クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

R・シュトラウス アルプスSym の記事一覧

R・シュトラウス アルプス交響曲 A・デイヴィス(81)

2013.01.23 (Wed)
Aデイヴィスアルプス
A・デイヴィス/ロンドン交響楽団(81、SONY)は中庸。
このCDはエヴァ・マルトンの「4つの最後の歌」を買ったら
余白に入っていたもの(失礼)。私にとってこの指揮者は
プロムスで見かける軽めの特色のない指揮者という印象。
今回それを覆すまでには至らなかった。

録音はデジタル・セッションで中規模の会場でこれまた中庸。
ヌケと分離がイマイチ、というとアビーロードスタジオか?
全奏で弱点が露呈。

冒頭からおどろおどろしくなく丁寧な作り。
だが特色がないといえば、ない。
自然音がいろいろ聞こえてくるが、どれもが飛び出すことなくのどかだ。
これがイギリスなのだろうか?
勝負をして見せる気概がない。
頂上に登りつめる場面でも大きな音は出すが、迫力がない。
最後までこの調子。
良く言えば安心して聞いていられる(ちょっと苦しい言い方)。

53:30
演奏  B+   録音 88点

R・シュトラウス アルプス交響曲 ヤルヴィ(87)

2010.01.25 (Mon)
ヤルヴィアルプス
ヤルヴィ/スコッティシュナショナル管弦楽団(87、CHANDOS)は全集魔ヤルヴィが
R・シュトラウスに取り組んでいたころの一枚。この人は録音職人で水準は高いが
この人でなければ、と思わせるものが少ないのが特色。
ということでそこそこの期待感で聞いたが予想は裏切られた。
良いではないか。
録音はCairdHallで適切なスケール感と明晰さを兼ね備え良好。
カズンズ兄弟による録音の魔術が含まれているかもしれない。
演奏は小さなことに拘泥しないたくましくダイナミックなもの。
オケのレヴェルも十分で金管など輝きのあるフォルテを放つ。
テンポは基本的にインテンポで緩まない。
「氷河」から「危険な瞬間」「頂上」もダイナミックで率直な表現を
基本としながらも結構感動的だ。この局面での空間に響くオーボエやびりびり響く
トロンボーンは良い感じ。ヤルヴィの巧さが出ている。
「エレジー」からの寂しげな歌も空間にこだまして虚無的な雰囲気を演出。
ところで、このCDには「嵐の前の静けさ」(トラック17)の2:06から5秒間
の無音部分がある。ちょうど嵐の来る前の緊迫した空気が流れクラリネットが
しゃくりあげた後のこの5秒は編集のミスかもしれない。
しかしこれが異常な緊張状態を聴き手に迫ることになった。
「どうしたんだ?」「何が起こったんだ!」。
以前「007」の映画製作者がボンドがスキーを履いたまま2000メートル級の
山の崖から飛び降りる瞬間で、音を切ってあえて無音状態にすることによって
スリルを高めたと語っていたがここで実は似たような現象が期せずして起こっている。
これがヤルヴィの指示で演奏が止まっているとしたならばすごい演出である。
ということで続く「嵐」は壮絶だ。
金管の咆哮はブラインドではこのオケとは想像できないだろう。風圧を感じる。
「日没」は神々しく輝く。
一発録りでないから当たり前かもしれないがオケの体力は万全
(この録音は86年12月から87年1月にかけて行われている)。
「終結」は深いオルガンを伴いながらも木管は清々と歌う。
職人ヤルヴィにしてはしっかり歌っており感動的。

計 49:24
演奏   A+   録音 92点

R・シュトラウス アルプス交響曲 ヴィト(05)

2009.10.19 (Mon)
ヴィトアルプス
ヴィト/シュターツカペレ・ヴァイマール(05.NAXOS)は予想外の力演、素晴らしさ。
表現は端正ながら気宇壮大。オケはチューリンゲンの人口6万人の都市の歌劇場の
ものとは思えない素晴らしさ。思えばヴァイマール(ワイマール)は文芸の町。
このオケは1491年の宮廷管弦楽団に端を発し、バッハともゆかりが深い。
若きR・シュトラウスもこのオケで5年間副指揮者を努めている。
そんな自信と誇りがこの演奏の背景にある。
録音はヴァイマール・ホールでマス中心の豊かな音。
ナクソスの録音もここまで来たか、という感慨を抱く。
冒頭から日の出にかけてもやの中で低弦のドクドク音が高鳴る鼓動を表すのは印象的。
「森の入口」あたりからゆったりと深い音で大河のように流れる。
3日かけての録音だからかオケも万全で「頂上」以降も悠然と吹き上げるし細部の表現も
よく聞くと面白い(ex「見えるもの」1:07から普段は埋もれるオーボエの節回し)。
「嵐の前の静けさ」は3:07かけて低重心の緊迫感。大太鼓の轟もすごく地鳴りだ。
アメリカのオケなどと違い金管がキンキラしないため渋い「嵐」。「終末」も大きな息遣い。

計 54:14
演奏  A   録音 92点

R・シュトラウス アルプス交響曲 バレンボイム(92)

2009.10.18 (Sun)
バレンボイムアルプス
バレンボイム/シカゴ交響楽団(92,ERATO)はパワーがあるのにクールな優等生。
破綻はないが面白みが今一歩。オケの力量は抜群なのに?ここが音楽のややこしいところ。
録音はシカゴ・オーケストラホールでのセッション。むき出しでなくバランスのよい音。
エラートらしく品よくやや地味目。この曲の場合もう少し華やかであっても良かった。
冒頭より率直な音作りで作為がない。登山開始におけるそれぞれの風景描写や
心象よりも楽譜にある音をきちんと仕立てていく。カウベルもヤギも遠方の風景。
速めのテンポは良いとしても音楽の呼吸感があまり感じられなく綺麗だけど無機的な感触。
「危険な瞬間」も金管は正確に音を刻む時計のようでハラハラ感はない。
しかし続くオーボエ・ソロはこれではいかんと思ったのか美しく血が通う。
「頂上」の金管その他のハーモニー、バランスは楷書のお手本。
トロンボーン群は本当に素晴らしい。録音がやや浅く低域が弱いのでスケール感で
やや損をしている。しかしそれでも「嵐」の部分ではパーカッションが強打し整然とした
金管が咆哮するため相当な迫力。山の「嵐」というより、正確に風量と威力を計算した
管理された「嵐」。その無表情な凶暴さがかえって怖い。
「終結」は核戦争ですべてがなぎ倒された跡にさす陽のよう。
音やフレーズが全体的に棒状なのが気にかかる。
ゆったりと歌われるのに癒し感がもう一歩なのはそんなつくりに起因するかも。
それにしても最後まで余裕綽々のオケには脱帽。

計49:31
演奏  A-   録音 90点

R・シュトラウス アルプス交響曲 小澤(96)

2009.10.15 (Thu)
小澤アルプス
(↑マッターホルンより大きい小澤!目線が横だし、顔写真のフォーカスが甘い。
もう少し考えて!)
小澤/ウィーンフィル(96、PHILIPS)はアルプス登山というより高原散策という趣き。
達成の歓喜や黄昏に物思う、という風情は慎ましい。ここら辺は小澤らしいといえば言える。
オケの音はやはり素晴らしい。
録音はムジークフェラインでのセッション録音。近接感や低音の強調感のないマス重視の
自然な音。逆に今ひとつ迫力にかけるかも。少しラウドネスをかけた方が迫真性が出る。
冒頭よりこれまた小澤の自然な運びが耳につく。おどろおどろしくなく、かといってせっかちに
急ぐわけでもない。「森に入る」ではほんのり心の高揚感を示す。
しかし、全体に描写音楽として丹念に各場面を演出するといったことはなくしなやかに
さらさらと流れていくという雰囲気。これは「山頂にて」でも同じで比較的淡々としている。
「嵐」も一定の迫力は有るが破綻はなく、良くいえば「音楽的」。
「終結」にかけてはオケをたっぷり鳴らしかつ美しい。しかし、もう少し感慨にふけりたかった。
このCDはよく聴くと指揮者のうなり声が随所に入っており、汗を流し髪を振り乱し
熱演している様子が想像できる。しかし視覚を伴わず、CDで聴いているだけだと
その熱さが伝わらないところがあるのも事実。
ここが小澤のセッション録音を聴く難しさだと感じる。
私は、サイトウ・キネンを聴くために松本に何回か出かけその都度感激して帰ってきたが
実演会場の印象とCDで聴くのとでは落差がある。
2002年から10年までウィーン国立歌劇場の音楽監督を任された理由は
CDだけではわからないのだろう。

計 50:43
演奏  A-   録音 91点
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