クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Prokofiev PianoCon2 の記事一覧

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 デミジェンコ(95)

2017.06.04 (Sun)
デミジェンコ23
デミジェンコ(P)/ラザレフ/ロンドンフィル(95、hyperion) は優しく深い。
デミジェンコ(1955~)はウクライナ系ロシア人。
彼はモスクワ音楽院で学んでいるときロシアの叩きつけるようなピアニズムに
反発していたようだ。むしろジョン・フィールドの流れを大事にガンガンバリバリでなく
弱音、まろやかさ、深さで勝負する。

彼は1978年のチャイコフスキーピアノコンクールで第3位。
この時の優勝者がプレトニョフ。対照的だ。
むしろショパンコンクールに照準を絞った方がよかったのかと思わせる。
なお、この人はイギリスのハイペリオンと専属契約してしまっているので
マイナーなイメージだが素晴らしいピアニスト。
Demidenko.jpg

たまたまyoutubeで彼の演奏するこの曲の映像を見つけた。
スペインでの2015年のライブ (SinfonicadeGalicia)

60歳の演奏ということもあるかもしれないが輪郭はしっかりなのだが
実にまろやかで、我々がイメージする旧いタイプのロシアのピアニストでは無い。
プロコフィエフの外見上のモダニズムというより
聴いたことのないような詩的で太い演奏。そして静かだがしっかり主張している。
このビデオに感動してしまったので本盤を取り寄せた。

そしてこの映像の20年前の1995年録音のこの演奏も既に同じ方向性だった。
第1楽章の序奏のアンダンティノは幻想的に進み、アレグレットに入ると
逞しくなるのだが決して大柄に叩かない。
第2楽章は20年後のビデオより速いテンポで軽やかだが濁らない。
第3楽章は白眉。遅いテンポは既にこの時から。隈取りしっかりしながら
踏み込んでくる。どんどん巨大になる。心に迫る。
終楽章はオケも好調で緩急つけながら。ピアノは冷静と情熱。

彼はコンクールの審査員を通じて日本のピアニストも多く見てきている。
その時のインタビュー記事があったので抜粋を転載させて頂く。
『日本には才能ある若い演奏家が多くいますね。あるところまでは大変優れた
成果を挙げますが一つだけ足りないとすればそれはコミュニケーション。
日本では伝統的に、自分の感情や意見を人々に向けて発信することを
あまり良しとしない傾向があります。しかし音楽とはコミュニケーションの芸術です。
ピアノも楽譜も物にすぎません。それを本物の音楽をするためには、
感情を出してコミュニケーションすることが大事です。
もちろんこれは一朝一夕に変えられるものではありませんし、
乗り越えるには多くの時間が必要です。
しかし世界には、勇気を振り絞り想像力を駆使して壁を乗り越え、
劇的な変貌を遂げたアーティストが何人もいます。
自分がこう感じるという内面の感情を人々に伝えることは、
何ら悪いことではありません。ただ、勇気を出せばいいのです。』

これは何も日本人ピアニストだけのテーマではない。

録音は場所の記載は無いがセッション。
このレーベルらしい誇張の無い音。
アビーロードのような感じもする。ピアノはそれほどオフではなく
全奏ではオケが包む。実演に近い印象。

12:26  2:38  8:33  11:41   計 35:18
演奏   S   録音  91点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 クライネフ(92)

2017.05.29 (Mon)
クライネフ23
クライネフ(p)/キタエンコ/フランクフルト放送交響楽団(92、TELDEC)は
大らかな力感。

クライネフ(1944~2011)はメロディアに1976~83でプロコフィエフの
ピアノ協奏曲全集を録音してるのでこれは2回目。
その時の指揮者もキタエンコだった(オケはモスクワフィル)。
クライネフとキタエンコ
(↑左:クライネフ 右:キタエンコ)

以前聴いた第1番は気概があったのだが、今回の第2番は穏やか・・・。
おかしいと思って再度ヴォリュームを上げて聴き直したら印象が変わった。
演奏の評価というのは難しい。
コンサートホールでも座る席で聞こえかたはかなり違う。
CDも再生装置・状態のみならずこちらの体調でも大きく印象が違ってくる。

クライネフのピアノは打鍵がしっかりしておりロシア系の逞しさ。
特に第1楽章後半のカデンツアでは迫ってくるものがある。
ただ、ピアニッシモでのニュアンスとなるとリやグティエレスに分がある。

第3楽章でも図太さがにじみ出る。

終楽章ではオケも底力を出し太い。プロコフィエフの屈折した情感の表出
という点では今一歩だが終結の両者の盛り上げは豪快。

このピアニストの人となりは知らないが、なんだか良い人だったのでは。
因みに奥さんはフィギュアスケートの著名なコーチ、タチアナ・タラソワとのこと。
日本では奥方の方が有名かと。
タラソワコーチ

録音はフランクフルト・ドルンブッシュ放送局でのセッション。
先述の通り音量を上げると目覚めるタイプ。
テルデックは一聴では地味なので要注意録音が多い。
帯域も欲張っていないようだが大太鼓も揺るがせで入る。

11:31  2:34  6:42  10:57   計 31:44
演奏   A   録音  93点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 レーゼル(69)

2017.05.28 (Sun)
レーゼル協奏曲集
レーゼル(p)/ボンガルツ/ライプチッヒ放送交響楽団(69、DS)はほの暗い抒情。
抑えた中に意志がチラチラするところがよい。

レーゼル(1945~)は旧東ドイツのピアニスト。
当ブログのコメントにレーゼル盤を推されている方がいらしたので探してみたら
なんと10枚組のBOXにポツリ入っていた。
これは確かベートーヴェンとハイドンの協奏曲狙いで買ったと思うので
全く記憶になかった。レーゼルみたいに
プロコフィエフのピアノ協奏曲で第2番だけ
録音している人は他にいるだろうか?

東ドイツのピアニストというのはオルベルツ、ツェヒリンなど端正で真面目な印象で、
果たしてプロコフィエフは合うのだろうか?
調べるとレーゼルはドレスデン生まれだが、モスクワ音楽院で学び
レフ・オボーリンに師事し、66年のチャイコフスキーコンクールで6位入賞とある。
なるほどソ連・ロシアものにも強いわけだ。
この録音は20代前半のレーゼルの記録だ。
Rosel-Peter.jpg

さて演奏だがこう書きながらもロシア的な濃厚さとか迫力とはやはり違う。
トラーゼのようなドロドロ感は無く表面のクールさを一貫させている。

第1楽章はヴェールをかぶったオケに硬質なピアノが入るところなど
実に雰囲気がある。カデンツァに入ってからも叩きつけるようなことは無く
骨太に進む。ただ、冒頭からは明らかに主人公のピアノが変容している。
なんだか既に大家的だ。

第2楽章のヴィヴァーチェはオケもピアノも抑制をかけながら突っ走る。
ある意味彼らの方向性を感じる。

第3楽章は極端な表情はなくかっちり。

終楽章は快速。
保有盤最短時間なのは極端な緩急をとらずスラスラ行くから。
だからこそ時々起る爆発が意味を持つ。
なお、ボンガルツのプロコフィエフも珍しいと思うが予想以上の好演。

ご推薦いただいたおかげで良い演奏が聴けました。深謝。

録音はライプツィヒ、フェアゼーヌング教会でのセッション。
ライプツィヒ、フェアゼーヌング教会
教会らしい綺麗な響きを伴うシルキートーンが美しい。
ピアノもキラキラ録れておりドイツ・シャルプラッテンの良さを感じる。
但し、ピアノのグリュッサンドやフォルティッシモの全奏では
j時代を感じテープ収録の飽和感は否めない。

11:18  2:30  7:04  10:37   計 31:29
演奏   A+    録音  86点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 ベロフ(74)

2017.05.24 (Wed)
マズア
ベロフ(p)/マズア/ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(74、EMI)は
ゴツゴツのぶつかり合い。ロマンティックさはそぎ落とす潔さ。
最近の繊細な演奏もよいが、この直截なパワーを聴くと青春の無邪気な一面を感じる。

ミッシェル・ベロフ(1950~)はフランスのピアニストで67年第1回オリヴィエ・メシアン国際
コンクールの覇者。当然フランスもの近代ものに適性があるが、
このプロコフィエフが出た時には驚いた。
(録音のせいもあるかもしれないが)美感より打感重視。
第1楽章の後半のピアノ独奏はバリバリ。
それゆえ荒々しく非洗練の激しさでフランス的といえず意外だった。

対するはマズア/LGOというがっちりドイツコンビ。
これはまさに彼らの響きでドスこい。
金管は昔のヴィヴラートはかかるし、ペッペッという吐き捨てるような音。
時に積極的な主張を見せる。
この相乗効果で全体は岩石のぶつかりのような音楽に。

録音はライプチッヒのVersöhnungskircheでのセッション。
Versoehnungskirche_Leipzig.jpg
教会なのだがそれらしい豊かさというよりも直接的の収録。
あまり美しいとは言えないし懐かしいフォルティッシモでのぎりぎり感もあり。
底力のある音。
同年録音のアシュケナージ(DECCA)盤とは方向性の違う音。

10:15  2:33  5:46  10:43   計 29:17
演奏   剛A    録音 85点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 アシュケナージ(74)

2017.05.23 (Tue)
アシュケナージ全集
アシュケナージ(p)/プレヴィン/ロンドン交響楽団(74、DECCA)は品のある気迫。
よくアシュケナージ(1937~)は「中庸」といわれるが、際どい所で踏みとどまる天才。
外形的に目立つ作為は無いが、ピアノ表現の幅は非常に広大。
これが指揮活動になると、オケの介在で微妙な線が出なくなる。

このピアニスト若いころはもっと才気走っていたようだ。
1955年のショパン国際ピアノコンクールでハラシュヴィッツに次いで2位。
この2位に納得できなかった審査員のミケランジェリが降板したことで
かえって有名になった。1980年ポゴレリッチ事件に先立つ逸話。
一方、あの鬼才アファナシエフも国際コンクールの勝者。
彼は逆に昔は端正で真っ当な音楽づくりをしていたから勝てたらしい。

こうして考えてみると20世紀後半以降活躍しているピアニストは
良くも悪くもコンクール抜きでは語れない。
そうした事情は中村紘子著「チャイコフスキー・コンクール」に詳しい。

さて、この演奏、良い意味でソツがない。
平衡感に優れているが、打鍵は実にしっかり。深い音まで出している。
抒情と迫力を備える。
(↓1974年のアシュケナージ)
1974アシュケナージ
プレヴィンの伴奏もしっかり踏み込む。バランスは崩さない。
当時の両者の組み合わせはベスト。

録音はキングスウェイ・ホールでのセッション。
奥行き感と量感と適度な鮮度・分離。アナログ録音だが
現在でもしっかり通用。アシュケナージはDECCAでよかった。

12:08  2:36  6:22  11:26   計 32:32
演奏   A+   録音  92点
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