クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Pcon1 の記事一覧

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ラン・ラン(2007)

2017.12.21 (Thu)
ランランベト14
ラン・ラン(p)/エッシェンバッハ/パリ管弦楽団(2007、DG)は繊細華麗。

このCDの商品説明を引用すると
『ラン・ランとエッシェンバッハの出会いは1999年のラヴィニア音楽祭での
オーディション。当時ラン・ランはカーティス音楽院の学生で、まだ無名の
17歳の中国人ピアニストでした。エッシェンバッハは彼の才能に魅了され、
次々に演奏をリクエストし、20分の予定のオーディションは2時間のリサイタルの
ようになったそうです。
そのオーディションの2日後、急病のアンドレ・ワッツの代役としてエッシェンバッハ指揮
シカゴ交響楽団との共演を打診され、さらにその2日後の演奏により彼のキャリアは
大きな飛躍を見せました。それ以来、エッシェンバッハは最も熱心なラン・ランの支持者、
良き師であり親友でもあります。』
とある。
Lang Lang, Eschenbach
この演奏を聴いてこの解説を読んだ。うーんなるほど!
確かに二人の音楽性には交錯がある。
端的に言えば積極的な表現意欲、特に弱音部での表情の拘りだ。
録音時指揮者67歳、ピアニスト25歳の協演。ラン・ランは全く臆するところがない。

第1楽章序奏のオケが実にチャーミング。軽くスキップ。そしてピアノもやはり軽い。
デリケートでピアニッシモに表情がある。
第2楽章はより二人の個性が出る。オケは少しなよっとしてエッシェンバッハらしい。
そこに加わるピアノもしっかり溜めを作り応える。ショパンのような甘さが加わる。
終楽章は落ち着いたテンポでワンフレーズごとに多彩な表情を見せる。
どこまでもピアノのタッチは軽く華がある。
そんなところが彼がスターになった所以かもしれない。
勢いに任せない丁寧な音楽で結ぶ。

録音はパリのザル・プレイエルでのセッション。
Public_salle_pleyel.jpg
オケ自身の音なのか、編成なのか全体にすっと軽い音。
低域は強調されない。弦の伸びはよく美しい。
ピアノも適度なバランスでよく溶け合う。

18:18  11:26  9:14   計 38:58
演奏   華A    録音  94点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ツァハリアス(89)

2017.07.09 (Sun)
ツァハリアス全集
ツァハリアス(p)/フォンク/ドレスデン・シュターツカペレ(89、EMI)は
明快な活力。直球でずばずば投げ込んでくる気持ちの良さ。

ツァハリアス(1950~)はインド生まれのドイツのピアニスト。
日本では話題にならないが彼のスカルラッティやモーツァルトや
シューベルトは好み。
ここでは彼の知的でスッと切れ味のある音楽が気持ちよい。
そしてこの盤を高めているのがルカ教会でのドレスデン。
なんといい響き。

第1楽章のオケは勢いと自信が漲る。ピアノも端正ながら活力がある。
全体として音楽が生きている。テンポはグールドほどではないが速め。
正攻法で曖昧さが無い。
カデンツァはベートーヴェン作曲のものをツァハリアスが編集。
ダラダラで見世物的に長くない。

第2楽章も音が立っている。タッチは明快でムード音楽化していない。

終楽章もカチッとは走る。アクセントはしっかり。
ピアノのタッチは強いが濁らないのがよい。

なお、最近は弾き振りでベートーヴェン全曲を再録音しているが未聴。
christian-zacharias.jpg

録音はドレスデン・ルカ教会でのセッション。透明な空気感が良い。
ピアノは比較的近い。オケは前面のピアノを包むように
木質シルキートーン。同じEMIでもロンドンではなくてよかった!

13:19  10:39  8:40   計 32:38
演奏   A 録音  94点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ブレンデル(83)

2017.07.06 (Thu)
ブレンデルレヴァイン12
ブレンデル(p)/レヴァイン/シカゴ交響楽団(83、PHILIPS)は
スキップするよう。
若書きのこの曲をその通りに軽やかに聴かせる。
深みがないと言われればそれまでだが、この曲ではOK。

ブレンデルは単調ではなく変化を織り込む。
タッチは綺麗で叩きつけることはない。
ブレンデル(1931~)は70年代にハイティンク/LPO、
90年代後半にはラトル/VPOと全集を録音しているが、
こちらの全集はシカゴでの全曲演奏した時のライブ録音。
84年のレコードアカデミー大賞を受賞したというキャッチコピー。
James-Levine--Alfred-Brendel.jpg

第1楽章序奏のオケは屈託なく明るく弾む。
そこに入るピアノも明快な粒立ち。
一方、中間部の遅い場面になるとぐっとテンポを落とし
ペダルを駆使しテヌート。表現の変化が大胆。
12:14から16:54はベートーヴェン作曲の長大なカデンツァ。
これ見よがしではなく軽々と弾きこなす。

第2楽章も明快で明るい。秋の風情ではない。

第3楽章は白眉。ブレンデルもオケものっている。
ブレンデルは見た目教授風だがここでは、
ライブということもあって活き活きノリノリ。オケも迫力がある。
演奏終了後盛大な拍手があるがそれもうなずける。

録音はシカゴ、オーケストラ・ホールでのライブ。
客席ノイズはほとんど気にならない。
ホール感はあるが各楽器もしっかり拾われている。
ピアノも遠くなく適切な距離感。ブレンデルの息遣いが聞こえる。
珍しいシカゴでのフィリップス録音だが
柔らかさと明快さが両立している。

17:13  11:42  8:39   計 37:34
演奏   A+   録音  93点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 レーゼル(91)

2017.07.01 (Sat)
レーゼルpcon1234
レーゼル(p)/フロール/ベルリン交響楽団(91、DS)は美しい。
単なる表面的な音の美しさだけではない秘めた憂いをも纏う。
自己顕示は無く健全な誠実さがある。
若い頃ならばこの演奏がこれほど佳いなんて思わなかっただろう。

サントリー山崎
『歳月には力がある。歳月を養分にして、この琥珀色は滴った。
だからピュアモルトの香りは、言葉に溶けてしまわない。
はっきりと呟きが聞こえる。凛としたモノローグである。
朴訥だが明晰。シンプルだが、奥が深い。
なんという矛盾だろう。
静謐があって、覇気がある。
ゆったりと、鷹揚で、大きな流れと、
縦横無尽に闊歩するものとが、同居している。
なにも足さない、なにも引かない。
ありのまま、そのまま。この単純の複雑なこと。』
サントリーピュアモルトウイスキー山崎の名コピーが
レーゼルのベートーヴェンのピアノ協奏曲全集にそのまま当てはまる。
Rosel-Peter_20170701224127b9a.jpg
繊細で均整のとれたピアノ、柔らかさと強さのオケ、清らかな響きの会場。
これらが若書きのこの第1番をここまで心に沁みいる音楽にした。
全てが自然の中で流れる。

なお、この演奏の更なる注目点は第1楽章のカデンツァ(12:50~15:12)。
ベートーヴェンの自作は3種。
①経過句のような短い版
③ピアニストの技巧を誇示するかのような5分に及ばんとする長大な版
③未完成版。
多くは②か①だと思うがここでは③をベースにしたもの。
この版を使用したピアニストは他に思い浮かばないが(リヒテル?)
程よいバランス感でいいのではないか。抒情的でくどくない。
レーゼルのセンスだろう。

録音は旧東ドイツのベルリン・キリスト教会でのデジタル・セッション。
Evangelische_Christuskirche_Berlin_Oberschöneweide
ドイツ・シャルプラッテン録音陣の最後の仕事期でこのあとエーデルに移行。
このレーベルのこの教会とドレスデンのルカ教会の音は好きなので
それだけで手が出る。清らかで伸びのよい音が気持ちよい。  

15:36  11:25  8:44   計 35:45
演奏   S   録音  94点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 杉谷昭子(93)

2017.06.30 (Fri)
杉谷
杉谷昭子(p)/オスカンプ/ベルリン交響楽団(93、Verdi Records)は
ポツリ系訥々。ハイドン的でもありいい感じ。
現在はブリリアントの廉価になっているが、
杉谷全集
先入観なし聴けば録音もよく、得した気分になるはず
(この全集にはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を作曲者自身が
編曲したによる「ピアノ協奏曲第6番」が併録されている!!
これはレアで第1楽章はティンパニ協奏曲ともいえるびっくりもの)。

演奏はバリバリの自己主張はない。
若さも老成も売りにしない。全体は40分かけおっとり感。
ゆったりしたテンポでぽつぽつと弾くものだから一聴するとアレレ?
と思うがもちろん表現であり技巧の問題ではない。

杉谷昭子(1943~)は、芸大を卒業後ケルン音大を出て専ら西独・日本を
中心に活躍しているスタインウェイ弾き。
独墺ものを得意として多くのディスクがある。
Shoko Sugitani

オスカンプ(1950~)はドイツ出身の指揮者だが当方はアッテルベリの
ホルン協奏曲の伴奏くらいしか聴いたことがなかった。印象薄い。
Gerard Oskamp

ベルリン交響楽団は1966年創設の「西独」のオケ。
同名で有名なのは「東独」のほう。

と全員割と地味なメンバーだが悪くない。
ということでアンチ「俺が俺が」派向きの演奏。

第1楽章のカデンツァは作曲者自作の長い方。
ここでもあくが強くないので助かる。
第2楽章はバレンボイム/クレンペラーに次ぐ長尺だが
癖がなく淡々と進む。
終楽章も活力がもっと欲しい気もするが気張らない。
ゴリゴリのベートーヴェンを期待すると拍子抜けだが
この曲との相性は良い。

録音はベルリンのシーメンス・ヴィラでのセッション。
宮殿風で石造りの屋内は美しい響きを持っている。
Siemens Villa Berlin外
ピアノは美しくオケは厚くない。

18:22  12:44  9:02   計 40:08
演奏   A    録音  92点
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