クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Mahler Sym7 の記事一覧

マーラー 交響曲第7番 クーベリック(76)

2012.11.29 (Thu)
クーベリック776
クーベリック/バイエルン放送交響楽団(76、audite)は率直で荒削り。
後半になるほど上り調子。
70年のDG盤と演奏時間はほぼ同じでも表現の抉り方がこのライブでは違う。

録音はヘルクレスザールでのライブ。残響少なく生々しい音。
低域の量感は少ないので少し補った。

第1楽章は20分を切るテンポで基本速いがフレーズ毎にテンポが微妙に伸縮している。
DG盤も同じような長さだが、ここまでぎくしゃくした印象はない。
表情の隈どりがくっきり。ムードは薄く明晰。ドイツの紋切的ザッハリッヒ感。
それが作品の膨張を止める。夜の情景とか鳥の声の描写には気を使わない。
純音楽的と言えばいえるのだろうが統一的なまとまりは少ない。
その場その場で剛毅。

第2楽章も夜と言っても百鬼夜行的。
流麗さはなくゴツゴツして出たり入ったりがあからさま。
こうしたところがライブ的で、一歩踏み込んでみせる。
前楽章で見せたちぐはぐな感じがなく確信を持ってきている。
乗ってきたようだ。アクセントも強烈。

第3楽章のティンパニが良い感じでリード。骸骨踊りのような諧謔性。

第4楽章もセレナーデ風ではない。力感溢れる前のめり。ごつい不思議な感触。

終楽章もこうなると違和感がない。ぱっぱか進む。
不思議なごった煮のこの楽章をバッサバッサ。推進力がある。
テンションは高い。整然とした美しさはないが、何かに突き動かされている。
バイエルンはこの荒っぽい棒に食らいつく。切って落とす終結。

最初はイマイチの感じだったこの演奏だが、最後ははまった。
これがライブ的感興というものか。

19:48  15:27  9:23  11:53  16:27   計 72:58
演奏  A  録音 86点

マーラー 交響曲第7番 アバド(84)

2012.11.17 (Sat)
アバド夜の歌旧
アバド/シカゴ交響楽団(84、DG)は、明るい「夜の歌」。
一つの方向性での完成度という点では、2001年ベルリン盤より高く録音も良い。
また、同じシカゴを振ったショルティに比べるとよりグラマラスで開放的。
ここはハンガリーとイタリアの差かも。

録音はシカゴのオーケストラホールで広い音場を獲得。
マスを軸にしながらも明瞭。

第1楽章は全体的にはスコアをしっかり鳴らしながら、夜の情景に入ると
非常にゆったりと濃厚な表情を見せるところが特色。
シカゴの金管は力感と安定感が素晴らしい。健康的に締めくくる。

第2楽章の木霊の遠近が目覚ましい効果。
大らかに夜を満喫するが、ウキウキするような音響だ。
歌うところでの伸びやかさは屈託ない。

第3楽章もメリハリが強い。

第4楽章はしなやかで美しい。

終楽章は楽天性がさらに発揮される。「ローマの祭」を聴いている錯覚に。
性能のよいおもちゃを与えられて嬉々とする子供のよう。
とはいえしっかり操り錯綜する楽想をまとめていく手腕は大したもの。
また、騒ぎの隙間で見せる柔軟な表情も素敵だ。
クライマックスなどオケのパワーが炸裂する。
あっけらかんとした楽しい演奏。

21:27  16:37  8:55  14:01  17:45   計 78:45
演奏  A   録音 91点

マーラー 交響曲第7番 アバド(01)

2012.11.16 (Fri)
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アバド/ベルリンフィル(2001、DG)は、踏み込みを強めた時期の演奏。
2000年に胃がんで倒れて復帰後すぐのもの。
整えるのではなく、評価を気にせず好きにさせてもらいますよ的。
17年前の健康的な同曲録音とはムードが異なる。
が、結果としてそれが説得力をもつのにはもう少し時間がかかる。

録音はベルリン・フィルハーモニーでのライブ。
やや距離のある録音で音場・奥行き感にやや不自然さというか
不均一な処理を感じる。これはいくつかのテイクを編集したから?
低域も遠いため腹に来るような音ではない。
真性ライブらしい熱気はあるが。

第1楽章は積極的なニュアンスをとりに行くアバドを聴くことができる。
濃厚ムンムンではないが、一瞬も流してなるものかという気迫を感じる。
綺麗さとかよりリスクテイクする。
ただ、多様な試みが音楽の拡散を招いた節も否めない。

第2楽章は最初は穏やかな優しさ。徐々にエグリを効かせる。
テンポも一様ではない。聴き進むと奇怪な雰囲気に。

第3楽章は速めのテンポの中で踊る。
が、響きが多いので音がかぶってしまっている。
ティンパニも丸く輪郭がぼけているのは私の好みからいえば残念。
最近のライブ録音でももっとクリアに録っているのはある。

第4楽章は何か落ち着かないものを感じる。

終楽章も録音のハンディが出ている。
この曲では全奏でもいろんな楽器が好き勝手にベクトルを
違えて飛び出すのだが、その捉えがいまいちで
21世紀に入ってからの録音としては満足できない。
ベルリンはさすがで輝かしい金管を伴いゴージャスな音。
終結は音が泥んこ状態で渦巻いている。
会場からは盛大な拍手。病を越えて戻ってきたマエストロを迎える。

21:35  15:54  8:53  12:58  17:45   計 77:05
演奏  A-   録音 89点

マーラー 交響曲第7番 M・T・トーマス(97)

2012.10.23 (Tue)
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ティルソン・トーマス/ロンドン交響楽団(97、RCA)はもの凄い情報量。
洗練された多彩。緻密な大胆さ。
この後のサンフランシスコとのライブ盤はこれを超えられるのか思うほどの完成度。

録音はウォルサムストウ・アセンブリー・ホールでの3日間のセッション。
弦はやや距離はあるがマス録音より明晰さをもつ。
量感ほどほどながら適切な音場、レンジも広い優秀録音。

第1楽章は、非常に遅いテンポで丁寧に開始。この部分を聴いただけでMTTが
細部に猛烈に拘っていることが分かる。特に楽器間のバランスには絶妙な指示がある。
その後のテンポは場面ごとの緩急幅が大きく一様でない。
テンポをぐっと落とし歌う部分は清冽な抒情。
終結に向かってはブラス群が安定感をベースに素晴らしく活躍して盛り上げる。
硬軟取り混ぜるこの指揮者の多彩さを感じる。

第2楽章も一つとして手抜かりがない。弦のアクセント効いた滑稽な音楽。
そしてトリオのメロウさ。聴いていて飽きさせない。
この楽章の多面的要素を気付かせる。
次にはどのように展開してくれるのかワクワクさせる。

第3楽章も勢いに任せない。過去のどの演奏にも見られないような鮮烈さ。
ロンドン響と相当合わせたはず。
クラリネットの下降音型ひとつとっても曲者の表情。

第4楽章のヴァイオリンのこれほど切ない表現も聴いたことがない。
よくこのような表現方法を思いつくな、と感心。
肌をそっと撫でるようなシルキーは音。

終楽章は冒頭のティンパニが小気味よく捉えられているのが嬉しい。
剛直だけでなくしなやかな音楽が続く。ここら辺はMTTの知性を感じる。
少しだけ不満があるとすれば、まさこの知的コントロールが
ハチャメチャな終楽章でチラリと見える点か。
とは言え次々繰り出される仕掛けの鮮烈さ、ロンドン響の達者さに感嘆する。
そして終結に向けて放出されるエナジー量はただ事でない。
マーラーのこの曲の再現もここまで来てしまったのだ。

21:41  16:25  10:29  14:07  18:11  計 80:53
演奏  S   録音 92点

マーラー 交響曲第7番 ショルティ(71)

2012.10.21 (Sun)
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ショルティ/シカゴ交響楽団(71、DECCA)はピュアで痛快な第7番。
海外ではこの曲に「夜の歌」というタイトルを勝手に付加しないが、
ショルティのそれはまさにナンバー交響曲、器楽交響曲の一環として捉える。
引き締まった筋肉、運動性能の良さをベースに時折見せる柔構造。
この路線としては一つの極致だ。
60年代のバーンスタインもクレンペラーも一度ここでゼロクリアされた、
記念碑的演奏。後続は別の路線を行かざるを得ない。

録音はイリノイ大学クラナート・センターで行われ、当時の優秀録音と言われた。
マルチマイクで実演ではこのように聴こえないが、
60年代の大袈裟な録音からは修正されたDECCAの録音だ。
残響は多くなく、乾いた音で各楽器が明快に聞こえる。
ティンパニのトランジェントの良さはこの曲の録音の中でも最高。
今聴いてもスカッと気持ちいい。
但し、大太鼓が全奏で鳴る時はテープ録音の限界を感じる。

第1楽章は極めて清潔で純音楽的。場面の変転が良く分かる。
つぎはぎコラージュの異形さを主情的に繕わない。
しかし、抒情もある。
弦が歌う部分の盛り上がりは、他の部分が剛直なだけに感動的。

第2楽章は夜曲というには明晰過ぎるが、
標題に拘らなければ引き締まったアレグロ・モデラート。
リズムはくっきり刻まれ、弦は精緻で美しい。
湿度は低く、カラッとしてる。

第3楽章もマーラーの独自の管弦楽を楽しめる。
弾むリズム、竹を割ったブラス。

第4楽章も夜曲というよりしっかりしたアンダンテ。
真面目な弦になぜかお茶目なマンドリン。アイロニーが浮かび上がる。
ショルティにしてはかなり情熱的だ。

終楽章は驚異的。ティンパニの粒だつパンチでいきなりトップギア。
ハイスピードなのにこれほど整然とした演奏はない。
それが恐ろしい。
アクセントは明快で、スパッとしたフレーズは清潔で気持ちが良い。
鋼鉄のばねのように弾みながら終結へ。
厳しい規律の中で、猛烈に訓練された集団演技。
今ではなかなか聴くことができない。

21:35  15:44  9:14  14:28  16:27   計 77:28
演奏  A+   録音 89点
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