クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Mahler Sym5 の記事一覧

マーラー 交響曲第5番 ジンマン(07)

2012.11.27 (Tue)
ジンマン5
ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(07、RCA)は
クリーミィーで密やかなマーラー。ジンマンらしい新しい切り口を提案。
ピリオド奏法はやめて、一音一音ヴィヴラートをかけながら伸ばして歌う。
よって演奏時間は長いが、だれていないので遅いと感じない。
全く以って今までにない感触。

録音は本拠地ホール。透明感があり響きは量感もある柔らかいシルク系。
最近の録音はライブが多いが入念に作られたセッション。
ジンマンの録音はどちらかというと直截的でスリムな音が多かったが
マーラーはまるで傾向が違う。きっちり使い分けているところが才人らしい。

第1楽章はものすごい繊細さで進行する。
泡立ち蕩けるウィンナコーヒーをそっと壊さぬように運ぶ。
乱暴なところは一つもなく慎重なテンポでフォルテを丸くしながら。
そこに漂う不思議な脱力感、デカダンの香り。
マゼール/ウィーンにも同じようなムードを感じたが、こちらは一層洗練ソフト。
最後のピッツカートも抑え込んだ音。

第2楽章も抑制した身悶え。身悶えというより、心のうつろい、という風。
決して絶叫しない。

第3楽章も甘くポルタメントで切なく。なんとセンチな表現だことか。
金管を奥にしまい、むき出しの音を出さない。
ワンフレーズワンフレーズ丁寧な仕上げ。

第4楽章もぐっと音量と表現を抑制したうえで磨きをかけた美しさ。
ひそひそ泣く。

終楽章もパワーで押さず丁寧に解きほぐす。
勢いでなくそれぞれのパーツを艶やかに磨く。濃厚ではなく爽やかな風。
対抗配置のヴァイオリンの掛け合いがさらさら決まる。
音はダンゴになることなくスッキリ終わる。
ガツンと感動させるタイプの演奏ではなく感覚を刺激する演奏。

13:22   15:25   18:44   10:45   15:22   計 73:38
演奏  新A   録音 93点

マーラー 交響曲第5番 シップウェイ(94)

2012.10.04 (Thu)
シップウエイ5 (←保有盤    最近のSACD盤→)シップウエイ5 (2)
シップウェイ/ロイヤルフィル(96、RPO)はこの曲で一番好きな盤。
潔さと清らかさ、そして華がある。

この盤は近所のドラックストアで315円で売られていたのを見たことがあるが、
価格と内容がこれほどかけ離れているCDも少ない。
私は「ロイヤルフィルハーモニックコレクション」シリーズ(実売1000円)を
昔、買い漁ったことがある。まったく無名演奏なのに録音が極めてよく、
その中に滅法優秀で個性的な盤が隠れていたから。
もしこの盤を315円で入手されて後悔するような方がいたら
私が弁償して差し上げたい。

録音はワトフォード・コロセウムでこのシリーズ特有のクールで
透明感を伴った名録音。情報量が多くDレンジも広くヌケもよい。

第1楽章のトランペットの音を聴いただけで引き込まれる。空気の音がよい。
一撃は限りなく突き抜けるが、抒情的な場面に来るとヒンヤリ泣く。
この対比を聴くとこの指揮者のノーブルな感性がわかる。

第2楽章も上品でドロドロしない、のに落差が大きい。
感情移入しすぎると凭れる。さらりとやりすぎるとサーカス。
この演奏は不思議なことに情感と音響を両立している。

第3楽章は何といってもロイヤルフィルの名手ジェフリー・ブライアントの
スカッとするホルン。天を駆ける。やりすぎなほどのこの威勢は最高だ。
この素晴らしいホールで音を割らんばかりの最強音で朗々と鳴るホルンを
聴くだけで爽快になる。打楽器群も痛快。

第4楽章アダージョがまた絶品。
キーンと冷えた空気の中、抑えた弦がたおやかに進行。
この慎ましい情感の表出が英国の良さなのだろうが、これは北欧・日本にも
通じる感性だと思う。音は夢見るように儚く深淵の中に消える。
ここではロイヤルフィルは金管ばかりでなく弦も素晴らしい。

終楽章は音を短く軽々始まる。流麗な弦が流れを作り、
そして金管と打楽器が乗って気持のよいフィナーレ。
最後は例の筆頭ホルンやその他金管が豪壮華麗に結ぶ。

暴論かもしれないが、マーラーの5・6・7番は
私は意味を求めすぎてはいけないのではないか、と思っている。
これらの曲はある種の支離滅裂さが内包されており、
意味を追求しすぎると通常の感性では辻褄が合わなくなると思うからだ。
だから絶対音楽的に楽しむ必要があり、そうした意味でこの演奏は最高なのだ。

13:17  15:32  17:43  12:37  14:35   計 73:44
演奏  S   録音 94点

マーラー 交響曲第5番 アブラヴァネル(74)

2012.08.22 (Wed)
アブラヴァネル5&6
アブラヴァネル/ユタ交響楽団(74、VANGUARD)は隔絶したムード。
同一コンビによる世界初のマーラー全集の完成の年の演奏。
今から見るととても新感覚。
音は基本的に短く刻まれ団子にならない。
さっぱりあっさりだが、シカゴやクリーヴランドの洗練や凄みは、ない。
テンポは速くとも田舎の長閑さや心を追い詰めない親しさ。
なんとも不思議な独自のユタワールド。

録音はソルト・レイクのモルモン礼拝堂ホール。
モルモン礼拝堂
広い空間だが比較的近接した音。低域成分は少なく軽くすっっきり。
リマスターがよく分離が明快で新鮮。
私は少しラウド気味にバランスを調整したらオケの量感が増し
他の録音に負けない迫力を得た。
ヴァンガードは平板かつ無頓着な録音が多いのでこうした調整は有効だ。

第1楽章冒頭のトランペットから何かが違う。
乾いた虚無感。
その後もドロドロしない。表現意欲があるのかないのか。
時々ソロ楽器が浮かび上がり室内楽的響きになったり。

第2楽章も威圧性はなく軽やかな音響。
低域や弦楽器の音が小さいのでうねる様な感じは全くない。
テンポは速くせっかちなくらい前へ。

第3楽章などすべて歯切れよく、普段は引っ込む音が前に出たりするので新鮮。
諧謔的な面白さ。素朴な雰囲気が全面に出るので憎めない。

第4楽章は8分。
弦は思いっきりヴィヴラートをかけているのにテンポはめちゃ速い。
まあ、ちょっとこのアダージョに癒しを求める人には向かない演奏だ。

終楽章はホルンや木管を聴いていると「大草原の小さな家」的懐かしさ。
草原を吹く爽やかな風、燦々と輝く太陽。屈託ない農家の収穫の喜び。
ヴァージル・トムソンやアーロン・コープランドの音楽との共通性。
音は短く弾む。吹奏楽のような楽器のバランス。
終結でティンパニが突然雲隠れしたと思ったら、最後にものすごい乱入乱打。
オケ全体は異様なアッチェレ加速についていけずそのまま強制終了。
村の祭りで最後に花火が暴発した感じ。

保有盤最短クラスの61分のマーラーの5番は、
違う曲を聴くつもりで聴けば楽しめる。

10:48  12:30  15:45  8:03  14:20  計 61:26
演奏  草A   録音 修87点

マーラー 交響曲第5番 ドホナーニ(88)

2012.07.29 (Sun)
ドホナーニ5
ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団(88、DECCA)は
同年録音のバーンスタインやテンシュテットと対極。
下手な感情移入せず、音楽を純粋に鳴らすことに命を賭ける。
この指揮者の最初のマーラー録音だが、当時の主流の演奏様式とは全く別の道を行く。
ドホナーニという人はある意味凄い。演奏に迷いがないのだ。
この後に録音された第1番も爽やかで良かった。
ドホナーニはクリーヴランドで録音して世の中に出たため米国指揮者だと思っていたたが、
ベルリン生まれでドイツで実績を積んでいた欧州指揮者。
バーンスタインにも師事したようだが、
1977年にウィーンフィル来日でベームに随行もしていた。
ベームが若い時にマーラーを振ったらひょっとしたらこんな演奏になったかもしれない。

録音はマソニック・オーディトリウムで明快で肥大化しない響きが演奏とマッチ。

第1楽章の冒頭トランペットの輝かしい響き、それに続く整然としたオケ。
全てのパートがはっきり聴こえるのは録音が良いばかりでない。
各フレーズをスッキリ切り、清潔な弾かせ方。
古楽器奏法ではないがそれと通じる。
大太鼓など覆いかぶさるようには叩かない。

第2楽章も金管は率直に出し、弦は(歌うのだが)紋切り型。
しかし、情念でドロドロになるのでなく錯綜する各パートをこれほど整然と
呈示されるとこれはこれで一つの音響芸術。
多分この曲を何度も聴いた方でもこの演奏を聴くと発見があるのではないか。
このコンビ特有の粒立つティンパニは健在で、私には快感である。

第3楽章も眩いばかり。アクセントが効き各楽器が放射。
ホルンの歯切れは滅法快調だ。

第4楽章では「楽譜通り」のポルタメントはかかる。
透明な美しさはピカイチ。

終楽章もスカッと鳴らす。
しかし、聴いていて、はてな?と思った。
それまでの経緯とは全く関係なく独自に音楽が進む。
では、前4楽章は一体何だったのか?
徹底して音を追求してきたため、この交響曲に込めた作曲者のストーリーは
綺麗に除去されている。
最後の痛快なティンパニの一打を聴いたとき、
音響芸術という言葉がまたもや回帰した。

12:09  12:54  15:32  10:19  14:11   計 65:05
演奏  整A   録音 91点

マーラー 交響曲第5番 バーンスタイン(87、プロムス)

2012.07.26 (Thu)
バーンスタイン5プロムス ←当方保有盤 最近の盤→バーンスタイン5プロムス2
バーンスタイン/ウィーンフィル(87,FirstClassics)は9月10日のロンドン・プロムスでのライブ。
数日前のDG盤と演奏時間はほとんど変わらないが、なぜか受ける印象はこちらの方が強烈。
この演奏はよく知られており数種の非正規盤が存在するが、
最近は正規盤化?して音質も良くなったというので紹介したい。

録音はこの手のものとしては非常に良い。
場所はロイヤル・アルバートホールで響きをたっぷりとりこんでいる。
マスであり個々の音の近接感はないため全体のうねりを聴くことになる。
ホールが一体となって鳴る音のスケール感ではDGを上回る。

第1楽章の遅さはDG盤同様だが、より熱いものが感じられる。
プロムスという雰囲気も手伝ってか一つ一つのフレーズは思い切りのいい
エグリが効いている。

第2楽章もくどいぐらいに迫真性がある。何かの映画かドラマを観劇しているよう。
音楽が伸縮しながら生起を繰り返す。緩急の差はDG盤より激しい。
演奏時間はややこちらが短いが表現の彫はかなり違う。

第3楽章も美しさではDG盤だが押しの強さ、アクセントの強さではこちらだ。
夜想曲ではなくもっと張りのある舞踏が繰り広げられる。

第4楽章はザルツブルグの時ほどメロメロでなくDGに近い。
それでも甘く濃厚でレトロ。

終楽章は最初は響き成分も手伝って流麗に進む。
よく聴くとバーンスタインらしい抑揚があり弦が猛烈に歌っている。
5分過ぎころからは力感が昂進する。ライヴらしい開放感でオケが唸る。
美感と力感が交錯。流石ウィーン。会場全体がゴーゴー鳴る。
終結に向かじりじり高揚。
この中に身を置いていたら音響の奔流でもみくちゃにされるはずだ。
最終音が鳴りやまぬうちに、かぶさる喝采は止むをえない。

さて、録音の綺麗さではDG盤なのだが、感銘はプロムス盤が強いのはなぜか。
プロムス盤の方が
 ①音のハリが強く、アタックも強固。
 ②テンポの伸縮がより大胆でいざとなれば前のめりのアッチェレランドがかかる。
 ③アルバートホールがオルガンのように鳴る。
 ④各奏者が自発性が顕著でリスクテイクしている。
などが感興増幅の要素としてあげられるが、以上は言葉で書いていると虚しい。
つまりは、観衆を前にした一発勝負、真剣勝負の雰囲気が
演奏者を奮い立たせ、聴衆がアドレナリンを放出し返す、それがまた演奏者を興奮させる、
の循環が起こっていたのだ。

14:07  14:30  18:28  11:16  15:03   計 73:24
演奏  A+   録音 88点
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