Saint-Saëns Sym3 の記事一覧
- 2022/06/06 : サン=サーンス 交響曲第3番 ヤンソンス (2019)
- 2022/06/05 : サン=サーンス 交響曲第3番 パッパーノ (2016)
- 2022/06/04 : サン=サーンス 交響曲第3番 ロト (2010)
- 2016/03/10 : サン=サーンス 交響曲第3番 フロール(86)
- 2010/01/24 : サン=サーンス 交響曲第3番 マルティノン(70)
2022.06.06 (Mon)
ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団(2019、BR)は超ド級のスケール。
そしてなんという深い音か。オケの力なのか指揮者なのか。
ヤンソンス(Jansons, 1943~2019)が
76歳で心臓発作で亡くなる半年ほど前の演奏会の記録。
オルガンは指揮者と同郷のラトビア出身のアプカルナ(Iveta Apkalna、1976~)。
前半ではプーランクのオルガン協奏曲が演奏され、後半が本曲。
オルガン尽くしのコンサート。オルガンの鍵盤はリモート・コンソール方式。
(プーランクでのオルガン鍵盤は指揮台のすぐ横)
(サン=サーンスでのオルガン鍵盤は舞台右袖)
第1楽章が始まると各楽器のフレーズの息遣いが深いことに
気が付く。これぞバイエルンの音だ。
後半のアダージョではオルガンの音とあいまって一層深みを増す。
艶やかな弦が切なく歌う。高鳴るうねり。
表面的ムード的でなく心に迫ってくる。
第2楽章に入ってもこのオケの懐の深さは変わらない。
立体感のある胸板の厚い音。フレーズごと韻を踏みながら確認していく。
後半に入るとテンポは一層ゆったりでゆるがせにしない。
刻みにアクセントがつき、金管が分厚く吠える。
終結は物凄いフェルマータがかかる。
渾身の指揮をしたヤンソンスは疲労困憊だ。
こんな重量級の演奏をしていたのでは身が持たないだろう。
録音はミュンヘン、ガスタイクでのライブ。
安定のバイエルン放送局(BR)。素晴らしい音で捉えきる。
オルガンの重低音もなんのその。技術の進歩を感じさせる。
映像で見ると後ろの楽器にも小さいマイクが備え付けられていて
奥行きとともに鮮明さも確保しているのがわかる。
10:23 9:24 7:46 9:27 計 37:00
演奏 S 録音 95点
2022.06.05 (Sun)
パッパーノ/聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団
(2016、Warner Classics)はラテンの美と熱。
パッパーノ(1959~)は、英国生まれ米国育ち。
両親がイタリア人というコスモポリタン。
開放的で明るい音楽作りは血を感じる。
2005年からこのオケの音楽監督を務める。
第1楽章冒の弦のざわめきが左右から掛け合いで聴こえる
(対向配置)。
音楽の隆起は大らかに盛り上がる。
アダージョではぐっとテンポを落とし(11分かける)情熱的に歌う。
ここはかなりロマンティック。
第2楽章は勢いがある。テンポは上がりメリハリがつく。
後半はオルガン(ダニエル・ロッシ)も芯があり力強い。
オケは開放され豪壮。
テンポは慌てず実に堂々。凄いスケールで終結。
即座に拍手が起こるのもやむを得ない。
この場に居たら相当な音響的快感を得られただろう。
なお、併録はパッパーノとアルゲリッチがピアノを担当した
「動物の謝肉祭」。これが実に溌剌として愉しい。
録音はローマ、パルコ・デラ・ムジカのサラ・サンタ・チェチリアでのライブ。
下図左の一番大きなホール。「動物の謝肉祭」は右のホール。
ここでの録音はもっと引き締まった音が欲しいと思っていたが
この曲に関してはスケール感が必要なのでむしろ好都合。
この曲は録音や音響が大きな要素占めるが、
本盤は雰囲気をうまく出していて素晴らしい。
10:14 11:07 7:18 8:27 計 37:06
演奏 A+ 録音 94点
2022.06.04 (Sat)
ロト/レ・シエクル(2010、Harmonia Mundi)は新鮮な響き。
ピリオドと宇宙的空間が今まで聞いたことのない音響体験をもたらす。
指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロト(françois-xavier roth、1971~)が
父でオルガニストのダニエル・ロト (Daniel Roth、1942~)と組んだライブ。
オケは古楽器オケのレ・シエルク(Les Siècles)。
室内オケ的ハンデはない。
教会の大きな空間に浮遊するノンヴィブラートが特徴。
第1楽章はゆっくりテンポの中、弦がスッーとした清涼感。
刻みが克明に聴こえる。
アダージョに入ってからは空間を荘厳に包むオルガンが加わり
えも言えない雰囲気。
第2楽章後半はオルガンが予想以上のスケール感を出してくる。
空間が一回り大きくなったかのような壮大さ。
前半の静寂に対して終結は堂々。
録音はパリ、サン=シュルピス教会でのライブ。
いかにも大聖堂という空間を感じる。
ある意味風呂場音響なのだがこの曲ではマッチしている。
マイクは距離がありオルガンが遠目。空間全体が鳴る。
うるささは感じない。
10:27 10:06 7:16 7:50 計 35:39
演奏 A 録音 92点
2016.03.10 (Thu)
フロール/ベルリン交響楽団(86、DS)はノーブル。
派手さはないが好感のもてる演奏であり録音である。
このCDの国内発売元の紹介文は
『レコード芸術誌で特選となった、東ドイツ出身の指揮者ペーター・フロールの
国内デビュー盤。とかく外面的音響効果がクローズアップされやすい「オルガン付き」に、
純ドイツ音楽風アプローチ。重厚な構築性とともに、若々しい感性で旋律をたっぷりと歌わせる。
明晰で純粋、流動感の強い解釈は新鮮な感動を与えてくれる。』
というもの。ドイツ的とは思えないが、おおよそ似た感想を持った。
なお、このオケは現在ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団という。
西ドイツにもベルリン交響楽団があるからややこしいが、レコーディングでは
本オケの方が多いのではないか。
クラウス・ペーター・フロール(フロア)はこの録音当時32歳。
若くしてこの楽団の首席指揮者(1984~91)となり東ドイツのホープだった。
近年はマレーシア・フィルの首席だったようだが比較的地味な活動
(BISからこのコンビのドヴォルザークが出ている)。
(←若きころ 最近→)
第1楽章のかっこいい主題提示も力まずとがらない。
第2楽章は極上の美しさで流れる。
第3楽章も流線形で綺麗。
終楽章も慌てず騒がずなのだが終結でのシンバル・ティンパニのパンチは突然凄い。
なお、ダーリッツの弾くオルガンの音は高域が先鋭で
個人的にはもう少し落ち着いた音が好み。
録音はベルリンのシャウシュピールハウスでのセッション。
名物ホールでの優秀録音。このホールの音響の良さを味わうことができる。
ドイツ・シャルプラッテンらしい素直でクールな音。
各楽器の音は埋もれることなく明快。最強音でも余裕があり破綻ない。
10:10 11:16 7:50 7:27 計 36:43
演奏 A 録音 91点
2010.01.24 (Sun)
マルティノン/フランス国立管弦楽団(70、66?ERATO)は全体に品がよくEMI盤と行き方は
同じながら録音による違いはある。演奏のレヴェルからするとこれは十分に高く、
再録はEMIで全集を作るためでこれが失敗だからではないことがわかる。
録音はフランス放送スタジオホールでフォルテにおける伸びやかさにやや欠けるが
明晰さでは再録音に勝る。
第1楽章は録音の違いもありより近接で現実感のある音。テンポは中庸で表現もまっとう。
第2楽章の品のある歌は素晴らしい。オルガンは、マリー・クレール・アラン。
オルガンに並走する弦だけでなく金管の音はフランス流のふくらみを持つ。
第3楽章は軽やかな風のよう。木管の音色が独特でフランスを感じる。
ややラフなアンサンブルは仕方ない(なお、1:54で編集ミスで音が飛んでしまっている。残念)
終楽章はスカッとはいるがオルガンとオケの全奏では飽和し荒れるのが惜しい。
演奏自体も最後はややもてあます部分がある。
20:02 7:25 7:41 計 35:08
演奏 A- 録音 87点