クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Poulenc の記事一覧

プーランク 2台のピアノのための協奏曲 タッキーノ&ランジュサン(83)

2017.05.30 (Tue)
タッキーノ2ピアノ
タッキーノ&ランジュサン(P)/プレートル/モンテ・カルロフィルハーモニー管弦楽団
(83、EMI)は惚れ惚れする美しさが零れる。

LP時代のEMIの「フランスのエスプリシリーズ」ではプレートルとタッキーノが活躍していたが、
この曲にはモノラルだが作曲者とフェヴリエという決定的な盤があったため
録音されていなかった。しかしデジタル期に入ってようやくこのコンビを軸とした盤が出た
(併録はクラヴサンの田園協奏曲)。

タッキーノ(1934~)はプーランクの唯一の弟子として有名で
師匠の殆どのピアノ曲を録音している。
プーランクとタッキーノ
プレートル(1924~2017)はプーランクが最も信頼を寄せ「大好き」と
公言していた指揮者だ。
また、57年の作曲者自演盤で指揮をしているデルヴォーの弟子でもある。
プーランクとプレートル
そした意味ではこの盤は正統を受け継ぐといってよい。

演奏は作曲者による57年盤とは異なったアプローチ。
軽さは同じなのだがとにかく滅法美しい。
作曲者のものは色んな要素をそのまま並置したような、敢えて言えば粗雑さを
纏いおもちゃ箱的だったが、こちらはもっとロマンティック。
といっても決してべとべとしないさらりとした薫るようなもの。

タッキーノのピアノは軽妙で濁らない。プレートルの指揮も颯爽としているのだが
ここぞというとき両者はテンポを落とし溜めを作り憂愁のムードを醸し出す。
これが何とも沁みる。
第1楽章の音が静まった時の2台のピアノの儚い歌は夢の世界。
パリの街の輪郭が茫洋としてくる。
monet.jpg
そしてそのまま第2楽章も幻影が続く。
終楽章も軽さの中に歌を盛り込み素敵。オケも充実。

録音はモンテ・カルロのザル・ガルニエでのデジタル・セッション。
Opéra-de-Monte-Carlo-Salle-Garnier
この場所がまた素晴らしい。
モナコ公国は世界で2番目に小さな独立国だが非常に豊か。
この豪華なオペラハウスは見とれるが響きも良好。
優雅な時間を味わうことができる音盤だ。

8:36  5:13  5:53   計 19:42
演奏   S   録音  90点

プーランク 2台のピアノのための協奏曲 作曲者自身&フェヴリエ(57)

2017.05.27 (Sat)
class_poulenc_dowel.jpg
プーランク&フェヴァリエ(p)/デルヴォー/パリ音楽院管弦楽団(57、EMI)は
なるほどこういうことかと思う。

プーランク(1899~1963)は生粋のパリジャン。
彼の音楽はフランス的というよりパリ的と思う。
石畳を行き交うガタガタ車、到る所にあるチョコレート屋の甘い香り、
路地裏の馬具出身のブランドの慇懃無礼な店員、朝市の色んな人種の匂い。
僅かな個人的なパリ体験でもこの人の音楽を聴くと蘇る。

この曲は1932年作曲者と友人であるフェヴリエのピアノにより
ヴェネチア音楽祭で初演された。
プーランク&フェヴリエ
その時プーランクは「私は子供のころからクープランとカフェの音楽を
区別してませんでした。」と書いている。

雑多な要素(前年のパリ万博で聞いたガムランまで)を入れ込み、
でも下品にならず仕上げる。
純粋なクラシックファンからすると非統一なプーランクの音楽は
安心して聴けないので敬遠されるかもしれない。
しかし第2楽章の甘美さとひっそり忍び込む憂鬱には思わず寄せられる。

初演ピアニスト二人と往時のパリのオケの音に頷くしかない。

録音はsalle de la Mutualitéでのセッション。
モノラル末期の録音で帯域・広がりは無いが安定的。

7:43  5:28  5:27   計 18:38
演奏   巴  録音  75点

プーランク 2台のピアノのための協奏曲 ル・サージュ&ブラレイ(2003)

2017.05.26 (Fri)
ル・サージュpcon
ル・サージュ&ブラレイ(p)/ドネイヴ/リエージュ・フィル(2003、RCA)は
猫の目的刺激。コロコロ変わる。

この演奏の主導はプーランクに熱心な第一ピアニストのル・サージュなのだろう。
Sage-Eric-05.jpg
テンポと音の強弱の落差を大きくつけて表現意欲が旺盛。
とはいえそれが過度に陥ることなく軽妙さを持つ。
プーランクの本質を衝いた演奏なのだと思う。

第1楽章の緩急のメリハリが強烈。冒頭の激しく突進するアクセントの強い表情と
優しい弱音に包まれた表情の目まぐるしい転換が「プーランク」を強調。

第2楽章は極めてロマンティック。
ポツリポツリ音を切るのではなくレガートが美しい。
フランス映画のBGMで使われたとしても不思議でない。

第3楽章の活動も軽さを伴い雰囲気がある。
短い時間の中で変転する表情が楽しめる。

録音はベルギー、リエージュのザル・フィルハモニークでのセッション。
リエージュ
ヨーロッパは雰囲気のある素晴らしいホールがあちこちにあるものだ。
写真で見る限り豪奢な装飾も伴った大きな空間を感じさせる。
抜けの良い音、量感とともに繊細な空気感がよい。
2台のピアノは中央よりで極端に左右に置かれないので
第1、第2ピアノの掛け合いというより四手による華麗さを追求。

8:06  5:30  5:37   計 19:13
演奏   A+   録音  94点

プーランク 2台のピアノのための協奏曲 ゴールド&フィッディール(61)

2017.05.25 (Thu)
プーランクバーンスタイン
ゴールド、フィッツデール(p)/バーンスタイン/ニューヨークフィル(61、SONY)は
プーランクの愉しさを教えてくれた。
LPではショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲(プレヴィン)のB面に入っていた曲。
目当てはA面だったが初めて接したこの曲も気に入ってしまった。

当時はプーランクを殆ど聴いていなかった。
EMIの「フランスのエスプリ」シリーズもまだ出ていなかった。

なんとも変わった曲だ。聖と俗、夢と現実、天国と現生が同居。
とりとめないのだが、メロディはしっかり甘く入っているのでとっつきやすい。
そしてプーランクの曲はデジャヴがある。
この作曲家には消化されていないモーツァルトやショパンやジャズが
混在しているからではないか。

第1楽章フォルテで始まり軽やかに空を飛ぶ。
すぐにテケテケの下界の喧騒が紛れ込む。
それもすぐに止み、物憂い感傷の中に浮遊する。

第2楽章はモーツァルトで始まる。
すぐにそれがフランス仕立てに変容。お洒落な音楽。

終楽章はパリの街をスキップしながら早足で。
明るいだけでなく必ず憂いを含んだメロディが差し込む。
屈折した心模様が面白い。
ブレントヘイトン

録音はマンハッタンセンターでのセッション。
この時期のここでの録音は優秀なものが多いがこれもその一つ。
センスの良い軽やかで伸びやかで美しい音。
CDリマスターも成功し現役で通用する。
2台のピアノは左右にくっきり分かれ掛け合う。
明晰だが距離感も適切でトーンがシルキー。

8:01  5:15  5:36   計 18:52
演奏   S   録音  90点
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