クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Sibelius Sym4 の記事一覧

シベリウス 交響曲第4番 ヴォルメル(2008)

2015.10.13 (Tue)
ヴォルメル14
ヴォルメル/アデレード交響楽団(2008、ABC)は森の中。幻想曲。
寂しい、寂しすぎるかもしれない。
しんしんと降り積もる雪の中の静寂。温もり、灯りを求めて彷徨う。

第1楽章から終楽章まで性格付けの対比は強調されず幻の中で流れる。
深刻さを出さずになだらかに通り過ぎる。
あまりにも寂寥感とモノクロで覆われた世界と感じるかもしれない。
形式的には4楽章だが起承転結という交響曲の枠を捨てている。

終楽章に辿り着くと少し光が見える。
グロッケンではなくダイヤモンドダストのようにきらきら鳴る。
チューブラベルをトライアングルビーターで叩いているのではないか。
晴れ晴れ感はほどほどでどこまでも楚々としている。
最後に鳴く夜の鳥の声がまた寂しい。
ほんとに灯りを見つけることが出来たのだろうか。
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録音はアデレード・タウンホールでのセッション。
綺麗なホールトーン、少しヴェールに包まれたような慎ましい音は
この曲に適している。これ見よがしに各楽器が強調されない。
雰囲気のある録音。

9:58  4:44  10:09  10:04   計 34:55
演奏  森A+    録音 94点

シベリウス 交響曲第4番 ストゥールゴールズ(2013)

2015.10.04 (Sun)
ストゥールゴールズ全集
ストゥールゴールズ/BBCフィル(2013、CHANDOS)は美しく流れる。
音楽が淀むことなく進行しどこにも違和感を感じさせない。
彼の表情は慎ましいが、意志を持って隆起するところはしっかり。

第1楽章の演奏時間は9分前半と短い。
せかせかした感じはなく風に乗って流れゆく雲を見る風情。
重々しくならず、繊細に音楽を扱うので安心していられる。

第2楽章はメリハリと躍動感がある。

第3楽章も深刻になりすぎず淡々とした表情で流れていくのは最近の傾向。
但し、クレッシェンドでのティンパニの力強いロールなどは
意志を飛ばしていない証拠。

終楽章も表情過多に陥らず基本は淡々と。
持ってまわったところがないのが物足りないくらいだが
あっけなく曲を終わらせて見せる。そこに余韻を残すやり口だ。

なお、この全集ではこの曲の後に
「3つのフラグメント(交響的断片:ティモ・ヴィルタネン校訂)」が収録されている。
交響曲第8番のパーツではないかとされるもの。
たった、2:48の収録で幻の交響曲の一部なのかは判然としない。
しかし、作曲から20年後に作曲者の手によって焼却されたこの交響曲への思いが
一層募るばかりとなる。

ストゥールゴールズ、派手ではないがないがセンスのよい全集を作ってくれた。
remote_jpg.jpg

録音はイギリス、サルフォード、メディアシティUKでのセッション。
響きの具合がこの曲にあっておりひんやりと美しい。
低域のそれほど多い曲ではないが弦のしっかりした量感が安定感を醸し出す。

9:19  5:01  10:54  9:26   計 34:40
演奏  A+   録音 94点

シベリウス 交響曲第4番 カム(2014)

2015.10.03 (Sat)
カム全集
カム/ラハティ交響楽団(2014、BIS)は大自然を感じさせる。
勿論、描写でなく心象風景なのだが。

この曲はシベリウスの深い精神的苦悩から生まれたとする経緯をひたすら
強調すると、とても深刻な演奏になる(極端なのはケーゲル盤)。
しかしカムはそうしたドラマに必要以上に肩入れすることない。
シベリウスの腫瘍はこの曲の作曲時点では快方に向かっていた。

一つのヒントは別にある。
1909年、作曲家は義兄弟であり画家のエーロ・ヤーネフェルトとカレリア地域の
コリKoli山地とピエリネンPielinen湖を訪れ強烈な印象を受けたという。
この演奏はその時見た手つかずの自然の深さと荒々しさを感じさせる。
単なる苦悩の曲ならば、シベリウスは旅に誘ってくれたこの画家に
この曲を献呈することはなかっただろう。
(↓義兄ヤーネフェルトが描いたコリ山からの眺め
  単なる風景描写でない心象が窺える Koli National Parkのサイトから)
jarnefelt_koli.jpg
第1楽章冒頭から吸い込まれる。ラハティの弦は谷から湧き上がる雲のよう。
そして射し込む朝日。決して力まず深々としている。
このコンビの音には包容力と優しさがある。
フレーズ感の間などが非常にゆったりしており緊張を溶かす安堵がある。

第2楽章は爽やかな風。金管の角を立てずチャーミングな木管を際立たせる。
彼の劇付随音楽のよう。

第3楽章冒頭の木管は夜の鳥の鳴き声。
漆黒の闇の中でさまざまな思いがぼんやりと浮かんで消える。
決して意表を突くような剛音を出さないこのコンビは夜の静寂(しじま)に溶け込む。

終楽章は朝の心の躍動。
この楽章で通常は目立つグロッケンシュピール抑え華を添える扱いとした
のはカムらしい。自然への憧憬、山々を歩み湖を見渡すことのできる感謝。
しかし荒々しい風も吹く。
終結にかけての名残惜しい心模様をカムは時間をかけてゆっくり奏する。
lake-pielinen.jpg

録音はラハティ・シベリウスホールでのセッション。
このホールで響く音は自然の音と融合している。
言うことない。

11:16  4:50  11:46  9:51   計 37:43
演奏  S    録音 96点

シベリウス 交響曲第4番 ザンデルリンク(77)

2011.01.13 (Thu)
ザンデルリンクシベ全
ザンデルリンク/ベルリン交響楽団(77、ETERNA)は何もしていないような演奏。
でもこのオケの弦楽の音色が好きだ。洗練さは無いが、真面目さが心に届く。
録音は東ベルリンのキリスト教会でクールトーンながら低域から充実。

第1楽章はこのオケの録音特有の低弦が分厚く呈示される。進行はインテンポで遅い。
木質のオケの響きが良い雰囲気を醸し出す。ケーゲルのようにおどろおどろしくなく
落ち着いた音楽。私にはこちらの方が心に優しい。堅くもないがかといって
幻想的でもない。率直に音楽をやっている。
第2楽章も真面目。少し生真面目すぎか。
第3楽章も低弦のゴリゴリ音を伴う。私は案外この音が好き。
男の象徴のような太い音が艶っぽいチェロと交えるとき微妙な色気すら漂う。
本人たちは至って淡々と真剣なのだが、漂う。
終楽章はゆっくりかみしめるような演奏。鉄琴も素朴に可愛い。
森の奥できらめく家の灯りのよう。怒涛の勢いは無い。
どこまでも平穏なムードの維持に努める。朴訥な吹き方の金管も面白い。
緊張を強いるのでなく揺りかごに包まれるような、心安らぐ演奏なのだ。

10:48  4:47  10:05  10:23   計 36:03
演奏  A+   録音 90点

シベリウス 交響曲第4番 サラステ(93)

2011.01.13 (Thu)
サラステシベ367
サラステ/フィンランド放送交響楽団(93,Finlandia)は第2回目の全集から。
「重くのしかかってくるメランコリーと、それに忍耐強く抗していく間に生まれる
一種の緊張感のようなものを劇的かつ雄大に描き出している。」というコピーは素晴らしい。
録音はサンクトペテルブルグでの全曲演奏会のライブで低域もある。

第1楽章は深刻になりすぎないが深い音を出している。9分という速めの展開。
第2楽章第3楽章ともに流れが良い。
虚無感はあまりないが晦渋にしすぎないため爽やかでさえある。弦楽群が清冽に歌う。
終楽章は躍動感が漲る。速いテンポで一気に行く。
この曲にまとわりつく死の影とかに惑わされない。
引き締めるところではテンポも落としくさびを入れる為単調・能天気ではない。
このライブシリーズは指揮者、オケの共感が感じられる。

9:00  4:34  9:20  9:25   計 32:19
演奏  A+  録音 91点
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