クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Sym7 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第7番 バレンボイム(99)

2017.06.05 (Mon)
バレンボイム78
バレンボイム/ベルリン・シュターツカペレ(99、TELDEC)は
ドスコイ充実の極み。
ピリオド奏法に全く目もくれずこのオケを信じわが道を行く。

バレンボイムには10年前のベルリンの壁崩壊記念演奏会ライブがある。
あの興奮に憑かれた演奏に比べ、演奏時間は反復実行も加え6分長くなり、
じっくりどっしり型の演奏が出来上がった。

第1楽章ギュッと固まった響き。弦は流麗というよりゴリゴリザクザク感を残す。
木管は清らか。金管は逞しくティンパニは硬質に打ち込まれる。
バレンボイムの解釈は恣意的でなく正攻法で力強い。
変哲ないのにここまで素晴らしい演奏になったのは、
指揮者には申し訳ないが低重心のオケの威力。
いや、ここまで立派な音を出させた指揮者の力量というべきか。

第2楽章も遅いテンポでひたひた迫る。音響が地に足がついている。
ブルドーザーの行進。

第3楽章も軽はずみにならない。
とはいえ、ここでは粘性が高いのが気になる。

終楽章はテンポは普通なのだが確信犯的にリズムの刻みを
前の音にかぶせるような処理。これにより舞踏感を出しているよう。
しかしながら相変わらず重い音なので独特の雰囲気を醸し出す。
最後の追い込みもさすが。スタジオ録音だが燃焼してる。
最近の小手先の軟な演奏とは違うぜ!と演奏が言っている。
Barenboim.jpg

録音は旧東ドイツ側にあった放送局スタジオでのセッション。
ここの響きがまことによろしい。音が止むときに残響も綺麗。
マルチマイクで録りながらうまくミックスしてこのオケの最良の音を伝える。

14:27  9:37  9:37  8:35   計 42:16
演奏   A+    録音  94点

ベートーヴェン 交響曲第7番 カイルベルト(59)

2017.05.11 (Thu)
カイルベルト全集
カイルベルト/ベルリンフィル(59、TELDEC)は渋く堅実。
Joseph Keilberth
カイルベルト(1908~68)は南西ドイツのカールスルーエ生まれの指揮者。
カラヤン(1908~89)と同年同月生まれながら早逝してしまったことに加え、
何より地味であったため知名度は高くない。
独墺もの中心としたレパートリーで、BPO、バンベルク、ハンブルグの3つの
オケを使いステレオ初期に9番以外のベートーヴェン交響曲を録音している
(当時はテレフンケン)。

この演奏はこの指揮者の人となりがわかるような演奏。
どの楽章も基本中庸なインテンポで何も付け加えない。
スコアとオケを信じそのまま鳴らした感。
カラヤン時代に入っていたこのベルリンフィルも武骨な響きだ。
オケを絞り上げるような音ではなくある意味おおらか。

第3楽章も踊るプレスト感なくどっしり。
終楽章も煽るようなことはなくひたすら強直に押し切る。
オケが優秀なだけに曲自身が持つ迫力を獲得している。
面白みやスリルがあるかといえばないが、基本書的充実。

録音は場所不明のセッション。
響きは多くなく教会系ではないような感じ。
テレフンケンの誇張のない録音で不自然さはないが、
年代を感じさせるくすみはある。

11:59  8:06  8:01  7:05   計 35:11
演奏   A   録音 85点

ベートーヴェン 交響曲第7番 バレンボイム(89)

2017.05.10 (Wed)
1989バレンボイムBPO
バレンボイム/ベルリンフィル(89、SONY)はベルリンの壁開放コンサート。
このライブの異様な熱気はその背景を抜きに理解できない。

戦後1949年に東西ドイツができ、1961年には突如ベルリンは壁により分断された。
時が経ち1989年東欧の民主化が進行する中、国内のガス抜きのため
東ドイツは旅行規制の緩和に動いた。
が、それは11月9日の夜に国境の開放として伝えられ、何が何だかわからないまま
検問ゲートが開かれ、事実上ベルリンの壁が崩壊した。
当時世界は詳細不明のまま壁によじ登りハンマーで壊す民衆の姿を映し出していた。
ベルリンの壁
しばらくしてそれは東ドイツのスポークスマンの誤解による発言が
引き起こした事態だと分かるが時すでに遅し。
結局東ドイツは一年もしないうちに崩壊し西ドイツに吸収される。

壁崩壊の二日半後、
ベルリンフィルは東ドイツ市民のための無料のコンサートを開催した。
その記録が本盤。
壁が実質崩壊したのは11月10日。その翌日にはこのコンサートが決定され
ラジオで実施が伝えられた。誰が言い出したのか知らないが、関係者が即決を
支持し全員猛烈なスピードで動いたはず。
その一人がバレンボイム。
たまたまベルリンでオペラ収録のため滞在していた時この事件が起こった。
そしてベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番の弾き振りと交響曲第7番の指揮を
引き受けた。
カラヤンはこの年の7月に亡くなっていたのでベルリンの壁の崩壊を目の当たりに
することはできなかったが、本拠地フィルハーモニーを東西ドイツ統一後の
ベルリンの中心に置こうと尽力した。
東ドイツ市民はいつかは壁の向こうに見える西側のフィルハーモニーで
ベルリンフィルを聴いてみたいと思っていた。それがついに突如としてかなった。

さて演奏だが非常に堂々と始まる。テンポも急いてはいない。
しかしいちいち音が強い。これはカラヤンの時のように出せと言われて音を出すのでなく、
団員が興奮してつい強固になってしまったような感じだ。
バレンボイムはこの段階では冷静を保つ。

第2楽章も遅めのテンポだが盛り上がりの音の起立はすごい。

第3楽章あたりになるとティンパニが完全に仕切っている。

終楽章は指揮者が興奮状態。
映像で見る限りオーバーアクションで汗が噴き出しながら体がうねる。
オケはしっかりしたもので統制がとれているが流石に後半はタガが外れる。
バキバキと右から何の音かと思うとコントラバスの弓が思い切り胴に当たっている。
ティンパニが見事にしめる。
聴衆はいきなり総立ちで歓声を上げる。
Daniel-Barenboim-Konzert-12-November-19.jpg
1989-DCH-.jpg
録音は西ベルリン・フィルハーモニーでのライブ。
予想外に音がいいので驚く。
ドキュメンタリー映像で確認できるがマイクが何本も天井から吊ってあり
細部までしっかり録れている。
ホールトーンも両立しており、俄か仕立ての録音と思えないレベル。

12:06  9:04   7:39  7:36   計 36:25
演奏   歓   録音  90点

ベートーヴェン 交響曲第7番 クライバー(86)

2017.05.08 (Mon)
クライバー471986
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団(86、MEMORIES)は
86年5月19日の来日時の感動的演奏。

公演最終日の様子はNHKで放映されている。
クライバーNHK
リズミックなところでも舞踏のような横に流れる指揮姿がかっこいい。
この指揮ぶりからなぜあんな音が出ているのか分からない。

82年盤より中間楽章のテンポは一層速いが基本的には同じ。
本来的には正規盤を聴くべきだろうがこちらも捨てがたい。
いつか正規盤としてでないものか。

とにかく来日時にこの演奏を聴けた人は幸せだ。羨ましい限り。
演奏終了時は聴衆は瞬間咆哮型反応だがやむなしか。
オケが去った後もクライバーは舞台に戻り
日本の聴衆とにこやかに握手していた姿は印象的。
キャンセル魔で演奏回数の少ないクライバーが5回も来日公演をし
そのほかプライベートでも何回か日本に来ていたという。
日本が好きだったのだろう。

ベルリン生まれ、ブエノス・アイレス育ちのクライバーのお墓は
スロヴェニアのKonjsicaという場所にある(奥様の出身地)。
クライバーの墓
60代からほんとの田舎で質素に暮らしていたクライバー。
若いころ相当やらかした人が全てを捨てて山にこもる。
そして妻の後を追うように亡くなった。

録音は人見記念講堂でのライブ。
NHKが放送したエアチェック音源かもしれない。
やや遠いマスで帯域も一定だが迫力は十分。

11:17  7:36  7:48  6:36   計 33:17
演奏   参    録音  84点

ベートーヴェン 交響曲第7番 クライバー(82)

2017.05.07 (Sun)
クライバー71982
クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団(82、ORFEO)は
怒涛の演奏。

このライブは親交のあったベームの「追悼演奏会」のもので
プログラムはベートーヴェンの第4番と第7番。
前者はLP時代に発売され吃驚仰天したのが懐かしい。
第4番という曲の像を全く変えた歴史的記録だった。

一方この第7番はなぜかずっと発売されず
クライバー(1930~2004年)の没後2006年に突如SACDで発売された。
DGのセッション録音とは似て非なる、というか違う雰囲気を持つ。

ウィーンフィルとは82年に第4番の練習中に意見が衝突し一時関係を
断ってしまう。やはりこのオケには譲れない一線というのがあるのだろう。
当盤を聴くとDG76年盤は指揮者:オケ=5:5だったと感じる。

一方こちらは略カルロスの世界。
第1楽章冒頭から緊張感が漂う。
(指揮者の登場時点で前曲の興奮醒めやらぬ聴衆から歓声が上がる)
DG盤のような綺麗な音ではないし演奏上の瑕疵はあるが凝縮力が凄い。
序奏の段階で既に音楽が畝っている。
音が強まる時に加速をかけ弱まると減速する。
主部に入ってからも力感が漲り結部での叩きつけるティンパニは強固。

第2楽章もアレグレットを守りながら圧が強い。
最後のピチカートは印象的。

第3楽章も張りのある音楽が続く。

終楽章はアタッカ。楽員が急いで楽譜をめくる音が聞こえ怒涛の進軍開始。
「バッカスの饗宴」という言葉をこれほど体現した演奏は無いだろう。
後半にかけての熱風はCDでも伝わる。
終結は「クライバー・アッチェレランド」ともいうべき独自の高揚を見せる。
そして演奏終了時の拍手が面白い。
あっけにとられた聴衆が徐々正気に戻り大喝采。

録音はミュンヘンの国立劇場での真性ライブ。
nationaltheater.jpg
アナログ収録でマイクの制約もあり、
セッションの明晰さは無いが空気感は伝わる。

11:28  8:09  8:23  6:26   計 34:26
演奏   S    録音  87点
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