クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Mahler Sym7 の記事一覧

マーラー 交響曲第7番 レヴァイン(80)

2017.12.19 (Tue)
レヴァイン7
レヴァイン/シカゴ交響楽団(80、RCA)はあっけらかん。
彼は燦々と降りそそぐ太陽のもとに「夜の歌」を引っ張り出した。
この人のマーラーは大抵そうだ。バーンスタインの行き方とまるで違う。
でもそれはそれで面白いではないか。
そしてなんといってもシカゴ響だ。無敵の武器を携えてギンギラ。
同じオケとやったショルティ盤も筋肉質で好きだがこちらも音響のご馳走だ。

ところで最近考えさせられることが起こった。
James-Levine-1-resize.jpg
レヴァイン(1943~)は天才肌の指揮者であったが今年過去の性的スキャンダルが
暴露されたことにより事実上失脚状態になってしまった。

芸術家はと称される人は作曲家であろうが演奏家であろうがかなり偏った
性癖を持っていることが多いと言われる。
ブルックナーやマーラーなんかも現代ならば完全にアウトではないか。
しかし我々はそんな人の生み出す作品を崇め享受してきた。

どう折り合いをつけるのか?
私は芸術作品は出来上がった時に創作者から独立してしまうもの、
と考えることにしている。勿論その作り手の考え方、生い立ちや環境はその作品を
理解するのに役立つが、場合によってはそうしたものと切り離して鑑賞する。

異常な作曲家の作品の背徳的な指揮者による演奏と考えると不気味ではある。
しかし、聴覚障害を乗り越えた苦難の作曲家の作品が実はゴーストライターのものと
分かった時に掌返しした我々も不気味ではある(関係ないか?)。
と諸々を思いながら屈託ない本盤を聴きなおした。やっぱり痛快である。

録音はシカゴ・メディナテンプルでのアナログ・セッション。
ここはサーカス会場にもなる大ホール。
Circus_MedinahTemple_1975.jpg
この後デジタル時代になってからRCAやDECCAは録音会場を
本拠地オーケストラホールに戻している。そのためこの会場での最後期の録音。
この会場はやたらでかいので伸びはあるものの下手すると拡散する音響になった。
RCAやDECCAの録音陣は双方優秀で近接マルチマイク・セッティングで
こうした問題を解決していた。
recording-session.jpg
とはいえショルティ盤などティンパニのすぐ横にマイクを立てたような音で
実演ではありえない音響で再現されていた。
この盤もそこまでではないがかなり劇的に脚色された面はあろう。
それもこれも呑み込んで楽しみたい。

21:34  15:50  10:15  14:43  17:45   計  80:07
演奏   A+   録音  92点

マーラー 交響曲第7番 バーンスタイン(85)

2017.12.18 (Mon)
バーンスタイン7
バーンスタイン/ニューヨークフィル(85、DG)は迫り狂う執念の歌。
ワンフレーズごとに指揮者の思いが籠る。
冒頭よりギクシャク。決して流れのいい演奏とは思えない。
しかしというか、故にこの交響曲の
パッチワーク的・コラージュ的な面が図らずも強調されて面白い。

とにかくヘンテコな曲だ。何を言わんとしているのか?
クラシック音楽を堅苦しい真面目な音楽という範疇で捉えると
これはそこらのPOPSよりもかなりMADだ。

カラヤンはこの第7番を取り上げなかった。
70年代以降のマーラーブームに乗ろうとしたが、
さすがにカラヤンの理性はこの曲を受けつけなかった。

しかしバーンスタインはウォンウォン共感の唸りを上げる。
彼自身がごった煮的分裂的性格を持っているからこの不条理も受け入れられる。
バーンスタイン作曲のミサ曲などまさにそうだ。
そしてこの曲に挟まれる騒ぎの中の静寂の意味を深く感じさせるのはこの演奏だ。
(↓1985年本演奏のリハーサル風景)
New York Philharmonic in Avery Fisher Hall; November 26, 1985
録音はニューヨーク、エヴリー・フィッシャー・ホールでのライブ。
決して響きのいい会場ではなく、しかもライブだが非常によく録れている。
勿論更に立体感を持たせたり打楽器ののピックアップなどで
グロに録ることもできただろうが、この演奏内容でこれ以上極端化することを
プロデューサーは由としなかったのではないか。
全体はデット気味だが迫真感がある。

21:40  17:02  10:32  14:42  18:21   計 82:17
演奏   S   録音  93点

マーラー 交響曲第7番 クーベリック(76)

2012.11.29 (Thu)
クーベリック776
クーベリック/バイエルン放送交響楽団(76、audite)は率直で荒削り。
後半になるほど上り調子。
70年のDG盤と演奏時間はほぼ同じでも表現の抉り方がこのライブでは違う。

録音はヘルクレスザールでのライブ。残響少なく生々しい音。
低域の量感は少ないので少し補った。

第1楽章は20分を切るテンポで基本速いがフレーズ毎にテンポが微妙に伸縮している。
DG盤も同じような長さだが、ここまでぎくしゃくした印象はない。
表情の隈どりがくっきり。ムードは薄く明晰。ドイツの紋切的ザッハリッヒ感。
それが作品の膨張を止める。夜の情景とか鳥の声の描写には気を使わない。
純音楽的と言えばいえるのだろうが統一的なまとまりは少ない。
その場その場で剛毅。

第2楽章も夜と言っても百鬼夜行的。
流麗さはなくゴツゴツして出たり入ったりがあからさま。
こうしたところがライブ的で、一歩踏み込んでみせる。
前楽章で見せたちぐはぐな感じがなく確信を持ってきている。
乗ってきたようだ。アクセントも強烈。

第3楽章のティンパニが良い感じでリード。骸骨踊りのような諧謔性。

第4楽章もセレナーデ風ではない。力感溢れる前のめり。ごつい不思議な感触。

終楽章もこうなると違和感がない。ぱっぱか進む。
不思議なごった煮のこの楽章をバッサバッサ。推進力がある。
テンションは高い。整然とした美しさはないが、何かに突き動かされている。
バイエルンはこの荒っぽい棒に食らいつく。切って落とす終結。

最初はイマイチの感じだったこの演奏だが、最後ははまった。
これがライブ的感興というものか。

19:48  15:27  9:23  11:53  16:27   計 72:58
演奏  A  録音 86点

マーラー 交響曲第7番 アバド(84)

2012.11.17 (Sat)
アバド夜の歌旧
アバド/シカゴ交響楽団(84、DG)は、明るい「夜の歌」。
一つの方向性での完成度という点では、2001年ベルリン盤より高く録音も良い。
また、同じシカゴを振ったショルティに比べるとよりグラマラスで開放的。
ここはハンガリーとイタリアの差かも。

録音はシカゴのオーケストラホールで広い音場を獲得。
マスを軸にしながらも明瞭。

第1楽章は全体的にはスコアをしっかり鳴らしながら、夜の情景に入ると
非常にゆったりと濃厚な表情を見せるところが特色。
シカゴの金管は力感と安定感が素晴らしい。健康的に締めくくる。

第2楽章の木霊の遠近が目覚ましい効果。
大らかに夜を満喫するが、ウキウキするような音響だ。
歌うところでの伸びやかさは屈託ない。

第3楽章もメリハリが強い。

第4楽章はしなやかで美しい。

終楽章は楽天性がさらに発揮される。「ローマの祭」を聴いている錯覚に。
性能のよいおもちゃを与えられて嬉々とする子供のよう。
とはいえしっかり操り錯綜する楽想をまとめていく手腕は大したもの。
また、騒ぎの隙間で見せる柔軟な表情も素敵だ。
クライマックスなどオケのパワーが炸裂する。
あっけらかんとした楽しい演奏。

21:27  16:37  8:55  14:01  17:45   計 78:45
演奏  A   録音 91点

マーラー 交響曲第7番 アバド(01)

2012.11.16 (Fri)
469.jpeg
アバド/ベルリンフィル(2001、DG)は、踏み込みを強めた時期の演奏。
2000年に胃がんで倒れて復帰後すぐのもの。
整えるのではなく、評価を気にせず好きにさせてもらいますよ的。
17年前の健康的な同曲録音とはムードが異なる。
が、結果としてそれが説得力をもつのにはもう少し時間がかかる。

録音はベルリン・フィルハーモニーでのライブ。
やや距離のある録音で音場・奥行き感にやや不自然さというか
不均一な処理を感じる。これはいくつかのテイクを編集したから?
低域も遠いため腹に来るような音ではない。
真性ライブらしい熱気はあるが。

第1楽章は積極的なニュアンスをとりに行くアバドを聴くことができる。
濃厚ムンムンではないが、一瞬も流してなるものかという気迫を感じる。
綺麗さとかよりリスクテイクする。
ただ、多様な試みが音楽の拡散を招いた節も否めない。

第2楽章は最初は穏やかな優しさ。徐々にエグリを効かせる。
テンポも一様ではない。聴き進むと奇怪な雰囲気に。

第3楽章は速めのテンポの中で踊る。
が、響きが多いので音がかぶってしまっている。
ティンパニも丸く輪郭がぼけているのは私の好みからいえば残念。
最近のライブ録音でももっとクリアに録っているのはある。

第4楽章は何か落ち着かないものを感じる。

終楽章も録音のハンディが出ている。
この曲では全奏でもいろんな楽器が好き勝手にベクトルを
違えて飛び出すのだが、その捉えがいまいちで
21世紀に入ってからの録音としては満足できない。
ベルリンはさすがで輝かしい金管を伴いゴージャスな音。
終結は音が泥んこ状態で渦巻いている。
会場からは盛大な拍手。病を越えて戻ってきたマエストロを迎える。

21:35  15:54  8:53  12:58  17:45   計 77:05
演奏  A-   録音 89点
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