クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Sibelius Sym3 の記事一覧

シベリウス 交響曲第3番 ストゥールゴールズ(2013)

2015.11.01 (Sun)
ストゥールゴールズ全集
ストゥールゴールズ/BBCフィル(2013、CHANDOS)はニュアンスより率直。
この演奏を最初聴いたときは良い、と思った。
しかし、その後カム/ラハティを聴いて違いが歴然とした。
特に第2楽章。
カムもストゥールゴールズもただ流している部分はなく、随所に新鮮な発見をさせる。
しかしそうした表現の発露が単発的なものか一連のつながりを持っているのかで
こうも音楽の説得力が変わるのだ。また、オケのバランスもラハティの一体感に
対してこちらは分離感がある。その結果、カム盤はそのまま身を任せて浸れるが、
この盤は一種の緊張感で身構えてしまう。

しかし、この演奏はそもそもカム盤と行き方が違うので同列で比較するのは意味がない。
両端楽章の逞しい力感、イキイキ感がこちらの身上。
カム盤よりこちらの方が健康的で好きという感想もあろう。

録音はサルフォード・メディアシティUKでのセッション。
スケール感のある音で迫力もある。低弦のバキバキ音なども生々しい。

(↓シベリウス公園のモニュメント、実際に見た時は鳴っているように感じた)
SibeliusParkMonument.jpg

10:17   9:48   8:43   計  28:48
演奏   A    録音 95点

シベリウス 交響曲第3番 ヴォルメル(2008)

2015.10.10 (Sat)
ヴォルメル3vn
ヴォルメル/アデレード交響楽団(2008、ABC)は雪の音がする。
ふと気がつくと、雪原にはらはらと雪が舞い降りる風景の中にいる。
ふわっとした音はおよそ現実的ではない。特に第2楽章の夢幻の世界は特筆。

Arvo Volmer(1962~)はパーヴォ・ヤルヴィと同郷エストニアで同世代の指揮者だが
私はパーヴォ同様の素晴らしい指揮者であるとこのシベリウスを聴いて確信している。
この全集は2004年から彼が音楽監督を務める同オケで「シベリウス・フェスティバル」
(2007~08)を開催した時に並行して録音されたもの。
純粋混じりけのない音の中に、暖かさを絶妙に入れてくるセンスが素晴らしい。
また、アデレード響をここまで引き上げる手腕は大したもの。
ブラインドで聴いたらこれがオーストラリア第5番目(といっても100万都市)の
街オケとは絶対わからないだろう。それほどシベリウスの世界を完璧に再現している。

第1楽章冒頭のチェロとコントラバスの音を聴いた瞬間に痺れてしまう。
すぐに雪の世界に跳ぶ。
この全集は全て雪の世界の写真が使われているがぴったり。
テンポは淀みなくさらりと進むが実に清冽。

第2楽章は淡い世界が続く。繊細な音の置き方。
あくまで自然な流れなのだが歌わせ方、息遣いが絶妙。
後半から射し込むホルンのゲシュトップによるジーツという音が意味深い。

第3楽章も実にデリケート。フォルテッシの頂点も叩きつけるようなことはしない。
常に雪を優しく包むような音の作り方。
4:01から始まるヴィオラによるコラール風のテーマは最初ぼんやり、
そして徐々にしっかり呈示される。この表現の素晴らしさはいいようがない。
終結にかけては視界が高速で拡がり、いつも間にか高みで雪原を見下ろす。

録音はオーストラリア・アデレードのタウン・ホールでのセッション。
adelaide-town-hall-482x298.jpg  Auditorium11_Adj.jpg
非常に美しい響き。
この全集の成功の半分は清涼なのに温もりのあるこの響きのおかげ。
オンマイクではなく夢の中で聴くような音。
マス的なのだが暖色ではなくひんやり感がある。
明晰さという点では更に求めることもできるが
曲にマッチした雰囲気のある音という意味では最高だ。

9:55  9:44  8:48   計 28:27
演奏  雪S   録音 95点

シベリウス 交響曲第3番 カム(2012)

2015.10.06 (Tue)
カム全集
カム/ラハティ交響楽団(2012、BIS)は立体感抜群。
この曲で重要となる弦楽部が勇壮で実にいい響き。力と色気が乗る。
この交響曲が第2番より凝縮・明快さで格段の進歩を遂げたことを実感する。

また、この曲のメロディーは北欧独自の節回しを感じるが、ラハティは万全。
ここら辺はシベリウスを得意とするイギリスのオケとは微妙に違うところ。

72年のカム/ヘルシンキ盤とタイムラップはほぼ同じ。
あれは素晴らしい名演だが一層彫りが深くなっている。
しかも鮮度が高く生命力は衰えていない。

第1楽章の弦の進行はリズムが前向き、第2主題はしっかり歌う。
積極的だ。弦の各声部が重層的に運動しながら盛り上がりティンパニが
推進力を補強する。ここでのカムは全く枯れていない。

第2楽章は「感情のこもったアンダンテ」であるがフルート、クラリネットの歌、
呼吸感が素晴らしく、弦の心の震えがいじらしい。

第3楽章は低弦のゴリッとした音が逞しさ、それぞれのピースの立体感、
押し寄せる波のような動感など素晴らしい。
べたっと厚塗りで単純に隆起するのとは違う。
ホルンはゲシュトップも含めてしっかり鳴って迫力を補強。
最後の終結まで一途に進む。安定感も抜群で図太く描き切る。

録音はこの全集で最初期に当たるが既に完成されている。
適度で木質なホールトーンでオケ全体を捉えながらも
それぞれの楽器の明解さが失われていない。
同時期のストゥールゴールズ(シャンドス)盤と比べてもその点で一歩リード。
ともかく演奏・ホール・録音混然一体となって高みを目指す。
etusivun_kuva.jpg
(ヤルヴェンパーのアイノラ荘で生まれた最初の交響曲 Ainola HPより)

10:11  10:05  8:55   計 29:11
演奏  S   録音 96点

シベリウス 交響曲第3番 ヤンソンス(94)

2010.12.26 (Sun)
ヤンソンス35
ヤンソンス/オスロPO(94、EMI)は同時期の5番よりは成功。
録音はオスロのコンセルトハウスで軽量ではあるが弦の逞しさも巧く捉えられている。
この曲の場合さほど不足を感じることはない。
第1楽章は速すぎないテンポを基調に時にグッ堪える。大げさすぎない範囲での表情。
第2楽章も一定の流れの中でヤンソンスらしい積極性を出す。管理されたロマンだ。
終楽章は指揮者の意志が横溢。速めのテンポで前のめりなほど。
アクセントをきっちりつけて断片を紡ぐ。中盤から繰り返される主題は徐々に力を増す。
但し、オケのせいか、録音なのか音に深みが欠けるので真の迫力に到達しない憾みがある。
明確さと運動性を保った終結は良いのだが。

10:10  9:42  8:12   計 28:04
演奏  A   録音 89点

シベリウス 交響曲第3番 ベルグルンド(86)

2010.12.05 (Sun)
ベルグルンドシベ35EMI
ベルグルンド/ヘルシンキPO(86、EMI)は良い演奏でいつも演奏している手慣れた感。
シベリウスは難しい。
コテコテに表情をつけるとシベリウスから離れていくし、
かといって何もしないと自然の声すらも聞こえなくなる。
録音はヘルシンキのカルチャーホール。
第1楽章は人肌のぬくもりを感じさせる。
ヘルシンキの少しかすれたような弦の音色は良い。
峻厳な寒さはなく時折独自の表情を見せる。終結にいたるまで絶叫しない。
第2楽章も丁寧なでき。木管に微妙な表情が乗る。
第3楽章もよいがもう一歩の踏み込みがほしい。
この曲に関してはカムの名盤(DG)を凌ぐことはできなかった。
念のため第2楽章を聴き比べてみた。
冒頭わずかに出る管の音の深さ。その後の弦と木管の織りなす幻覚のような音の明滅。
曲全体でも彫の深さは後輩のカムが上回っている。
これはやや平板なEMI録音の差も印象に影響しているかもしれない。

10:17  9:48  8:31   計 28:36
演奏  A   録音 90点
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