クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Bruckner Sym5 の記事一覧

ブルックナー 交響曲第5番 ウェルザー=メスト(93)

2014.10.27 (Mon)
メスト5
ウェルザー=メスト/ロンドンフィル(93、EMI)は指揮者33歳の挑戦。
怒れる5番。
力の入った演奏。
24歳で同郷のブルックナーの5番を指揮して以来何度も取り上げているとのこと。
そうした意味では研究しつくした曲。にもかかわらず(?)若さの一本気を感じさせる。
深みとか宇宙とかは感じないが、この年でわかりきったような余裕綽綽の演奏を
してもらってもかえって興ざめではないか。これはこれでいいのだろう。

録音はウィーンのコンツェルトハウスにおけるコンサートのライヴ。
ロンドンフィルの音がいつもと違うと感じたのはホールのせいかもしれない。
聴衆が入っていることもあり響きは多くないが広さは感じる。
量感は多くなく、帯域は欲張らず、いわゆる放送録音を聴いているような音。

第1楽章は冒頭から意欲を感じる。張り詰めた空気感。
フォルテは豪快に叩きつける。音楽は洗練されず粗野。
テンポはだれることなく引き締まる。

第2楽章はアダージョというイメージとは違い緊張感・切迫感が強い。
音の立ち上げが強固なのだ。テンポがめちゃくちゃ速いということはないが
少し落ち着かない。これは音楽が十分呼吸しないことによる。

第3楽章は一層激する。金管の劈きにイギリスのオケを感じさせる。
トリオも素朴ではない。全般に力感は相当なのだが表情が単調と感じる。

終楽章は冒頭から嵐のように前進。
デット気味の音響のため木管の木霊も雰囲気がイマイチ。
その後のフガートはせわしない。
その後打ち込まれるティンパニは皮が破けそう。
終結は一気で轟音渦巻く。これはその場にいたら恐怖を感じたのではないか。
終演後、地元ウィーンの熱狂的拍手が讃えるが
CDで距離を置いて聴くと流石にやりすぎの感を禁じ得ない。
ただ、なにもせずリスクテイクしない若者よりましだ。

19:04  15:59  13:49  21:31   計 70:23
演奏  A-    録音 88点

ブルックナー 交響曲第5番 ヴァント(95)

2012.11.22 (Thu)
ヴァント5MPO
ヴァント/ミュンヘンフィル(95、Profil)は2カ月後(96/1)のベルリンフィルとの
ライブ盤があるが私はこちらが好き。
素朴で力強いオケや泥んこにならないホールトーン。また、ティンパニが抜群の存在感。
ベルリンフィルには「どうだ」という上から目線?を感じるがこちらは一生懸命感がある。
ともかく表現は年齢をまったく感じさせない自由闊達さ。恐るべき演奏。

録音はミュンヘンのガスタイクでのライブ。鮮明かつ量感豊かに録れている。

第1楽章はもう手の内に入った進め方。スコアを淡々とこなすのでなく
フレーズ毎に表情を置いていく。
それが限度をまったく超えず様式としての統一感がある。
テンポは弛緩せず凝縮感を伴う。
ここぞという時にザードロの豪快なティンパニ,
ごっつい弦が勇み、鮮烈な金管が刺さる。
コーダに入る時、その後のティンパニの決まり方は痛快。
最後はアッチェレランドをかける。ヴァント、若い!

第2楽章の冒頭の弦のピッツカートには凄みがある。
引き締まったテンポはここでも維持される。やや前傾に感じるくらいだ。
なんとも逞しい筋肉質のアダージョだ。

第3楽章も適度な荒れを伴い豪快に鳴る。威勢のいい音楽。
いざという時にはバキっという音が鳴る。

終楽章は前楽章からほぼアタッカで入る。
(楽章の合間に咳をしようとしていた人が冒頭の弦にかぶる)
音楽は流麗にまとめられるのでなくはち切れんばかりの力感をもつ。
推進力のあるテンポと言いこの豪胆な表情と言い83歳とは思えない。
金管が暴発しそうになったり、雷鳴のように上から打ち付けるティンパニといい、
怒涛の奔流のような弦といい・・・。
武骨なだけでなく、ロマン的な膨らみも持つ。
この指揮者の外見だけから感じられないところだ。
終結も無頼な逞しさのまま閉じる。
拍手は最初まばらだがどんどん大きくなる。
圧倒されるとすぐには拍手はできないものだ。


20:55  15:38  14:02  25:02  計 75:37
演奏   A+   録音 92点

ブルックナー 交響曲第5番 バレンボイム(77)

2012.11.18 (Sun)
バレンボイムブル5cso
バレンボイム/シカゴ交響楽団(77、DG)は個人的に完全に盲点になっていた傑作。
91年のベルリン盤も良かったが、振り返るとこのころに素晴らしい録音を
残していたのだ。当時の日本はピアニスト上がりの指揮者にアメリカのオケで
ブルックナー、と聞いただけでマイナス評価だった。私もそうだ。
しかし、いま聴き直してみるとこんなに立派な音楽をしていたのだ。

録音も素晴らしい。シカゴの録音場所はこのころメディナ・テンプルから
オーケストラ・ホールに変えられたが違和感がない。
ブルックナーに必要な清涼な空間を持ちながらも
拡散しすぎない芯のある力強さを保持。
この両立が非常に難しいのだが、やってのけている。
アナログ末期なのでヒスもない。
セッション録音の強みを生かした完成度の高さ。

第1楽章はしっかりヴィブラートをかけた弦の導入。
そこに金管のファンファーレ、トゥッティでは音響が豪壮に立ち上がる。
弦は弾力性を持ちしなやかに歌う。
ハリのある力強い音は凄すぎるかもしれない。
しかし弦の美しさが何とも言えない癒しをもたらしカヴァーする。
中間の再現部11分あたりからぐっとテンポを落とし弦が絶妙なハーモニーを
奏でるあたりは鳥肌の美しさ。テンポは可変するが、気になる不自然さはない。
それにしてもこの曲で重要なブラスの起立は圧倒的だ。
軽々と出し過ぎるかもしれない。唖然として終結。

第2楽章はいじくることなく思いをぶつける。指揮者の唸りが聞こえる。
熱演だが没我になって音楽が崩れるということはない。
美しく整った弦に感傷をからませ心に迫る。

第3楽章は弾力を以って前進。
茶目っけのあるポルタメント弦が合いの手を入れる。

終楽章の導入が終わってフーガが始まる時の意を決したような力強さ。
なるほど。30代半ばの若武者が覚悟を決めた瞬間だ。
ブラスは間然とすることなく吹奏。
後半は勢いを加速させる。ただ、力任せということはなく全ての楽器は
美しさをふりまく。この余裕が、シカゴだ。
いぶし銀の音楽ではないけど青竹がしなるような、こんな5番もいいものだ。

21:25  17:18  13:17  23:39   計 75:39
演奏  A+   録音 93点

ブルックナー 交響曲第5番 ヘレヴェッヘ(08)

2012.10.25 (Thu)
ヘレヴェッヘ5
ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ宮管弦楽団(08、harmoniamundi)はピリオド楽器演奏。
と言っても、バロック時代のそれではなくブルックナー時代のそれだというので、
ものすごく違和感のある音ではない。
このコンビの第4番ではまさに中世騎士道、「ロマンティック」な雰囲気が曲に
フィットしていたが、この5番との相性はどうであろうか?

録音はフランス東部のメス・アーセナルという場所。
相変わらずシルキートーンで夢幻的な美しさを醸し出す音響。
金管の抜けもよく、弦も硬調にならない。響きが豊かなので編成規模を補う。

第1楽章の冒頭で弦が重なっていくときのしなりとした音はピリオド的雅の世界。
ゴツゴツ感はなくメロウな世界が広がる。
弦の持続音が織りなす綾の上を木管が点描していくときの美しさは、
モダン楽器の演奏ではなしえなかった独自の宇宙。
ただ、終結部の急ぎ足は残念。

第2楽章は金管を抑え気味に弦を中心に穏やかな丘陵。
音の立ち上がりは滑らかで断崖はない。18分かけてゆったりと恍惚の時間。

第3楽章は一転速めのテンポでさらさら進む。
光沢をもった栗毛の馬がしなやかに疾走。

終楽章序奏を終えてフーガに入る。威圧感はなく小気味よい。
こうした軽やかな運びは編成とともに指揮者の方針なのだ。
肩の力を抜いた洒脱ささえ感じる。
ノンヴィヴラートの弦と木管の優雅な掛け合い。
全奏ではティンパニも金管も力感を見せるが、常に余裕を持つ。
中間部からのテンポは速くなる。
個人的にはゆっくり宇宙の鳴動を聴かせてほしいがさっさか行く。
ゴシック建築の威容はなく、流線形の洗練。
一気に終結に突入していく。もったいぶらない潔さは、爽やかですらある。

聴き終えて、いままでの5番とは全く違う世界。
一つの方向性として筋が通っている。
ただ、この交響曲に武骨な男らしさを求めたいときは、別の演奏をお勧めしたい。

20:12  18:08  12:27  22:27   計 73:14
演奏  雅A   録音 93点

ブルックナー 交響曲第5番 D・R・デイヴィス(06)

2012.10.24 (Wed)
drデイヴィス5
D・R・デイヴィス/リンツ・ブルックナー管弦楽団(06、ARTENOVA)は
ミニマル・ブルックナー。素材を区分けし繰返し繋げる。
全体を太い筆致で描くという巨匠風の演奏の対極。不思議で面白い。
全休止ごとに音楽が変転する。その中で、美しさを発見する。

録音はリンツのブルックナーハウスでのライブ録音。
素直な自然な音で響きも教会的で爽やかで良い。
流石に作曲者の名前を冠しているホールだ。

第1楽章を聴いていると繊細な空間に浮かぶ音に注意が行く。
ゆったりしたテンポ、響きの良いホールでブルックナー休止や木管の囀りを楽しむ。
フォルテはオケの薄さをカバーしようとする力感。
パーツやフレーズを分解して提示しているので、大河的流れというよりも
その瞬間瞬間の音響芸術。終結部のテンポは特徴的でじっくりじわじわ引きずる。

第2楽章は前楽章の終結のテンポと一転して軽やかに始まる。
第2主題がでるとまた、ぱっと雰囲気が変わる。
フレーズ間の区切りがしっかりしていて表情をころりと変える。
基本的なテンポは速い。

第3楽章はオネゲルの「パシフィック231」を思い出す。
重量感は機関車のそれほどではないが、
テンポの加減速を繰り返すところが鉄道的。
ただし、テンポ自体は全体に遅く運動性能は高くない。

終楽章もこれまでの様式と同じで分断分解しながら進む。
パーツごとのテンポの変化が激しくなる。
その中で密やかな弦など滅法美しい瞬間があり、私はそこの惹かれる。
終結に至る過程での度重なる不思議なギアチェンジはご愛敬。
瞬間アートを愉しむ。
色々やってきましたが、最後はトランペットに誘導されて輝かしい終結。

21:43  14:49  15:10  25:10   計 76:52
演奏  瞬A   録音 92点
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