クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Mahler Das Lied von der Erde  の記事一覧

マーラー 大地の歌 バレンボイム(91)

2014.12.10 (Wed)
バレンボイム大地の歌
バレンボイム/シカゴ交響楽団(91、ERATO)は案外地味。
バレンボイムだからもっといじくると思いきや素直で誇張のない進行。
オケも派手な音を鳴らすことなく、録音も手伝って極めて落ち着いた仕上がり。
結果的に渋いともいえるが、訴えかけが弱いと感じた。
ただ、メゾソプラノのヴァルトラウト・マイヤーの歌唱は品があり素敵だ。
この人を聴くCDとすれば評価は高い
が、それならば全体のレベルが更に高いマゼール盤がある。

録音はシカゴ・オーケストラホールでのライブ収録。客席ノイズのある真正ライブ。
よって聴衆がいる分デット感が強い。マイクはやや遠く放送局録音的なマス系。
Dレンジはほどほどで、深い量感はなく低域も薄め。

第1楽章冒頭は響きの少ない中飛び出すオケとテノール(イェルザレム)。
方向性が定まらない音が飛び交うためこの曲は冒頭が大変だ。
オケは流石に誤魔化しが効かない中でもしっかり鳴るが、声はやや苦しい。
全体のテンポは速めで過度な表情はない。

第2楽章のメゾソプラノのマイヤーは音響の悪さの中でのスッと突き抜けた
綺麗な歌唱。オケも巧く寄り添い出しゃばらない。

第3楽章頃になると音響にも慣れて地味さ加減がよくなったり。

第4楽章「美について」は、ドルチェシモでオケは丁寧。
後半の馬で駆ける部分も騒がない。

第5楽章「春に酔える」も落ち着いた表現。

第6楽章「告別」は冒頭の部分が録音もあって現実感のある、ライブ的な音。
CDではもっと深い表現を刻むことができる。たとえばバスクラの音をぐっと
拾うことで天上界から落ちていくような表現をすることができるはずだ。
そこがこのCDのもどかしいところ。オケはいいのに。
一方、マイヤー自体の歌は誇張がなく好感が持てる。
伸びやかの部分ではスーと立ちあがる。
オケは抑制が効き室内楽的。
曲も終盤に差し掛かると慎重さから一歩踏み出そうとする意志が見え隠れする。
ここに来るとマイヤーは生えの執着を見せるかのような絶唱を見せる。
オペラティックな面がないわけではないが安定感がある。

7:33   8:49  2:50  6:59  4:07  29:43  計60:01
演奏  A-   録音   89点

マーラー 大地の歌 ナガノ(09)

2013.11.09 (Sat)
マーラー大地の歌ナガノ
ナガノ/モントリオール交響楽団(09、SONY)は精緻で透明で奇妙。
その印象はソフトで語り部のようなテノールとバリトン、
それを支える録音方式に起因する。
絶叫せず羽毛で撫でるような夢見る「大地の歌」。
ただし、最初は語り部に違和感が大きかったのも事実。

録音は1月13、14日のライブと15日のセッション録音(モントリオール:
プラス・デ・ザール)に2月15日テノールのフォクトの歌唱の重ね録音
(ミュンヘン:バーバリアンミュージックスタジオ)。
こんなのもかなり珍しい。
ヘッドフォンで聴いて推測すると第1楽章はスタジオ+重ね録り、
第2・3楽章はライブ・・・という具合に聴こえる。
録音自体のクォリティは高いがちょっとどうかなと思ってしまう。
どんな事情があったのだろうか? 

第1楽章のテノールにまず驚く。変わった声。カストラータかと思った。
それがまた、爽やかに伸びやかに歌うのだ。
絶叫するような歌唱とは正反対の軽々しい歌唱。オケも透明。発声も明瞭。
これはひょっとすると多重録音のマジックかもしれない。
実演だとオケの大音響に対抗してテノールも大声を出さなければならないが
分離して録音すればオケにつられることはない・・・。
この奇妙な録音の仕方にはそんな狙いがあったのではないか?

第2楽章はバリトンの登場。ゲルハーヘル。これまた柔らかな歌唱。
しかもテノールの歌唱と同質性を持つ。

第3楽章もほんとに軽やかだ。中国音階の音楽とこの歌唱は
トゥーランドットのピン、パン、ポンの登場場面を想起させる。

第4楽章もオペラの一場面のよう。

第5楽章の「春に酔えるもの」も落ち着いたものだ。
これをこんなに爽やかに歌いきっているのは初めて。
歌詞とは離れてまどろみも酔いもない。オケもどこまでも涼しげ。

第6楽章も音をそっと置いていく。深淵や暗さから解き放たれた新たな世界。
バリトンは明瞭な発音でしかも丁寧に紡ぐ。歌謡性のある語り部。
10:48からの転換の場面はそれこそ天上の音楽。
オケはどこまで行ってもおどろおどろしさを見せない。
現生の苦悩はすでにここにはなく夕映えでもない。
シルキーなオケに対して、歌唱はムードに流れずしっかり語る。
聴いたこともないような不思議な雰囲気。
厳かに終結し、思った。
これはマタイ受難曲に倣った「大地の歌」だ。

8:29  9:38  3:11  6:48  4:10  29:07  計61:23
演奏  浮A   録音 94点

マーラー 大地の歌 ヨッフム(63)

2012.06.25 (Mon)
ヨッフム大地の歌
ヨッフム/アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団(63、DG)は率直な音楽づくり。
オケの優秀さもあり立体的な推進力を持つ。
ヨッフムのマーラーは大地の歌以外知らないが情緒に連綿とすることなく力強い。
ヘフリガーも流石でこの盤は名盤となった。
世の中では忘れられているかもしれないが…。

録音はコンセルトヘボウの本拠地でフィリップスが録るより近接で生々しい。
リマスターもよく鮮明な音だ。

第1楽章の音が張りをもつホルンと対等に渡り合うヘフリガーの声量が素晴らしい。
そしてヨッフムの直截的な音楽も凄味のあるキレ味だ。
オケは豊かな響きながら芯がある。
それにしてもここでのヘフリガーがちょっとないくらい見事。
ワルターのステレオ盤をさらに上回る出来。
第2楽章はメリマンはややヴィヴラートの多いいかにも女性のか弱き歌声。
音楽はここでも速めのテンポでストレートだ。
第3楽章はヘフリガーが相変わらず確信に満ちた歌だが
ちょっとしたオケの音色も深みを感じる。
第4楽章もオモチャのような音楽だが演奏が平板になることを救っている。
緩急の対比は少なくここでも直球。
第5楽章もヘフリガーの歌唱に聞き惚れる。
終楽章のメリマンはヘフリガーに比べると小粒の印象はぬぐえないが
この楽章ではその儚さがプラスに効いている。
音楽は速めのテンポで進む。
ただ、歌唱も指揮も率直さが音楽の深みを表し切れていないように
感じることもある。あまりにも紋切りに感じる部分があるのだ。
明快な淀みない運びは好感が持てるので悪いということではないのだが・・・。
二つを同時に求めるのは難しいのかな。

8:51  8:50  3:11  6:29  4:29  26:54   計 58:44
演奏  A   録音 88点

マーラー 大地の歌 ワルター(60)

2012.04.12 (Thu)
ワルター大地の歌NYP
ワルター/ニューヨークフィル(60、SONY)はかの52年のウィーンフィル盤より好きだ。
それを分けるのは独唱と録音。
歌唱は癖がなく端整。オケは全体に力が抜けている。
これは、ワルターの老齢化に起因するものかもしれないが、
結果としてこの曲の虚無感を表出する。
美しい録音と相まって何か現実と離れた世界。

録音はマンハッタンセンターでのセッション。
LP時代から感じていたがこの録音は素晴らしい。
ホールの空間の広さとオケと声のバランス。
CBSでのバーンスタイン/イスラエルの録音は20年以上あとだがこちらのほうが遥かにいい。
夢見るような音響。

第1楽章冒頭から惹き込まれる。ヘフリガーの折り目正しい中にも情感のこもった歌もいい。
第2楽章も冒頭の空間に漂う木管の素晴らしいこと。儚い風情をミラーが清潔に歌う。
第3楽章のキラキラする音楽。激しさはなく、昔を懐かしむ優しさ。
第4楽章の騒がしさもどこか夢の中のよう。
第5楽章のヘフリガーはやはりいい。
終楽章の告別の最初のドラから深い。ニューヨークの低弦のぶるぶる震える音も健在。
当時録音の主流だったコロンビア交響楽団ではこの深さは無理かもしれない
(ニューヨーク公演で滞在中に録音された)。
後半に行くに従いミラーは熱唱。オケも慟哭する。
時に深淵をのぞかせ、今までの淡い世界に漆黒の裂け目が見え始める。
これは恐ろしい。
このあたりの表現の幅は確かに室内楽版では達成できないし、
オケ版でも凡百な演奏では無理だ。
ここまでは天上の世界だったが、この楽章後半からは明らかに切れ込んできている。
最後は切実な歌い上げ。

9:30  9:50  3:07  6:44  4:23  29:00   計 62:34
演奏  A+   録音 90点

マーラー 大地の歌 オーマンディ(66)

2012.04.10 (Tue)
オーマンディ大地の歌
オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(66、SONY)は忘れられた盤といえようが、
これはいい。

この盤と同じ年に、当時のコロンビアの看板指揮者のバーンスタインがDECCAに
ウィーンフィルと「大地の歌」を録音してしまったために、コロンビアとしては
対抗してもう一枚の看板指揮者オーマンデイにこの曲を録音させたのだろうか?

有名なのはバーンスタイン盤だが実はこの盤は引けを取らない。
まずオーケストラが抜群に巧く、音がくっきり明瞭である。
解釈も持って回ったところがなく表情付け、隈取がきっちりしている。
さっぱりしているので、演奏時間は保有盤のなかでは一番短い。
それをアメリカ的というのかもしれないが気持ちのいい演奏だ。

録音はフィラデルフィアのタウンホールでオーマンディの録音の中でも優秀。

第1楽章の冒頭は演奏の行方を占ううえでとても大事だが、
オケとテノールのルイスともに見事。一途に駆け抜ける。
第2楽章ではメゾソプラノのコッカシアンによるもの。
深い声ではないが普通に聴ける。
終楽章の告別も最初のドラから低弦の持続音など明瞭だ。
オーケストラの表現力はちょっとないくらい素晴らしい。
オケの良い音に対して、メゾソプラノは少しとんがって聴こえる。
アルトの落ち着いた声の方が良かったかも。
ただし、演奏の方向性とは添っている。諦観とか寂寥感とかとは遠い演奏だが
作曲当時、実はまだまだ元気だったマーラーのこの曲を素直に表現している。
拾いものの一枚。

8:20  9:05  3:05  6:35  4:15  26:46   計 58:06
演奏  A   録音 89点
 | HOME |  Next »