クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Sibelius Sym1 の記事一覧

シベリウス 交響曲第1番 N・ヤルヴィ(82)

2015.12.27 (Sun)
ヤルヴィシベ1
N・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団(82、BIS)は、BISの全集の傑作。
記念すべきこのデジタルによるシベリウス交響曲全集は82年から85年にかけて
収録された。LP併売時代のためそれぞれ1枚に1曲の交響曲+プラス管弦楽という構成。
一枚一枚3500円のCDを買いためて行ったのを思い出す。

当時ヤルヴィ(パパ)もこのオケも無名だった。
GothenburgSOをなんて読むのかどこにあるのかも知らなかった。
しかしその演奏には惹きこまれた。メジャー録音とは何か全然違っていた。
振り返れば、70年代までは英米のオケでシベリウスが録音されていたが
北欧勢による全集はやはり響きが違っていたのだ。

特にこの第1番は職人になりきれない率直にしてロマンティックなN・ヤルヴィと
この当時まだ粗削りなエーテボリ響の特性が最大限に活かされた名演と思う。

第1楽章冒頭はたっぷり含みを持ってはじまりそれを粗い金管が突き抜ける。
すっかりのみ込まれる。テンポは自然に流動するが停滞感はない。

続く各楽章も表情豊かでメリハリがあり飽きさせない。

終楽章も強さと優しさを併置する。冒頭の1分半の対比感。
その後の北風を伴う逞しい運動と濃厚な歌。
この交響曲特有のチューバやハープ、打楽器群が大活躍。
田舎のオケで洗練はされていないが、か細さはなくむしろ太く馬力がある。
終結まで一気に持っていく。

初めてこの盤を聴いた時、マイナーレーベルの無名のコンビによる充実の
演奏にたまげたものだった。

録音はエーテボリ・コンサートホールでのセッション。
SONY製のPCM機器とノイマン社製マイク使用などが誇らしげに記載。
更には表紙には赤文字「WARNING」が踊り、裏面にはこのダイナミックな
デジタル録音の再生に注意との記載。時代を感じる。
確かに最近のBISほどの奥行きはまだないがDレンジが広く自然な音響と
明確な音像を持つ音が収録されている。
BIS録音陣がこの当時から極めてレベルが高いことも思い知る。

11:09  9:47  5:11  12:09   計 38:16
演奏  S    計  91点

シベリウス 交響曲第1番 スヴェンセン(2002)

2015.12.25 (Fri)
スヴェンセンシベ1
スヴェンセン/BBCウェールズ管弦楽団(2000,BBC)は狂気。
私はこの曲が正直得意ではない。が、この演奏は刺さった。
万人には絶対勧められない。眉を顰める人多数。
しかし、この暴力的な演奏は複雑なシベリウスの深層を抉る、と思う。
ある面の真実。

21世紀にこのような過激な指揮をするヨゼフ・スヴェンセンとはどんな人物か。
日本人とノルウェー人のハーフで、1960年ニューヨーク生まれのアメリカ人で、
家族とともにデンマークに在住。もともとヴァイオリニストとして登場しているが
近時は指揮活動が盛んなようだ。
全く知らなかったがとにかく、なんと言うか、唖然。
swensen.jpg

第1楽章は予備知識なく聴き始めた。
しかしなにか様子が普通と違うことに気がつく。
やたらに積極的な表情なのだ。しかし妙な違和感がない。
スヴェンセン・ワールドともいえる独自世界に入った。
ブラスとパーカッションの叩きつける音は聴いたことがないほどのエナジー。
このオケも恥じらいもなくよくここまでやる。
音楽が鎮まるとテンポがぐっと落ちハープが寂しげにポロンポロン。
支離滅裂なのに説得力がある。

第2楽章も繊細から爆発までの振幅がデカイ。突然ブチ切れる凶暴さ。
場面ごとにいちいちアクが強い。チャイコの1812年と双璧。
リズム感がいい。
そして暴風雨が過ぎた後の優しさが恐ろしい。

第3楽章も濃厚過ぎる。テンポは溜められ、ティンパニは当然猛烈強打。

終楽章の導入は徹底して遅い。間を取り完全にオドロドロの劇画の世界。
主部に入ると今度は異常な加速。
そしてシンバルと大太鼓のパルス音で音楽が止まったあと
大袈裟にメロディアス洪水。
6分からはギャロップは完全にメタル・ハード・ロック。
ブラスは吼え、パーカッションは派手なビート。
やり場のない怒り、そして噎び、嗚咽、更に嘔吐!
終結のかけてのど派手な演出は見事に決まっている。
凄い、この人の演出能力はめちゃくちゃ凄い。
シベリウスのこの交響曲を題材に見事な破天荒スペクタルを作ってしまった。
流石プロムスで、終演後は若い歓声が聞える。
こんなイキイキ音楽を聴けばクラシック・ファンも増えよう。

録音はロイヤル・アルバートホールでの8/15のプロムスでのライブ。
proms2002.jpg
BBCの収録なので音は万全だ。かなり凶暴な音がしっかり収録されているが、
量感は薄めなので補強すると更にど迫力。
ライブの一発録音だが聴衆ノイズは気にならない。
響きは多くないが広い会場であることはわかる。
ティンパニや奥の菅楽器も明確な輪郭を保っているのでマイクセッティングも
慣れたものなのだろう。

10:46  9:31  5:16  12:32   計 38:05
演奏  爆S    録音 91点

シベリウス 交響曲第1番 ストゥールゴールズ(2013)

2015.10.31 (Sat)
ストゥールゴールズ全集
ストゥールゴールズ/BBCフィル(2013、CHANDOS)はソリッドで鮮烈。
ティンパニの合の手が活躍するこの曲では、この打楽器をどのように捉えるかが重要。
その点、演奏・録音面でもきっちりアドヴァンテージ。
硬く強く俊敏に叩かれるこのティンパニが極めて効果的。

また、この指揮者らしくやや鋭角的な音で引き締まった音楽を作る。
フォルテッシモではブラスを先頭に容赦なく強音。
北の海のような荒々しい表現を基調とする。
が、第1楽章終結2分ではテンポを思い切り落として情感がどっと滲みだす。
第3楽章のはまさにティンパニ協奏曲。
終楽章も力で押し切るだけの演奏でなく、低弦のごりっとした表情や、
金管の独自の立体感など単に主旋律を強く鳴らすだけの演奏ではない。
また終結の粘り腰で押し出す音響は強烈。

ここまで思い切りよく徹底した演奏は少ない気がする。
優等生的なくここまで率直な表現を実現した指揮者を讃えたい。
storgards.jpg

録音はサルフォード・メディアシティUKでのセッション。
流石に新しい録音だけに猛烈な強音にも全く破綻がない。
終結部などLPだったら完全にアウトだと思われる。
ホールトーンはあるが従来のシャンドスによく見られた残響とともに音が埋没する
こともない。録音エンジニアが昔と変わっていることも音づくりの変更要因だろう。
ややハイがきついこともあるが新鮮で明快な音がする。

11:16  9:21  5:07  12:41   計 38:25
演奏  鮮A    録音 95点

シベリウス 交響曲第1番 ヴォルメル(2007)

2015.10.14 (Wed)
ヴォルメル全集
ヴォルメル/アデレード交響楽団(2007、ABC)は表面上は淡泊な表現。
この演奏を聴くとヴォルメルのセンスを感じる。
この曲は交響詩を集めたような趣があるが、指揮者は純粋交響曲として扱っている。
従って、大気のうねりや、押し寄せて返す波など劇画的ではない。
金管や打楽器の突出を抑え流麗さを前面に出す。
幻想的な雰囲気は満点なのだが激しさは後退する。

私の好みには合うが、両端楽章など平板と感じる人もいるだろう。
逆に第2楽章のアンダンテが一番爽やかで受け入れられるかもしれない。
第3楽章はヴァンスカほどではないがスケルツォが滅法速い。
ティンパニの合いの手が抑制されているのはこの指揮者の方針。
トリオは遅く、緩急がつく。
終楽章は打楽器系が奥まり迫力という面では乏しい。

後期交響曲と相性が良くてもこの曲の再現は難しいというべきか。
しかし、ヴォルメルの第2番や「フィンランディア」の分厚い男気を知っているので
この第1番は意外であった。
arvovolmer.jpg
録音はアデレード・タウンホールでのセッション。
優秀な録音の全集だが編成の大きいこの曲ではもう少し明確に録った方が
メリハリが出たと思われる。後期の交響曲では大太鼓やシンバルが
使われないため不足はないが、この曲では伸び感が欲しい。

10:19  8:57  4:48  12:14   計  36:18
演奏  A   録音 92点

シベリウス 交響曲第1番 カム(2012)

2015.09.29 (Tue)
カム全集
カム/ラハティ交響楽団(2012、BIS)は高度に普遍的。
優等生的おとなしさでなく、曲が求める優しさ激しさを兼ね備える。
録音も考えればこの盤だけあればよいのではないかと思う。
シベリウスの交響曲の中で個人的には最も聴く機会の少ない曲だが、
一般的に言えばこれに何かを足したり引いたりしなくてよい完成度だろう。

カムはヘルシンキ交響楽団とこの曲を40年前に録れている(1972、DG)。
恐るべきはその時とタイムが同じ。通常は老化で心的テンポが遅くなる
(exバーンスタインは67年盤→90年盤で5分伸びている)が、
そのようなことが全くなくむしろ速めを維持。
そして演奏も録音も含めより立体的になっている。
歌うべきところは歌い、打ち込むところはしっかり。
カムの指揮姿は地味でむしろ職人的な淡々としたもの。
しかし、この演奏内容は十分に熱く、暖かい。
終楽章など鮮烈ですらあり若い時の旧盤を上回る。
このような表現ができるのも自信の表れかもしれない。
(↓オッコ・カム 左:1970年頃 右:2010年頃)
okko_kamu_1972.jpgkamu2011.jpg
録音はラハティのシベリウス・ホールでのセッション。
この全集の第一弾だがダイナミックな曲を安定感をもって捉える。
重要な役割のティンパニもぼけずに硬質な音のまま収録。
シンバルの衝撃、チューバの分離など明解なうえに弦は木質感をキープ。
決してヒステリックにならない。BISの技術、センスに敬服するしかない。

10:35  9:14  5:32  12:42   計 38:03
演奏  A+    録音 96点
 | HOME |  Next »