クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Dvorak Sym9 の記事一覧

ドヴォルザーク 交響曲第9番 マーツァル(99)

2016.05.11 (Wed)
マーツァル9nj
マーツァル/ニュージャージー交響楽団(99、DELOS)は余裕の美しさ。
このCDは2枚組でメインはドヴォルザークの「レクイエム」。
余白に「新世界」が収録されている。だからというわけでもないが
格別主張の強い演奏ではない。が、極めて普遍性の高い表現で美しい。
「金持ち慌てず騒がず喧嘩せず」の見本のような音楽。
第3楽章などゆったりしたテンポで少し長閑過ぎる。
とにかく全体として劇性の低い音楽作りなので若者向きではない。

マーツァル(マーカルとも記載されていた)(1936~チェコ・ブルノ生まれ)は
この録音後チェコ・フィルの音楽監督となり2004年「新世界」を再録音するが
タイムだけみると略同じ。多分同じような内容だと考え改めて手を出していない。

なお、このCDの音質の素晴らしさは筆頭格。
また、ニュージャージー交響楽団という馴染みのないオケもレベルが高い。

録音は本拠地ニュージャージー、パフォーミング・アーツセンターでのセッション。
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ヴァーチャル・リアリティレコーディングと謳っており録音を売り物にしている。
高級オーディオのマッキントッシュのデモ音源にも選ばれているもの。
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深々とした音場と量感、マルチマイクを駆使した楽器のピックアップなど
確かに実演ではここまでは聴きとれないだろう「仮想現実」的な要素はある。
かといって昔のDECCA的ド派手音響ではなく巧くまとまっている。
左右の展開は広く、ふかふかのソファに座って羽毛に撫でられるような
ゴージャス&バブリーを味わえる。

11:52  11:19  8:11  11:11   計 42:33
演奏   A   録音  94点

ドヴォルザーク 交響曲第9番 ターリッヒ(49)

2016.05.10 (Tue)
ターリッヒ1949
ターリッヒ/チェコフィル(49、SUPRAPHON)は歴史的名盤。
音は古いがなんだか聴き入ってしまう。

ドヴォルザーク(1841~1904)と20年ほど生きた時代が重なった
ヴァーツラフ・ターリッヒ(1883~1961)は言うまでもなくチェコフィル中興の祖。
首席指揮者の間(1919~41)にこのオケを欧州の名門に育てた。
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このコンビには54年の再録音もあるが49年盤の方が有名。
こちらの方がメリハリが効いているからだろう。

演奏は普遍的と片付けられない特色を持つ。
テンポは淀みなく突き進みむのだが、随所で見られる自然な訛りはまねできない。
チェコフィルの音色も古式懐しい音。金管は独特。
そしてなんといっても第2楽章「家路」のイングリッシュホルン、木管群は
切なくて泣かせる。いまどきこれほどヴィヴラートはかけないのだろうが
心の震えのようだ。

第3楽章は一転雄渾。ティンパニの激しい打ち込みなど活気とトリオの民族的
アクセントの対照が面白い。

全編メロディーが歌われる場面はノスタルジックな空気が部屋を埋めるが
全奏で隆起する場面は雄渾であり、最近見られることなかれ演奏とは違う。

録音はdomovina studio 、pragueでのセッション。
CDリマスターに当たり響きを付加させているのか滑らかで聴きやすい音。
当方保有チェコ盤には「STEREO」表記があるがこれはミスでモノラル。

9:12  12:42  8:06  11:17   計 41:17
演奏   懐   録音 75点

ドヴォルザーク 交響曲第9番 ノヴァーク(2009)

2016.04.30 (Sat)
ノヴァーク6789
ノヴァーク/ロイヤルフィル(2009、RPO)は荒さと金管が印象的。
全体としては録音のせいもあろうが粗さが目立つが基本的にはまっとう。
ただし、同じRPOならば演奏・録音ともに93年のP・ヤルヴィ盤が圧倒的に優れている。

指揮者の指示なのかどうかはわからないがロイヤルフィルの元気な金管は健在。
弦のアインザッツなど不揃いが散見され、
フレーズの歌い回しも何か素人っぽいのが不思議。
第3楽章は音がちゃち。その分、普段聴こえない音も飛びでる。
終楽章は特に金管が突出する場面が続出。副次的なパーツが浮かび上がる。
これは新鮮でもあるがそこまで。
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録音は本拠地カドガンホールでのものだが第6番と違い
こちらのエンジニアはネイル・ハッチンソンとジャナサン・ストークスでまともな音。
同じホールで同年代録音でこうも違うと評価が難しい。
ただし、会場はデッドでロイヤルフィルの荒削りの音はそのままのため、
90年代のシリーズ録音に比べるとまだ格段の差がある。
ハイ上がりで低域は薄く平板な音のため下手なオケのように聴こえる。

11:43  12:47  7:27  11:00  計 42:57
演奏   B+   録音  90点

ドヴォルザーク 交響曲第9番 ジル=オルドニェス(2013)

2016.04.28 (Thu)
ドヴォルザークハイアワサ
ジル=オルドニェス/ポスト・クラシカル・アンサンブル(2013、NAXOS)は変化球。
この盤はダイレクトに「新世界」を演奏しているのではない。
ドヴォルザークが構想していた未完の歌劇「ハイアワサ」に「新世界」の音楽をつけて
オルドニェスがナレーション付きメロドラマとしたもの。
CDの原題は「ドヴォルザークとアメリカ」(DVOŘÁK AND AMERICA )。

NAXOSの帯の説明文をそのまま転載すると
『1891年の春、ニューヨーク・ナショナル音楽院の創立者・理事長ジャネット・サーバーから
音楽院院長職への就任依頼が届き、逡巡しながらもアメリカに旅立ったドヴォルザーク(1841-1904)。
しかしアメリカの人々は彼の渡米を心から喜び、すぐさま彼自身もこの土地に馴染んだのでした。
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(↑アメリカの地を踏んだドヴォルザーク一家)
1893年には交響曲第9番「新世界から」を完成させていて、この曲には黒人霊歌の旋律などが
使われていることは良く知られていますが、実はそれよりも、彼自身が長年構想を温めていた
という歌劇「ハイアワサ」に使うための素材が数多く用いられていたのです。

「ハイアワサ」というのはネイティヴ・アメリカ(昔でいえばインディアン)の英雄の名前であり、
彼を主人公にした「ハイアワサの歌」という長編の詩をH.W.ロングフェローが書き、
それに目をつけたドヴォルザークが歌劇の題材にしようと目論んだのでした。
結局、音楽院の委員会の反対によって、歌劇「ハイアワサ」の構想は実現することなく、
ドヴォルザークはいくつかの曲をそのまま「新世界より」に流用。
有名な第2楽章が哀しさを帯びているのは、実はハイアワサの花嫁ミンネハハの死を
描写した音楽だったのです。
この史実を考えると、これまで言われていたような"「新世界より」はドヴォルザークが
故郷を思って書いた作品である"と簡単に言ってしまうのは早計であるのかもしれません。
このアルバムは、そんなドヴォルザークの構想を「メロドラマ(音楽と朗読の融合)」として
再現したもの。良く知っているメロディが次から次へと現れる興味深い物語となっています。』
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このメロドラマは全体が33分ほどのもので以下の構成
①プロローグ (1:16)
② ハイアワサの求愛 (9:55)
③ハイアワサの結婚式の饗宴 (5:30)
④ミンネハハの死 (5:38)
⑤パウ=プク=キーウィスの狩り(8:02)
⑥ エピローグ:ハイアワサの出発 (2:29)
それぞれの場面につきナレーションと音楽が流れる。

音楽は「新世界」他から引用されたものだが、
そもそも「新世界」のメロディが「ハイアワサ」から転用されているというから
どちらが先なのかよくわからない。
⑤の狩りの場面は「新世界」の第4楽章が用いられるが
多分全く当てつけなのだろうが、迫真のナレーションとともに聴くと
実にフィットしてしまって、劇音楽に聞こえてくるから不思議なものだ。

勿論この創作を認めないことも可能なのだが、この有名な交響曲第9番「新世界」が持つ
パッチワーク的な唐突な楽曲の変転や哀しさの感情の昂ぶりの不思議さの由来について
このメロドラマを聴いていると、なるほど・・・と思えてしまう。
「新世界」に興味があったら一聴に値するCDだと思う。

録音はメリーランド州クラリス・スミス・パフォーミング・アーツ・センターでのセッション。
編成の少ないオケが伸びの良い空間で力まず鳴っており快適。
また、ナレーターのケヴィン・デアスの声も落ち着いた感じで好感が持てる。
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CD全体  76:41     録音 94 点

ドヴォルザーク 交響曲第9番 ホーレンシュタイン(52)

2016.04.27 (Wed)
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ホーレンシュタイン/ウィーン交響楽団(52、VOX)は粗野な生命力。
1945年オーストリアはナチス・ドイツから独立を宣言したが
終戦後オーストリアは連合国4国に分割統治された。
それは1955年の主権回復まで続いた。
この録音はまさにその第二共和国時代(米英仏ソ統治下)のもの。

VOXレーベルもまた第二共和国と同じ1945年米国創立で、
もっぱらバジェット・プライスのクラッシック音源を世に出した。
ステレオ期に入ってからはユタ響などアメリカで多数の録音をしたが、
創立期は占領下のウィーンの音楽家を起用してガンガン入れた。
占領下で米国のパワーを見せつけるが、
アメリカンなラフな録音とジャケット含めたチープ感が個性的だった。

一方、ヤッシャ・ホーレンシュタイン(1898~1973)はウクライナ生まれの
米国籍のユダヤ人指揮者で1920年代からVSOを振っていたが、
ナチス台頭により米国亡命を余儀なくされていた。
終戦後懐かしいウィーン響を振った喜びはいかばかりだろうか。

この演奏にはその彼の嬉々とした指揮ぶりが垣間見える。
今の水準からすれば、録音はもとよりオケのアンサンブルも実に粗雑。
しかしホーレンシュタインはそんなことに拘泥することなく好きにやっている。
時折のぞかせる独自のタメやバランス。面白い。
また、基本的にメリハリある作りなので音楽が立派。
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録音は場所不明のモノラルセッション。
デット気味だが、リマスターで少し聴きやすくしている気がする。
モノラルながら輪郭がくっきりで音が良く聴こえる。

9:47  14:15  8:33  11:29   計 44:04
演奏   A   録音  78点
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