称していた。
1930年より、その地に永住した。

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1896年にピアノのために8曲の小品を発表し、作曲家としては成功したと見なされる。
その作品が『フレースエー島の花々』である。
この作品はエドヴァルド・グリーグの『叙情小曲集』を彷彿とさせ、
さらにシューマンの影響を見ることができるが、すでにペッテション=ベリエルの作風が
明瞭である。すなわち、表現力豊かな旋律、新鮮で独特な和声、柔軟なリズムなどである。

1942年12月にエステサンドの病院で逝去。
病室の窓からは、遠くフレースエー島を望むことができたという。

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さて、そんなペッテション=ベリエルの音楽でまず私が親しみ大好きになったのは
交響曲第2番。「Sunnanfard」というスウェーデン語の副題がついており
「旅は南風にさそわれ」とか「南風への旅」とか訳されているがどんぴしゃりの言葉がない。
作曲者の意図したものは、旅の情景描写ではなく
北欧の若者が南の智(ギリシャ哲学など)に触れ成長する過程を表しているようだ。

この作曲家は辛辣な評論家として名を馳せたというが、この曲を聴く限り心やさしい人という
感じしかしない。きっとシャイだったのではないだろうか?
ともかく、芸術はひとたび作品として成立してしまえば
作曲家とは独立した存在、対象となると考えるので彼の評論家活動はどうでもよい。

私はLP時代(写真一番左)にEMISvenskaからでたウエステルベリ指揮
/スウェーデン放送交響楽団のこの曲に接し魅せられた(1977録音)。
陽光射す大海を小さな船が航海をしているジャケットだ。
このジャケットを見つめながら、茫洋と始まりワクワク感を横溢させながらも
開けっぴろげでなく、北欧らしい抒情を持ったこの曲を楽しんだ。

CD時代になり、PHONE SUECIAから同盤が復刻され(写真中央)、
CPOからはミハイル・ ユロフスキ指揮 ノールショッピング交響楽団(1998)でも
愉しめるようになった。
穏やかな前者に対し、よりメリハリのある後者となるが、どちらも素敵だ。

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音楽の概要は下記の通り。但し内容を別に知らなくても音楽だけ気持ちが優しくなる。


第1楽章 北欧の若人が希望に満ちて南方に旅立つ音楽。
<なぎ>アンダンテ。ゆったりした序奏で希望が高まる。
<航海>アレグロ。風が吹き旅が始まる。若き熱意は前向きで楽天的ですらある。
穏やかな高揚を繰り返し太陽への賛歌でこの楽章は閉じられる。
マーラーの「巨人」の第1楽章のコンセプトを森から北欧の海に置き換えた胸が膨らむ音楽だ。

第2楽章は南国にて古代ギリシアに思いを馳せる。
<薔薇の街>ヴィヴァーチェ。オリエンタルで活気ある開始。
<デュオニソスの行進>陶酔的・激情的芸術を象徴する神。リズミックでワクワクする。
<エロスの寺院>モルト・アダージョ。は恋愛の神。音楽が鎮まりノスタルジックなムード。
何とも甘く切ない。
<饗宴>はプラトンの対話をモデルにする。愛についての語りがとめどなく続く。
感傷と恍惚と快楽と活気が入り交ざる。
まぶしい光に包まれながら逞しく閉じる。

第3楽章は北欧の故郷に戻る若者。
<ホームシック>アンダンテ。民謡風の北欧バラードで寂しく始まる。
<南からの風>アレグロ。明るく調和的。第2楽章の愛のテーマなどが回想される。
ワーグナー的フレーズも垣間見えるが基本は繊細な心は持っている。
彼はもはや以前の彼ではない。自由な視野、アポロ的なスケール、自然な素朴さ、
大きな抱負を抱いて帰還する。曲は全てを包含する優しさを持って終結。

この曲は交響曲としての構成としては異色だが、交響曲的要素は備えている。
壮大な叙事詩だが、主役は一人の若者の精神の成長だ。

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