クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Mahler Sym3 の記事一覧

マーラー 交響曲第3番 バーンスタイン(87)

2012.09.20 (Thu)
バーンスタイン3新
バーンスタイン/ニューヨークフィル(87、DG)はヘヴィーながら有無を言わさぬ凄味と説得力。

録音はエイヴェリーフィッシャーホールでのライブ録音で
細部を穿つものではないが低域から図太く生々しい音が捉えられている。

第1楽章はニューヨークフィルの相変わらずの低弦の威力と良い意味での
荒々しさを感じる。重心が低く、裏ぶれドスの効いた音楽だ。
エグリも尋常でなく、ちょっと凄すぎることになってやしないか。
木管のワンフレーズをとってもバーンスタインの体臭を感る。
それでいてテンシュテットのような唐突感がないのは格の違い。
バーンスタインはのめり込みながらも自分を客観視できる
離れ技をやるところが凄いところ。
楽章も終盤手前のアレグロ・モデラート(トラック7)でのトロンボーン独奏
(ジョゼフ・アレッシ)の表現力は恐るべしだ。
この34分だけで聴く方も相当体力がいる。
本物ライブではこの楽章終了時に拍手が起きたそうだが、宜なるかな。

第2楽章も濃度が高い。言いたいことがたくさんあるのだろう。

第3楽章はポストホルン(フィリップ・スミス)場面では
威圧感はなく癒しの音楽に、しかしそれが終わるとエナジー横溢。
このコンビの体力には参る。

第4楽章のコントラルトはルードヴィッヒ。
声量はないがこれが幸いで自然な歌唱は好感。

第5楽章の合唱は明るい。

終楽章には自分を客観視できるバーンスタインの姿が垣間見える。
濃厚べったりにしたくなるこの楽章で、一歩抑制を効かせる。
ベルティーニの弦の綾に対して、こちらは弦の通奏持続音を重視して
包み込んでいく。テンポを遅くとり大きな息遣いで歌う。
感情が激しそうなところも堪える進行が続く。
あれだけやんちゃしてきた第1楽章との対比が自然と想起される。
最後の7分強は全ての想念が突き抜けたような瞬間を味わせる。

後年のバーンスタインは重すぎると感じるが、
やはりこの演奏には抗しきれず圧倒される。

34:42  10:37  18:31  9:34  4:04  25:01   計 102:29
演奏  A+   録音 92点

マーラー 交響曲第3番 バルビローリ(69)

2012.09.18 (Tue)
バルビ3ハレ
バルビローリ/ハレ管弦楽団(69、BBC)は楽しい。そして終楽章はやはり情熱的。

これは5月3日の演奏だがバルビローリにはその2か月前のベルリンフィルとの
ライブ録音もある。このCDの英文解説にはこの音源が埋もれた経緯が書いてある。

有名なマーラー研究家のデリアス・クックはこのハレ管との素晴らしい演奏を聴いて、
EMIに商業リリースするよう説得したが、EMIはベルリンフィルとの演奏を
リリースすると答えたそうな。クックはこの返答に対して、(27年間もコンビを組み)
マーラーを分かっているハレの方が素晴らしいに決まっていると反対したとのこと。
ベルリン盤は未聴ながら、確かにこのコンビでしかできない自在な演奏だと思う。

録音はマンチェスターの自由貿易ホールでのBBC放送のための公開演奏。
ライブとセッションの間みたいなものか?とにかく一発どりでこのころの
放送用音源にしては音場といい生々しさといい、流石BBCだと思う。
特にブラスの音はピックアップされている。

第1楽章は大らかな歌にあふれる演奏。風景は絶えず変化。
晴れていたかと思うと憂鬱な曇りに。
フレーズで時に伸縮する所はさすが、バルビ節。
全体的に洗練されず、特殊打楽器も無邪気な音で鳴らされる。

第2楽章はバルビローリのしゃがれた声の歌がほんとに入っている。
そのくらい歌っており低弦は切ない。面目躍如。

第3楽章も楽しい。いろんなとこから音が飛び出す。
オケは決してうまいとは言えないがそれが素朴な味を醸し出す。

第4楽章のコントラルトは録音上も歌唱上も前面に出過ぎず好ましい。
夜の雰囲気を漂わせる。

第5楽章のピム・パムは笑顔が見える。弾んでいる。
少年らしい声がこだま。

終楽章の弦はまさにバルビと一体。
低弦を少し強調し膨らませ、フレーズの抑揚を大きくつけ、時に立ち止まる。
当然指揮者の唸りは大きくなる。
後半になると連綿とした情感が堰を切って溢れる。
終結は意外にも速いテンポで明るく終わるが、
最後の一打の前に間を置く仕掛けは残してある。

33:08  9:27  17:24  8:52  4:10  20:25   計 93:26
演奏  楽A   録音 87点

マーラー 交響曲第3番 ベルティーニ(85)

2012.09.16 (Sun)
ベルティーニ3
ベルティーニ/ケルン放送交響楽団(85、EMI)は地味ながらとても良い。
渋さの中に何とも言えないロマン。大人の男はこの演奏で夢を見る。

録音はケルンのストルベルガ通りスタジオで
ドイツのハルモニア・ムンディスタッフによってなされている。
鮮烈さよりホールトーンを含んだ柔らかい音が基調。

第1楽章はまろやかな優しさに包まれているが、所々に現れる諧謔にもしっかり目配り。
堅実な再現といったら面白みのない感じだが、
この楽章自体を忠実に再現すれば自ずと滅裂感は出る。それがこの演奏だ。
丹念に音を置いていくがメリハリはある。

第2楽章はほんわかチャーミング。綺麗だな。

第3楽章も丁寧で繊細。優しさとグロテスクを下品にならないように調合。
弦の表情など、よく聞くとメロウに流したり、アクセントを強化したり。
実に細部まで神経を使っているのが良く分かる。
ポストホルンが出るとテンポをおとして酔わせてくれる。

第4楽章のコントラルト、キレブリューも流れに沿った歌唱。
ヴァイオリンの切ない表情も良い。

第5楽章になるとコントラルトは積極的になる。音楽も活気。

終楽章は白眉。上品なヴィヴラートを纏った弦の綾の美しこと。
この音のコントロールはプロの仕業。
導入部のテンポは普通なのだが、徐々に音楽が深くテンポが穏やかになる。
チェロの音はひたひたと近寄る秋。
単に美しいだけでなく弦の各声部が手を差し伸べ慎ましく訴えかける。
聴いている途中から鳥肌が立つ。
18分、巨大な音楽がいったん鎮まり、フルートから金管のコラールへ
バトンが渡される時には恥ずかしながらウルウルしている。
この感覚はバーンスタインの旧盤を初めて聴いた時以来ではないか?
終結はじりじりジックリで最後の太鼓の芯のある強打がとどめだ。

33:56  10:01  19:35  10:50  4:04  26:00   計 104:26
演奏  S   録音 90点

マーラー 交響曲第3番 テンシュテット(79)

2012.09.15 (Sat)
テンシュテット全集
テンシュテット/ロンドンフィル(79、EMI)の指揮者は面白い。
見た目は学者風のインテリなのだが、音楽は誠に粗く激しい。
この演奏は両端楽章の表現の方向性が極端に違う。

録音はキングスウェイ・ホールでこのシリーズのアビーロードでの録音より良い。
しかし、音場は広いわけではない。
今回全集は、79年のデジタル・セッションだが、以前購入した盤より
リマスターが改善されている気がする。音の詰まり感が少なくなっている。

第1楽章冒頭のホルンの吹奏はやたらハリのある音。そのまま力の漲る音楽が続く。
やや粗暴ともいえる元気さ加減。劇画タッチで物語が進行。
「夏の行進」だからそれでもいいのだが、
この長大な楽章の中にも元気さだけでない、メソメソ感も潜んでいるはずなのだが
テンシュテットは一本調子。あまりに大づかみすぎないか?
世評の高いテンシュテットのマーラーに今一つ心酔出来ないのは、
オケの扱いも含めたこの雑な感じなのかな、と思ったり。
それでも、メリハリの効いたこの音楽は確かに楽しい。
この演奏のこの楽章に題をつけるなら「牧神」ではなく
『無頼漢がやってくる』だ。

第2楽章もデリケートな雰囲気よりも活力を重視。
オケは相変わらず粗いのは微笑ましい。

第3楽章の前半は相変わらずだが
ポストホルンはやたら距離感があり不思議な雰囲気を演出。

第4楽章のアルトは無難に切り抜ける。

第5楽章の少年はこれまたやや遠い。澄み切っっていないのは録音?

終楽章。この曲の勝負はこの楽章でつく。
テンシュテットは20分という速めのテンポ。
しかし意外にもセンスがいい。
美感はそこそこだが儚げな風情がにじみ出る。
底流にある情熱が最後の最後にティンパニの強打に出る。

33:16  10:41  18:57  9:54  4:17   20:46  計 97:51
演奏 A-   録音 90点

マーラー 交響曲第3番 ギーレン(97)

2012.09.01 (Sat)
ギーレン3
ギーレン/南西ドイツ放送交響楽団(97、hanssler)はギーレンの変貌を感じる。
この指揮者ははなかなか評価が難しい指揮者でもある。
指揮の技術は高いのだろう。楽想を分解・腑わけして呈示してくれるが、
何か面白みのない…といった感想をもつこともある。
しかし、この録音の頃から、この指揮者はあきらかに変わった。
分解能力はそのままなのだが、表情がぐっと豊かになった。
昔からのギーレン好きにとってはこの変化は複雑かもしれない。
なんで、丸くなるのか、クールでいてほしかった、と。
私は、インターコードから発売された87年のベートーベンの「英雄」で
この指揮者に注目した。速いテンポでザッハリッヒに切れ込む。
さらに併録は、ギーレン自身のバリバリの現代音楽「鐘は間違った響きを残している」だ!
さてこの演奏はどのように捉えられるのか?

録音はフライブルク、コンツェルトハウスでのライブ録音だが、
自然な広がりと透明感の中にハリのある音が楽しめる優秀録音。

第1楽章は悠然とそして克明に進む。
たとえば、冒頭のホルンの後の大太鼓。明確に叩かせている。
錯綜した楽曲を楽しく見せびらかす。
のどかで爽やかだ。
テンポは胸張ってゆったり歩く感じ。
オケはバイエルンやミュンヘンほどの威圧感がないぶん、
素朴感もありこの楽章にあっている。
高性能な武器を駆使、ではこの曲はやりきれない。
後半になるとさらにテンポは悠然。スタイリッシュとはかけ離れた明るさ。
現代音楽のスペシャリストギーレンを期待するとまるで違う。
時々音楽を膨らませたり、結構やってくれる。

第2楽章は標準テンポだが広い空間に拡がる表情豊かな木管が懐かしい。
ロマンティックに歌う。いい感じ。
かなりウォームで、ブラインドで聴いたらギーレンとは思えないだろう。
ヴァイオリンの表情はキュンとなる。

第3楽章も明晰だが緊張感をあおったりしない。
対抗配置での掛け合いも面白い。時に音が飛び出す仕掛けもある。

第4楽章のアルトのカリッシュは余分な表情をつけずさっぱり歌う。

第5楽章の少年合唱を支える弦はテヌートを効かせてロマンティックだが
銅鑼を響かせる場面では暗雲がたれ込める。

終楽章は弦だが、ヴィヴラートをしっかりかけて歌う。響きは清潔。
歌い方は少し照れくさそうでぎこちないのはまだ、
完全に吹っ切れていないということか?
しかし癖のない誠実さで最後まで貫き通す姿勢は好感。

35:26  9:36  18:22  9:27  4:27  24:27  計 101:45
演奏  A   録音 93点
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