クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Sibelius Sym7 の記事一覧

シベリウス 交響曲第7番 N・ヤルヴィ(2003)

2016.09.04 (Sun)
ヤルヴィシベリウス全集
N・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団(2003、DG)は思いが強い。
最初聴いたときは、あの職人指揮者ネーメ・ヤルヴィのものか耳を疑った。
そして少し戸惑った。
85年の旧盤から4分ほど演奏時間が長くなっている。
前回は速いテンポで痛快な演奏だったが、今回はマゼールやティントナーに次ぐ
演奏時間。しかも一様に遅いというよりもロマンティックに溜め、歌う。

冒頭のアダージョのテンポは息が長くなりそしてアクセントの角はまろやかだ。
木管の音は惚れ惚れする美しさ。
続く弦のテーマはひんやりした音で小さな慟哭をしている。
エッ、泣いている?
凛とした姿で涙など見せなかった旧盤に対しこちらは涙が零れまくっている。
なにがあったのかと思うほど切ない。
この7番でこんな情感を湛える演奏をしていいのか。

ぐしゃぐしゃになった顔を上げると森から太陽が登る(トロンボーンの啓示)。

ヴィヴァーチェシモに入ってからのテンポも急峻ではない。
うねる弦も強調されずオケ全体が溶け合い進む。

アレグロ・モデラートでは思わぬテヌートやテンポの明らかなギアチェンジに驚く。

ヴィヴァーチェからの終結部は無理やり力で推し進めるのではなく包容するロマン。
この息遣いはさすがに熟練の味。このベテラン指揮者は決める。

ネーメ・ヤルヴィ(1937~)。
どちらかというと即物的な演奏という印象が強かったが、
ここでは何か思い切り心情吐露してしまったような感がある。
単に年取って遅くなったわけではなく
徹底的に意思を投入した演奏ではある。
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それにしてもシベリウスのこの第7番、なんと素敵な曲だろうか。

録音は本拠地エーテボリ・コンサートホールでのセッション。
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BISの音よりDGは量感たっぷりでクールな中にも温もりを感じる。
全体のバランスもよく優秀録音。

24:37
演奏   情A    録音  95点

シベリウス 交響曲第7番 セーゲルスタム(2006)

2015.11.28 (Sat)
セーゲルスタム67
セーゲルスタム/BBCスコティッシュ交響楽団(2006、BBC)は大づかみ。
粗いが憎めない。いかにもセーゲルスタムらしい。

フィンランド(ラハティ)で行われた2015年シベリウス生誕150年のフェスティバルで
ヘルシンキ・フィルとオープニング・コンサートを振ったこの指揮者。
もともとオペラ出身らしく大きな流れで骨太の音楽を作る。
その代わり細部が甘くなる。

この交響曲の中間部など、弦のパッセージと木管の掛け合いが難しいが
この演奏もハラハラする。オケと指揮者の呼吸なのか、そもそも指揮が
分かりにくいのか縦の線が合わなかったり。
しかし肝心の終結部ではしっかり豪快に盛り上げてくれる。

このCDで感心したのはわざわざトロンボーン奏者(サイモン・ションソン)の
名前がクレジットされていること。確かにしっかり聴こえるが、
この曲におけるこの楽器の重要性を認識している証左。

録音はグラスゴー・シティ・ホールでのライブ。
響きは多くなく放送用音源ぽく全体をつかむ。距離感は適切で低域も薄くなく
BBCの安定感を感じる。拍手はカットされている。

(それにしてもこの指揮者の変容は凄い。左1968年、右2007年)
セーゲルスタム1968  セーゲルスタム2007

21:54
演奏  A-   録音 90点

シベリウス 交響曲第7番 エールリンク(52)

2015.10.15 (Thu)
ehrling-sibelius37.jpg(←LP CD→)エールリンク全集
エールリンク/ロイヤル・ストックホルム・フィル(52、FINLANDIA)は
図太く率直。
録音が古いため一般的ではないが、演奏内容は素晴らしい。
演奏時間は20分を切り、基本はインテンポ。
瑞々しくひたむきに突き進む中に雄大な姿を見せる。
当時のこのオケはまだ、ロシア的なサウンドで、トロンボーンなど
ヴィヴラートが効き過ぎているが男性的な演奏だ。

エールリンク(Sixten Ehrling1918~2005)はバーンスタインと同じ年に
スウェーデンのマルメの裕福な銀行家に生まれた。
親は当然この息子に銀行を継がせようとしたが、
買い与えたスタインウェイのグランドピアノに才能を発揮してしまった。
結局18歳のときに(1936年)ストックホルム王立音楽院に進みピアニストとして
音楽家のキャリアをスタートさせた。1941年にはドレスデン歌劇場でカール・ベームの
助手として指揮活動も行ったが戦争によりスウェーデンに戻り
母国で指揮者として本格的な活動をすることになった。

そして1952年・53年で史上初のこのシベリウス交響曲全集を録音した。
当時のレーベルは「メトロノーム」社だった。指揮者30代前半の快挙。
その後1963年以降アメリカのデトロイト交響楽団で活躍するが
1973年以降はジュリアード音楽院での教鞭活動が中心となった。
90年以降は実質引退し、2005年86歳で没した。

カラヤンより若く、広大なレパートリーを誇りながらも、
録音はこの古いシベリウスほかニールセン、ベルワルドなど
北欧ものに限定され、かつステレオ以降のものは少ない。
なぜなのか?
多分指揮者自信がそれほど商業録音に熱心でなかったこと、ポピュリズムから
離れていたことが要因ではないだろうか。

しかし、当時、評論家からは「神秘性を取り除く」と評された
このシベリウスを聴くと新鮮でスタイリッシュなことが分かる。
まだ指揮活動をしていた1980年代にCDをシベリウスを残してくれていれば
この人の名前は多くの人に刻まれたのではないか。
エールリンク1880

19:57
演奏  参   録音 71点

シベリウス 交響曲第7番 渡邉暁雄(79)

2015.09.25 (Fri)
渡邉シベリウス7
渡邉暁雄/東京都交響楽団(79、FONTEC)は強さを感じる。
3年後の82年に来日したヘルシンキ・フィルとの演奏より2分ほど短い。
その分引き締まった造型感が印象的。
幻想性は薄くもっと意志的な音楽がつくられる。

冒頭からの流れは筋肉質で逞しい。男らしく突き進む。
惜しいのはヴィヴァーチェッシモ。ここは2/3から4/6に拍子が変わり
テンポも自在に変化する。弦の合わせがほんとに難しくずれ感あり。
指揮者は微妙に自由にテンポを揺らすのでオケの必死感が伝わる。

しかし、渡邉は推進性を優先。弦の刻みを明確にしながら前進させる。
終結プレストで天空に向かって盛り上がる音楽はいつ聴いても素晴らしい。
そしてこの演奏は一途に突き進む。
溜めは少なく最後まで意志の強さを感じさせる。

録音は3月17日東京文化会館での第112回定期演奏会のライブ。
この会場の音響はもっと痩せているかと心配だったが
この録音は低域からしっかり捉える。弦を明快にしているのが成功の要因。
デットであるのはやむを得ないが渡邉の音楽のつくり方に沿っている。
なおこの時期、日本の聴衆の終演後の拍手はまだ早い。

19:59
演奏  A     録音 87点

シベリウス 交響曲第7番 ストゥールゴールズ(2012)

2015.09.24 (Thu)
ストゥールゴールズ全集
ストゥールゴールズ/BBCフィル(2012、CHANDOS)は素晴らしい。
が、オッコ・カム盤(BIS)と比較すると先輩に一歩上の彫りの深さを感じる。
作為のない似た演奏で、演奏時間も近い。
ではこの違いは何なのだろうか。

ひょっとすると、オケの意識なのかもしれない。自国の作曲家に対する想いの強さ。
そして、やはり指揮者の経験値。
ツボの押さえかたの差。

指揮者は1963年ヘルシンキ生まれ。
このオケの首席客演指揮者にしてヘルシンキ・フィルの首席指揮者。
この録音がヘルシンキフィルでなされていたならば…。

冒頭より寂しさに震えながらも強さを秘め進む姿はシベリウスに合致。
瑞々しさを湛える。
最初のトロンボーンによる啓示の重要場面
先輩カムの絶妙な呼吸感とまでいかないがひたひたと。

ティンパニの表情はしっかり意志がこもるが、ヴィヴァーチェッシモから
うねるアダージョのティンパニは録音のフォーカスが甘いのが惜しい。

終結のヴィヴァーチェからプレストも強引ではなく自然に盛り上がる。
但し、クライマックスに至る過程で緊張がほどけてしまっているのが残念。
ここは極めて重要な場面。
ただ、最後まで力むことなく自然の響和を感じさせるのは立派。

録音はマンチェスターのBBCの新しい本拠地、サルフォード、メディアシティUKでの
セッション。10月24日に7番23日に6番が収録され全集がスタート。
シャンドスらしく響きが多い。第7番では幻想的な雰囲気を醸し出すのに一役買うが、
好みではもう少し締まり、解像度が欲しい。

22:12
演奏  A    録音 93点

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