クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Walton Sym1 の記事一覧

ウォルトン 交響曲第1番 C・デイヴィス(2005)

2018.02.13 (Tue)
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C・デイヴィス/ロンドン交響楽団(2005、LSO)はメガトン破壊力。
火山の噴火?のようなジャケットは正鵠を射る。
聴後の疲労感はMAX。
ただでさえ聴くのに体力のいる曲だが、この演奏を聴く場合はリポDが必要。

デイヴィス(1927~2013)のヘビーで真面目な音楽づくりと
バービカンのゴツゴツ直裁な音響が相まって独自の世界。
押し出す重量感が半端ない。ハイティンクが50分を超える大演奏を行っていたが、
こちらはテンポはそこまで遅くないが心理的な重圧感ではそれを上回る。
それにしてもC・デイヴィスは晩年に向かって
どんどん恐るべき巨匠になっていたと実感する。
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第1楽章冒頭からガラガラドッカン。
この演奏が凄いのは音楽が静まった時の異様な緊張感。
テンポを遅くして、指揮者はがしきりに唸り声を出しながら音を絞り出す。
譜読みは生半可ではなくフレーズ毎に入魂の表現。
終結部の微妙な見栄の切り方など大指揮者の貫禄。

第2楽章はスピードではなく、圧迫感で攻める。
”Presto、con malizia”!!まさに苛立ちの音楽だ。

第3楽章は鬱蒼とのしかかる。くっ、苦しー。
1934年初演は作曲者の恋愛の破綻を受けて完成できず
第3楽章までで行われたが、ここで終わってしまうとほんとに絶望しかない。

終楽章は解放の音楽、のはずだが軽くはならない。
オケも指揮者も恐るべき体力だ。フーガでは指揮者がウッウッと言いながら
各パートにキューを出している。其々場面の描き分けがほんとに素晴らしい。
最後は感動というより打ちのめされる。

この演奏を一般的にこの曲を最初に聴く人に薦めるかは迷う。
しかし、この曲が好きな人には一度は聴いてみて、というのに躊躇いは無い。

録音はバービカンセンターでのライブ。客席ノイズは無く拍手もカット。
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好き嫌いは分かれる音作りだが、迫真の音がする。
音響はデット気味で生易しくなくマスで近接。これも疲れる要因ではある。

14:47  6:40  11:40  12:52  計 45:59
演奏   S    録音   93点

ウォルトン 交響曲第1番 ハンドリー(88)

2018.02.12 (Mon)
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ハンドリー/ボーンマス交響楽団(88、EMI)は大らかな中に巧みな情感描写。
旧盤(78)はウォルトン(1902~83)に存命中に録音されたが、
本盤はその10年後デジタル時代になり再録音された。

この曲は非常に大迫力で聴き映えするのでデジタル時代になって
どっと録音が増えた。そして素晴らしい演奏が多くて困ってしまう。
この盤もその一つ。

指揮者は還暦手前だが全く老いは無い。
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録音会場は旧盤のアコースティックと全く違い豊かな響きがある。
そのためヒステリックさは影を潜め一段とスケールを増している。
それ以上に音楽の彫が深くなっている。
上っ面で吠えるのでなく各フレーズを丁寧に描く。

英国ナンバー1の幸福度の高い街にあるボーンマスのオケも素晴らしい。
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第1楽章ひたひたと押してくる。ホールの関係で音は溶け合い飛び出さず、
全体でマッシブ。チューバの強奏が無頼派の面目躍如。
第2楽章も6分を切るスピードだが安定感あり。
第3楽章も間延びせず深い呼吸感。
終楽章は晴れやか。テンポは速めだがせこせこしない。
ブラスセクションの音がいい。広大な終結。

録音はプールアーツセンター内ウェッセックスホールでのセッション。
The Wessex Hall, Poole Arts Centre (now The Lighthouse), Poole, Dorset
イングランド南西部ドーセット州にあるこのオケの本拠地。
イギリス有数のリゾート地ということだが伸びやかで豊かな音。
ロンドンには無いような響きを持つホール。
ボーンマス交響楽団の印象はこのホールの音と被る。

13:41  5:59  10:30  12:25   計 44:33
演奏   A+    録音  92点

ウォルトン 交響曲第1番 ウォルトン(59)

2018.02.11 (Sun)
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ウォルトン/ロイヤル・フィル(59、BBC)は作曲者による指揮。
ウォルトン(1902~83)は自作の指揮に自信を持っていたようだ。
この交響曲第1番も難しい曲だと思うが愛着があってかよく取り上げていた。
彼の中では青春の苦悩の曲であった故大切にしていたのかもしれない。

本盤の演奏はそっけないほどのテンポで行く。割と淡々としている。
録音も古く演奏に疵もある。曲だけならば他盤で良い。
ただ、聴いているうちにこの作曲家の破天荒人生を振りかえってしまった。

ウォルトンの人生の節々には女性がいた。

1923年作曲の出世作「ファサード」は当時居候していたシットウェル家の
娘イーディス(Dame Edith Louisa Sitwell 1887~1964)の詩を
もとにした共作。彼の成功物語の出発点に女性ありだ。
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そうこうしているうちに1929年には色男ウォルトンは
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若いドイツ貴族の未亡人ドーンバーグ( Imma von Doernberg)と
恋に落ち1931年にはスイス南部のアスコーナで同棲を始めてしまう。
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このためシットウェル家など周囲との関係はこじれ、
また彼女も結局は医者のティボル・カサト(Dr Tibor Csato)
になびいて去ってしまう。
(↓しかしこの医者も英国女優Diana Wynarと結婚してしまうのだが・・・)
Diana Wynard Dr Tibor Csato
ともかく、 こうした恋路葛藤の中で進められた第1交響曲の作曲は
結局第3楽章で暗礁に乗り上げてしまう。
なかなか作品が進捗しないことに業を煮やした初演予定者の
ハミルトン・ハーティーは1934年12月に第3楽章までで初演を決行。

こうした困難はあったが、1935年に23歳年上のアリス(Alice, Viscountess Wimborne)の
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愛を得て精神の安定を取り戻し、ようやく終楽章が完成する。
女性に苦しめられ、女性に救われる・・・。
この交響曲の先行する怒りと哀しみの3つの楽章に比べて、
第4楽章はどこか軽やかなのはこうした心模様を映しているのかもしれない。

1948年にこのパートナーが癌で亡くなると、直後に25歳年下のアルゼンチンのライター、
スザンナ(Susana Valeria Rosa Maria Gil Passo、1926~2010)と出会いがしら結婚。
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イタリアのナポリ湾のイスキア島に移住して亡くなるまでの30年以上暮らすことになる。
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記録映画「William Walton - At the Haunted End of the Day 」(1981年製作)では
彼の回想とともにこの島で仲良く手を繋いで散歩する二人の光景が映される。
William Walton - At the Haunted End of the Day
めでたしめでたし。

録音はエジンバラ音楽祭ウッシャーホールでのライブ。
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モノラルでBBC放送用音源だと思われる。
聴きやすいが参考記録ということになろう。

13:03  6:08  9:53  12:13   計 41:17
演奏   人   録音 75点

ウォルトン 交響曲第1番 ハンドリー(78)

2018.02.10 (Sat)
waltn handley 1978
ハンドリー/ロイヤル・リヴァプールフィル(78、ASV)は真実の力。
スマートではないし巧いとも思わないが迫るものがある。

ハンドリー(1930~2008)は英国の指揮者の中では無骨無頼派の印象。
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音楽を綺麗にまろやかにまとめるというよりも骨格を剥きだすことも厭わない。

第1楽章など格好良くない。音は軋みガタピシャいいながらぶつかりあう。
デッドな録音も相まって非洗練。でも地面をどしどし四股踏むような迫力。
第2楽章プレストも苦しげ。
第3楽章は振り絞る。
終楽章はブラス王国。アンサンブルは完璧とは言えないが細部ではなく
ブルドーザー型に押し切る。
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録音は本拠地フィルハーモニーホールでのセッションか。
イギリスのオケで唯一自前のホールを持っているので。
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レコーディング・エンジニアにトニー・フォークナーの名前があるが
彼の後年の録音とはかなり違うデットで直裁な音の録り方。
ASVのものは割とこんな感じが多い。
アナログ時代であり余裕もそれほどない。

13:59   6:04   10:39  13:11   計 43:53
演奏   A+   録音  87点

ウォルトン 交響曲第1番 ラトル(90)

2018.02.09 (Fri)
walton rattle
ラトル/バーミンガム市交響楽団(90、EMI)は流石の出来。
かっこいい曲を恰好良く仕上げてくれる。

バーミンガムのオケの機動性を最大限に発揮。
ともすれば冗長になるこの巨大な曲を劇性豊かに再現。
rattle cbso
ここまで来ると・・・さらに欲が出て
EMI以外の録音でベルリンフィルとのコンビで聴きたかった。
重厚さと奥行きが加われば無敵だから。

第1楽章は颯爽とした中に巧みなアクセントをつけていく。
もっと極端にしてもいいかもしれないとも思うが、そこはラトルの音楽性。
大きな起伏を大事にする。

第2楽章プレスとは快速。でもスラトキンみたいな無茶苦茶ではなく
限界は超えない。リズム感が抜群。オケもよくついていく。

終楽章もいい感じで走る。それもリズムと区切りが効いている。
終結部は追い込みをかける。そして最後は大きく間を獲り叩きつける。

録音はワーヴィック大学のバターワースホールでのセッション。
録音時平均の水準は確保。音響条件も悪くない。
ただ他のレーベルだったらどうだろうと思わせるところがEMIの悲しさがある。

14:23  6:04  11:11  12:26   計 44:20
演奏   A+    録音  92点
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