クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Mahler Sym9 の記事一覧

マーラー 交響曲第9番 シノーポリ(93)

2013.01.10 (Thu)
シノーポリマーラー9
シノーポリ/フィルハーモニア管弦楽団(93、DG)は腑わけ的。
この曲のもつやや草臥れたムードを振り払うかのような演奏。
問題はそれが人の心に届けばよい。私は最後まで微妙な距離感を払えなかった。

録音はオールセインツ教会での録音。
通常のコンサートホールとは趣の違う明晰な音と奥行きが特徴。
ブルートーン。対抗配置で左右に音像が拡がる。

第1楽章はくっきり隈どりの効いた音楽。
アクセントは明確でスッキリ整理された音は硬質なクリスタルを思わせる。
怒涛の音響に結構聴き疲れする。
バーンスタインのような炎でなく無機的でメカニカルな印象。
音を曖昧にぼかさず第一音のエッジを効かせる。
弦のフレーズも刻みを浮き立たせる。敢えて流麗さでなくギクシャクさせる。

第2楽章はタタタタタッタというフレーズが沢山出てくるが
独自のアクセントをつけて見せる。安らぎやおどけた感じはあまりない。
後半のゆがんだワルツは金管の強奏を含め多様な音が衝突。鮮烈な印象。

第3楽章もここでも個々の楽器は目覚ましい動きをするが、
しっかり統率され勝手な動きがない。
各パーツの動きが際立つので聴きなじんだこの曲も、
こんな鳴り方をするんだ、と感心することしきり。

終楽章も小節単位で区分けされる。フォルテでは容赦なく盛り上がる。
それぞれの音はしっかり立っていて夢幻性や諦観を感じさせない。
しゃっきとしている。独自の符読みは時々聞える。
代表は終結のモルト・アダージョの3:30。弦の不思議なグリュサンドが聞える
(最初は外でサイレンが鳴っているのかと思った)。
最後のアダージッシモに入ってからも不思議な啜り泣きは聞える。
終結はセッション録音の強みを生かし、恐るべき静寂の中で閉じる。

28:09  15:12  13:16  25:54   計 82:31
演奏  A-   録音 91点

マーラー 交響曲第9番 ザンデルリンク(82)

2012.11.13 (Tue)
ザンデルリン9bbc
ザンデルリンク/BBCフィルハーモニック(82、BBC)は骨太の音楽。
最初から最後までどっしりした安定感が素晴らしい。

録音はマンチェスターのBBCスタジオでの収録。
アナログ収録、放送用音源でヒスはあるが全体は癖がなく聴きやすい。

第1楽章はポツリポツリと語る様に始まる。淡々と進み録音も手伝い地味な印象。
一種の虚無感が漂う。全体的に太い筆致でことを進めている。
しかし、後半には躍動感が出始め、迫力が亢進する。一発どりのライブの感興がある。

第2楽章も素朴な風情が漂う。真面目にダンスする田舎のおじいちゃん。

第3楽章は図太い音が押し出してくる。そして情熱的だ。

終楽章もおおらかな流れ。慟哭することなく、まっすぐ進む。
しかし何だろう。小手先で何かをやっていないこの安心感。
この人についていけばなんとかなるだろう。そう、包容力。
神経質なとこがない。徐々に音が強くなりぐいぐい来る。
繊細な美感を求めると違うが、本質は何かを考えさせられる。
そして最後は癒しに包まれる。

25:59  15:39  12:37  23:28   計 77:43
演奏  A  録音 84点

マーラー 交響曲第9番 ザンデルリンク(82)

2012.11.12 (Mon)
ザンデルリンク9
ザンデルリンク/北ドイツ放送交響楽団(87、En Larme)は、なかなか聴かせる。
マーラーの10番(クック版)を早い段階で録音し、かつすばらしい演奏だったため
彼の9番にも注目していたが、世間の評価は今ひとつ。
のっぺり、無表情、というもの。
そのためためらっていたが、北ドイツ放送交響楽団との珍しいライブ(CD-R)を
中古屋で見つけたので買ってしまった。

録音はハンブルグ。この手のものとしては良好。

第1楽章、全然無表情ではない。しっかり表情が付いている。
テンポもインテンポではない。緩急がある。
どちらかというと硬派な感じではあるが。
しかし、なにか不思議な魅力のある演奏だ。音はピークでややざらつく感じはあるがまとも。
ヘッドフォンで聴いても問題ない。
しかし、第3楽章には謎のカットがある。313小節から346小節に飛んでしまう。
編集ミスとは聴こえず意図的にやっているようだが、意図がわからない。
ここだけカットする理由は不明。やはり、CD-Rの制約で編集カットかも。

第4楽章は結構情熱的で高揚する。
こうなると正規盤の2種が評価されない理由が知りたくなる・・・。

25:32  16:40  12:12  24:52   計 79:16
演奏  A  録音 85~89点

マーラー 交響曲第9番 バーンスタイン(79)

2012.10.28 (Sun)
バーンスタインボストン9
バーンスタイン/ボストン交響楽団(79、Memories)は
かのベルリンライブの2カ月前のもの。
非正規盤なので参考試聴。
ベルリンフィルとの演奏がいかに特殊なものだったか確認できる。
バーンスタインといえども年がら年中あのような演奏をしていたわけではないのだ。

録音は79年7月29日のタングルウッド音楽祭でのライブ。
覚悟して聴けば、覚悟よりましな音だった。
ただし、音は遠方で引っ込み丸くなり、
演奏自体の迫真性は録音によってスポイルされているだろう。

第1楽章冒頭のホルンから気配がベルリンのものとまるで違う。
6分台のピークの狂気がこちらではかなり穏やかに聴こえる。
というかベルリン盤のほうが異常なのだが・・・。
徐々に熱気を帯びるが、ボストンの柔らかい音と金管の明るさが心を痛めつけない。

第2楽章は始まっていきなりドスンという音。
バーンスタインの足踏み音???聴くほうは、驚く。
ここでもベルリンをいじめつけたような強引さはない。
ウン・チャッチャのリズムがユーモラス。アメリカを感じる。
この楽章の主要モチーフのタタタタタッタという上昇音型の奏し方も
ベルリンとはかなり違って聴こえる。

第3楽章は鬼気迫るものでなく、65年盤に近い印象。
聴衆のくしゃみなどが入っていて朗らか。
最後のアッチェレはやってます。

終楽章は優しいボストンの弦が癒す。ヴィヴラートをかけて情感を込める。
時折指揮者に起因すると思われるドスンドスンが聞えるが、音楽自体は荒れていない。
この足音、ベルリンと大体同じ所で鳴っている。
弦がグワッとユニゾンで出るところだ。指揮姿が目に浮かぶ。
テンポは65年盤より遅くなりベルリン盤とほぼ同じ。
しかし、音楽の印象はかなり異なる。
こちらの演奏は心を掻き乱すのでなく浄化してくれる。本来はこのような曲。

演奏終了後、数秒後に一人だけフライング拍手して、
やばいと思ったのか拍手を止めた後に万雷の拍手。

28:48  16:46  12:30  26:30   計 84:34
演奏  参   録音 79点

マーラー 交響曲第9番 バーンスタイン(79)

2012.10.27 (Sat)
バーンスタインBPO9
バーンスタイン/ベルリンフィル(79、DG)は狂気・殺気を感じる。
この演奏は「一期一会の名演」と言われることもあるが
そんな生易しいものではない。
手兵をここまで掻き回されたのではカラヤンもたまったものではないだろう。

録音はベルリン・フィルハーモニーでのライブ。
このテイクはベルリン芸術週間でアムネスティインターナショナル主催の
演奏会(10月4日)のもので、ベルリンRIAS放送協会によって収録された。
アナログ&放送局音源でDレンジはほどほどながら破綻のない出来。
低域の量感少ないため少し補強したら迫真さが増した。
リマスターは上手くいっておりヒスは除去。生々しい音が聴ける。
バーンスタインの声が近くで聞えるので
指揮台の上に吊り下げマイクでもあったのだろうか。

第1楽章の出だしから果てしない表現意欲。
ホルンはいきなり黄昏、弦はひきつる。バーンスタインの呻き。
6:40のクライマックスでは金管とシンバルの最強音で耳が痛くなる。
その後の静けさの落差。煉獄の荒涼とした風景。
悶絶が繰り返され聴き手はこの楽章半ばで呆然状態に陥る。
ほかの演奏とは隔絶している。

第2楽章もグイングインスイングしている。かなり強引。
ぎくしゃくしたこの棒にベルリンが必死に食らいついているが所々崩壊する。
死闘だ。

第3楽章はこの指揮者の特殊性が出る音楽。
65年盤からして異常な焦燥感を伴っているが、この演奏は破綻寸前のスリル。
しかし、この楽章はかくも巨大で覆いかぶさってきて良いものだろうか?
終結の渦巻くアッチェレランドはやっぱりやってくれた。

終楽章は弦楽が濁るのもお構いなく強奏させたり相変わらず、情念の塊。
14分台に見られる弦楽と金管の分離など探せば瑕疵は見つかるが
そうした探索はあまり意味がない。
大きな流れに身を任せるとき魂が震えてしまう。
気がつくともう最期の瞬間になっていた。

この演奏は評価とかいう範疇からはずしたい。
ただ、こんな演奏もあるのだということは知るべきなのだろう。

27:37 15:54 12:05 26:11 計 81:47
演奏  *   録音 88点
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