クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ストラヴィンスキー春の祭典 の記事一覧

ストラヴィンスキー 春の祭典 小澤征爾(68)

2016.08.30 (Tue)
小澤CSO春の祭典
小澤/シカゴ交響楽団(68、RCA)は予期せぬ野生。
30代前半の小澤がただがむしゃらに、夢中に一生懸命、
名門シカゴ響を振ったらこうなってしまいましたという感じ。
尻上がりに予定不調和。
アンサンブルの精緻さを求める向きにはお薦めできない。
コンプライアンス部門に関与される方には発散材料。

ささくれ立った音はコントロール不足なのか妙に飛び出す。
金管の咆哮はライナーのもとでは絶対許されない自由さ。
弛緩はなく断崖絶壁に立たされる。こんな演奏だったのか。

後半に行けばいくほど異様さが増す。
終曲の「いけにえの踊り」はテンポが微妙に揺れ
危なっかしいことこの上ない。
硬いティンパニがほかの音をかき消すような乱打。

「春に祭典」を振って熱くなれた時代の記録。
この無茶苦茶はすでに失ってしまった何かを呼び覚ます。
そして余白に「花火」を持ってきた小澤の意欲もNice!
ozawa.jpg

録音はシカゴ、オーケストラル・ホールでのセッション。
比較的細見の音で低域ボリュームは足りない。
ただしそれゆえ肥大化しないギラついた印象。音は近接で鮮明。
リマスタリングでヒス除去よりも生々しさを優先。

15:06  17:31   計 32:37
演奏   野A+   録音  89点

ストラヴィンスキー 春の祭典 ラトル(87)

2016.08.29 (Mon)
ラトルバーミンガム
ラトル/バーミンガム市交響楽団(87、EMI)は不調?
打楽器奏者だったラトル(1955~)ならもっとできる。

バーミンガム時代のラトルは良かったという話は聴くが正直録音にも
恵まれていないこともあり突出した演奏に巡り合っていない気がする。
30代の比較でいえば小澤の方がずっと面白かった。
simonrattle.jpg

第1部は丁寧に始まり「春の兆し」もまろやかなアクセントで拍子抜け。
ベルリンフィルとの再録音盤がやはり威力がある。
その後の運びも緊張感に欠け、コンサートピースというよりバレエ音楽的。

第2部の序奏部分をよく聴くと楽器のバランスに注意を払い密やかな
歌を奏でてるのは分かるが録音が拾いきれていない。
11連打は活気がなくリズムが冴えない。
終盤に向けてもエンジンはかからず遅いテンポで安定的。
際立つ特色がないのでこの盤が話題にならないのはやむなし。

若いと思っていたラトルもう還暦過ぎ。
老いずに、2017年からロンドン交響楽団とやりたい放題やってほしい。
ラトル

録音はウォーウィック大学アーツセンターでのセッション。
アビーロードのような窮屈感のない自然なホール感。
ただ細部の鮮明さなどはEMI的なので残念ながら
録音のアドヴァンテージはない。
やや距離のあるマイクで放送用録音的に響きも
程よくブレンドされた上品といえば上品な仕上がり。
楽器数が多くなればなるほど平板な音作りに聞こえる。
Dレンジは狭く感じる。

15:50  18:57   計 34:47
演奏   B+    録音  89点

ストラヴィンスキー 春の祭典 クルレンツィス(2013)

2016.08.28 (Sun)
クルレンツィス
クルレンツィス/ムジカ・エテルナ(2013、SONY)は剛質。

テオドール・クルレンツィス(1972~)はギリシャ出身の指揮者で
旧ソ連圏で活躍中。鬼才と呼ばれるがこの演奏は正統的。
teodor-currentzis-original.jpg
表現に小細工はなく筋肉質の音響で突き進むが、弦の充実が非英米的。

ムジカ・エテルナという団体は古楽器専門の小編成かと思いきや
ここでは100名をゆうに超す大規模化。独の援軍も使用?
(↓曲によっては立って演奏。女性比率高い)
ムジカエテルナ

また、バロック的古楽の音はせず、普通のオケと同様。ヴィブラートもあり。
もっと変わった音や奇抜な解釈があるのかと思ったがそれは肩透かし。
ただ、そうしたことを期待しなければ極めて高度な演奏。

第1部は弦楽の引き締まった低域が効果的で音楽にドスが効いている。
上っ面が派手な音響でなくいぶし銀的。後半に向けて迫力を増す。

第2部もしっかり考えられている。終結も凝縮された響きがいい。
ただ、土着性や熱狂とは違う理性が常に支配している感じで、
それが聴く者に案外刺激を与えない。

過去さまざまな演奏が出てしまっている「春の祭典」のバーは
上がってしまったのだ。

録音はケルン、シュトルベルガー・シュトラーセ 7でのセッション。
ギラギラ感少なく少し距離を保ちながらも鮮明。
大太鼓の音などぼやけそうな音も明確にエッジが立つ。
派手さや突き抜け感はないギュッとした音。

なお、このオケの本拠地は現在ロシアのペルミという街にあるので
ツアー中の録音か。
(↓赤〇の場所がペルミ)
ペルミ

15:40  19:05   計 34:45
演奏   A    録音  94点

ストラヴィンスキー 春の祭典 ドゥダメル(2010)

2016.08.27 (Sat)
dudamel.jpg
ドゥダメル/シモン・ボリヴァル・ユース管弦楽団(2010、DG)は
アマゾン系音響伽藍。超個性派。

180名超の大人数オケの大味な演奏を想像していたが、それを超えた。
マッシブな音自体独特だし巨大な音響に驚きの連続だが、
ドゥダメルが上手く持ち味を最大限に発揮させたことが大きい。
最近のありがちな整然スマートな演奏とは対極。
低域が拡充された音は威力満点でこれほどでかい音塊は初めてだ。
しかも巨物なのに、いざとなればリスクテイクして
アッチェレランドを豪快にかけていく姿は彼らの挑戦魂を感じる。

この1999年設立のユース・オケは「エル・システマ」活動から生まれた。
この活動は、音楽による青少年育成を目的として、
1975年南米ベネズエラで始まった音楽教育システム。
現在、同国の約40万人の子どもたちが参加しているという。

子どもたちは無償で楽器と音楽指導が提供され、高い演奏技術だけではなく、
集団での音楽体験を通じて優れた社会性(忍耐力・協調性・自己表現力)を
身につけられるとして、その効果は世界中で注目されている、とのこと。
貧困と青少年の犯罪が深刻な問題であるベネズエラで
犯罪や非行への抑止力としても役割を果たしているようだ。
elsistema.jpg

エル・システマの理念は素晴らしい(下記)。

1. すべての人が経済的事情を懸念することなく、音楽にアクセスできることを保障
2. 集団(オーケストラ)での音楽活動を通じ、コミュニケーション能力を高める
3. 社会規範と自己の個性の表現を両立することを、音楽体験を通じて学ぶ。

難しいことはともかく映像に見る
彼らの溌剌とした喜びに充ち溢れる演奏に接すると胸が熱くなる。
(彼らの十八番、バーンスタインのこの「マンボ」を見て感激した)

また、単なるノリだけでなく超絶的な技術も合わせ持っていることに驚く。
それはこの「春の祭典」でも分かる。

第1部
⑤「対立する部族」の低弦のごッツさは聴いたことがない。
⑧「大地の踊り」の壮絶なスピードは結束と信頼の証。

第2部
⑨序奏のもわっとした空気感の中でもポルタメントに表現意欲がのぞく。
⑪「選ばれし乙女への賛美」直前の11連打からは
増幅されたパーカッション群が風圧を感じさせる。
⑭「生贄の踊り」の前にのめった驀進力には感嘆する。

録音はカラカスのCentro de Acción Social por la Música Simón Bolívar
でのライブ。(↓盆地のカラカスは大都市だ)
700px-CaracasAvila.jpg
(↓このオケの本拠地ホールはでかい)
シモンボリヴァル
巨大オケ巨大会場のため肥大化しているのは確かだが
頑張っている。放送用マイクを数本置いただけではぼやけてしまう
奥の楽器なども巧く入っている。
量感たっぷりの分厚い響きでとげとげしさはなく、
低域のボリュームは極めて多く、大太鼓の風圧は凄い。
ティンパニも輪郭を維持して強打される。

併録のレブエルタス「マヤ族の夜」(凄い演奏!)には拍手が収録されて
いるが「春の祭典」ではない。

16:12  17:48   計 34:00
演奏    巨S    録音  93点

ストラヴィンスキー 春の祭典 ガッティ(2011)

2016.08.23 (Tue)
ガッティ春の祭典
ガッティ/フランス国立管弦楽団(2011、SONY)は乾いた野卑。
湿度は少なくやや熱い。

第一部は内側から燃えている感じではない。
しかし、第二部の11連打から目が覚める。音が洗練されていない。
埃っぽさも含めある意味フランスオケっぽい。
このぱさっとした音で力任せで叩くとき土着的迫力が生じている。
全体的解釈は極めて普通で数々の名盤のある中今出てくる特色に薄い。
ただ、トゥッティでの野蛮なパンチ音はなかなかだ。
テンポを動かし高揚させたりはなく無頼派型。

ガッティ(1961~)はイタリア新世代系としてRPOの首席指揮者の時に目の前に
現れた。なかなかキレのある演奏をすると思っていたがその後劇場での経験を
重ねているうちに、やや実務型になっていったような気がする。
フランス国立管(2008~16)の音楽監督を終えてロイヤル・コンセルトヘボウ管で
一皮むけてほしいと思う。
danielegatti.jpg

録音はパリ・ラジオ・フランスでのセッション。
響きは多くなく乾燥系。しかし、つまり感はそれほどない。
低域は平板なのは惜しいが、品がなくたたきつける野蛮な音は迫力がある。

15:39  18:18   計 33:57
演奏  A    録音 91点
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