クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Bernstein の記事一覧

バーンスタイン 交響曲第2番「不安の時代」 カーン(p)(90)

2018.06.24 (Sun)
バーンスタインカーン不安の時代
カーン(p)/リットン/ボーンマス交響楽団(90、Virgin)は真剣深刻な壮大さ。
ピアノの表情が素晴らしい。

カーン(カハネ?Jeffrey Kahane、1956~)は米国のピアニスト、指揮者で
ロアンジェルス室内管の音楽監督。味のあるピアノを展開。
jeffrey_kahane_britt_pianist.jpg
この曲はピアノが自身の心情を吐露していく趣があるが、
このピアノは各場面の内面に迫る弾き分けをしている。

リットン(Andrew Litton、1959~)は好青年指揮者のイメージだったが
彫の深い明快な指揮を展開。激しい打ち込みもしている。
AndrewLitton640.jpg
「仮面劇」は猛烈な勢いで突っ込んでいく。
ピアノの果敢な攻めにオケもくらいつく。パーカッションも巧い。
終曲のエピローグは誠に壮大な肯定的なエンディングだ。

この盤を聴きながら改めてオーデンによる筋をたどると非常に納得感がある。
(N響解説引用)
『「不安の時代」は第二次世界大戦中のニューヨークを舞台としている。
マリン、クウァント、アンブル、ロゼッタという男3人と少女がバーで酒を飲みながら、
自分たちの生き様や人類の境遇について考え、それぞれが語っていく。
詩の全体は6つのセクションに分かれており、
「プロローグ」に引き続き
「七つの時代」ではボックス席に座った4人が人の生涯を
幼年から死にいたるまでの7つの時代に分けて語っていく。
「七つの段階」では、「先史時代の幸福」といった、より抽象的な話題も登場する。
「追悼の歌」では、「近年父親的なリーダーがいなくなった」ことを嘆き、
「仮面劇」では、出会った若者たちがロゼッタのアパートに集い、
深夜のパーティーになる。
ロゼッタとアンブルは互いに心を寄り添わせようとするがうまくいかない。
そして最後の「エピローグ」では、一夜の出来事がすべて逃避行動であったか
のように、各自がそれぞれ、孤独の中に現実生活に帰っていくのである。』

なお、この盤の併録「ファンシー・フリー」もノリノリの名演。
リットンやるじゃん!

録音はドーセットのプールアーツセンター(現 Lighthouse)でのセッション。
The Wessex Hall, Poole Arts Centre (now The Lighthouse), Poole, Dorset
ここは響きが豊か。伸びやかでスケール感ある音響。
ジャズクラブではなくシンフォニックな曲として聴こえる。

16:19  18:23   計 34:42
演奏   A+   録音  92点

バーンスタイン 交響曲第2番「不安の時代」 アムラン(p)(2001)

2018.06.22 (Fri)
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アムラン(p)/シトコヴェッキー/アルスター管弦楽団(2000、Hyperion)は
最高の演奏ではないか。作曲者の自演盤を上回る感動作。

バーンスタインの自演盤はもちろん素晴らしいのだが
録音やピアノや場合によってはオケに不満が残った。
ところがこの盤はよもやと思って聴きなおしたが「みんな」凄い。
バーンスタインの曲でバーンスタイン盤を上回るなんてことがあるのだ。

指揮者のドミトリー・シトコヴェッキー(1954~)はアゼルヴァイジャンのバクー生まれ。
Dmitry Sitkovetsky
父はヴァイオリニストのユリアン・シトコヴェッキー、
母はピアニストのベラ・ダヴィドヴィッチという羨ましいDNA。
当初はヴァイオリニストとして名を馳せたが昨今は指揮者として評価が高い。

本盤は彼がアルスター管の首席指揮者(1996~2001年)だった時に録音された。
単にソツなくバックを務めるというのでなくバーンスタイン以上の表現巧者
という印象を受ける。弦のふとしたところに引き付けをを起こさせたり、
フィナーレではトロンボーンのバリバリ音で逞しく神々しい効果を出したり。
引き締まった音楽なのだが実に入念で多彩。

一方マルカンドレ・アムラン(1961~)はフランス系カナダ人ピアニスト。
MARC-ANDRE HAMELIN
超絶技巧と称されることがあるが本人はそれを由としないとのこと。
確かにこの曲でも軽々弾きこなし確かなテクニックは感じるが、
それよりも曲の内面に達しようとする姿勢を強く感じる。
例えばジャズ・イディオム満載の「仮面劇」などリズム感抜群で突っ込んでいくが、
沈思的場面になると実に繊細な表現力を発揮する。

オケも厚みのある音を出して迫力がある。

なお、ジャケットにはシカゴ美術館ン所蔵のEdward Hopper (1882-1967) の
「Nighthawks」が使われているが、まさにこの曲の雰囲気を表した絵だ。
Nighthawks cicago

録音はベルファストのアルスターホールでのセッション。
Grand_Hall__ Ulster Hall, Belfastssed
ホールトーンと楽器のピックアップのバランスが良い。
ハイペリオンは平板な録音もあったと思うがこれは素晴らしい。

16:31  19:13   計 35:44
演奏   S     録音   94点

バーンスタイン 交響曲第2番「不安の時代」 ヤコビ(p)(2009)

2018.06.21 (Thu)
bernstein ヤコビ不安の時代
ヤコビ(p)/リス/ロシア・ナショナル管弦楽団(2009、ONDINE)は
不思議な感触。どの演奏とも違う。
この曲のジャズ的な側面を打ち消し静的な再現を行った。

そもそもフィンランドのレーベルがロシアの指揮者とオケを使って
この曲を録音しようとした段階でアメリカ的なものを狙っていないのは確かだ。
併録のガーシュゥインのピアノ協奏曲も然り。

この方針は米国の女流ピアニスト、イングリッド・ヤコビの仕業なのか、
INGRID13.jpg
はたまたロシアの指揮者ドミトリー・リス(1960~)の方針なのかは分からない。
liss.jpg

とにかく全体に端正端的で落ち着いている。悪く言えば活気がない。
しかしそれは敢えてそうしているのだ。
如何にもアメリカらしい作品のお国物感を洗い流し
スコアを中立に詩的に演奏しようとしたものだ。

ピアノは終始ポツリポツリとした弾き方。オケは弾まず淡々としている。
そうした意味でジャズの「仮面劇」は異様ですらある。
全くノリも勢いもない。テンポは遅く整然としている。
最初はロシアのオケだから巧くできないのかとも思ったが、首尾一貫。
エピローグなど非常に寂しげだ。
で、最後の最後は銅鑼がガンガン鳴る壮大な音響はご愛嬌。

とにもかくにも『不安の時代』にも多様な試み、多彩な演奏が
出現し始めたのは名曲の仲間入りしたということかもしれない。

録音はモスクワ音楽院の大ホールでのセッション。
広さは十分で伸びもいい。
各楽器の明快な把握、奥行き、全体の空気感も良好。

16:58  19:44   計 36:42
演奏   静    録音  93点

バーンスタイン 交響曲第2番「不安の時代」 フォス(p)(50)

2018.06.20 (Wed)
フォス(p)/バーンスタイン/ニューヨークフィル(50、SONY)はドラマティック・ジャズ。
49年の初演後すぐピアニストをバーンスタイン(1918~90)から
盟友ルーカス・フォス(1922~2009)に変えて作曲者自身の指揮で初録音した。
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fossl young
モノラル録音でほの暗く間接音が少ないため、
ブルーノートでコンボを聴いているようなジャジーな雰囲気満載。
ピアノもオケも積極果敢でリスクテイクしている。
セッションなのにライブ的な熱気が感じられる。
このコンビの再録音(77年)ではこの若気の至り感はなくなる。

ピアノのタッチは繊細というより明確で時に強烈。
オケはほの暗い情念を表出する。昂ぶると両者はそろって攻撃的にすらなる。
特に「仮面劇」は圧巻だ。
なお、この盤は当然のことながら65年の改定前なので
エピローグのピアノソロはなく短い。
これを聴くとやはり改訂版のしんみりしたピアノソロがあった方がよいと感じる。
ただ、できたてほやほやのこの曲の初々しい演奏の価値は今でもある。

録音はコロンビア30番街スタジオでのモノラルセッション。
columbia 30th street studio
響きは少ないが聴きやすい。ピアノも明確だ。雰囲気は出ている。

16:33  15:31   計 32:04
演奏   (A+)      録音  78点

バーンスタイン 交響曲第2番「不安の時代」 ツィメルマン(86) 

2018.06.19 (Tue)
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ツィメルマン(p)/バーンスタイン/ロンドン交響楽団(86、DG)はピアノが深い。
若きピアニストはバーンスタインから薫陶受けたうえで彼なりの思いをぶつけた。
バーンスタインとツィメルマン
バーンスタインの指揮は後期様式に踏み入れ微細を穿つが、
残念ながらロンドン響がいまいちついていけてない。
結構ハラハラする場面もあるし肝心な『仮面劇』のノリはNYPの旧盤に劣る。
しかし、エピローグはピアノともども情感が押し寄せ圧巻。
感動的な終結で聴衆も大きな拍手を送る。
ツィメルマンもこの後この作品をしっかりとレパートリーに組み入れている。
ラトル/LSOとの協演盤も出ることだろう。
Rattle Zimerman LSO by Amy T Zielinski (2)

さてこの盤(DVD)では演奏前にバーンスタインが曲の紹介をしている。
インタビュアーが
『不安の時代の冒頭の雰囲気はエドワード・ホッパー(1882–1967)の
ナイトホークス(Nighthawks)を連想させるといわれますが、
それは作品と近いといえるでしょうか?』
と聞いている。
この絵は1942年に描かれ非常に話題になり各方面に影響を与えた。
nighthawks.jpg
オーデンの『不安の時代』よりも先に発表されているが確かに設定が似ている。
これに対してバーンスタインは

『そうだ。バーで座っている若者たち。オープニングにそういう雰囲気があるね。
バーで知り合った4人の若者はラジオから戦争のニュースが聞こえるなか語り合う。
皆ワインや酒で酔っている。飲み続けて酔っぱらった状態と言えるかもしれない。
4人は親交を深めるがバーが閉店になったので、そのうちの一人の女性の
アパートでナイトキャップ代わりに飲みなおす。ジャズがかかりパーティーになる。
もちろんそれはフェイクだ。うわっつらのばか騒ぎだ。
そこには悲しみがある。高貴さと言ってもいいかな。
どんちゃん騒ぎのあとにある虚しい段階に進む。
悲惨な戦争を忘れるためのばか騒ぎ、ハッピーになりたい気持ちのなかに、
一人が「真実」とでも呼ぶものに目覚めるんだ。
ぼくも毎夜同じような体験をしているけどね。』


若いころからヘビースモーカー&ヘビードランカーで陽気な上辺の中に
自己矛盾を抱え込んでいたバーンスタイン。
バーンスタインの作品は往々にして自分の内面や信仰告白なのだが、
この作品もまさに彼の心情が吐露された作品だということがよくわかる。

録音はロンドンのバービカンセンターでのライブ。
ユニテルの映像作品(DVD)でCD化はされていないかもしれない。
一発撮りなのでミスも修正されていないし客席ノイズもある。
音質は映像作品として満足できるもの。

20:46  20:38   計 41:24
演奏   A+    録音  88点

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