クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Brahms PianoQ1 の記事一覧

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 カプソン兄弟ほか(2007)

2017.02.19 (Sun)
カプソンPQ1
ルノー・カプソン(Vn), コセ(Va),ゴーティエ・カプソン(Vc), アンゲリッシュ(p)
(2007、Virgin)は絶妙な感覚美。重くならないブラームス。
青春譜でもあるこの曲は感傷的なメロディもきっちり詰まるが、
ここではそれがべとつかない。それがよい。

フランスのカプソン(カピュソン)兄弟にコセとアンゲリッシュという仲間を加えた演奏。
主役は左右に配置されたこの兄弟。
ピアノは中央で出しゃばらず、むしろヴァイオリンとチェロを取り持つよう。
ヴァイオリンは独自の音色を持ち単にきれいなだけでなく切ない。
チェロも微妙なスイート感。ピアノは高域で冴える。ヴィオラはヴァイオリンを立てる。
全く単調感がなくそれぞれの楽章で積極的な愉しみがある。

この演奏はスイスのイタリア語圏であるティチーノ州のルガーノで行われている。
croppedimage580380-Lugano-Tessin.jpg
こうした風光明媚な場所で音楽を奏でるのはさぞ気持ちがいいだろう。
そんなことまで感じさせる。

録音はオーディトリアム・ステリオ・モロでのセッション。
Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano
室内楽にはぴったりの音場で弦の響きを映えさせる木質感がいい。


14:03  8:16  10:37  8:13   計 41:09
演奏   S    録音  95点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(ピアノ連弾版) マティース&ケーン(98)

2017.02.18 (Sat)
マティース&ケーンpq1
マティース(p)&ケーン(p)(98、NAXOS)は作曲者自身の編曲によるピアノ連弾版。
なんというかピアノ四重奏曲をピアノ連弾曲に編曲する意味合いがなかなか難しい。
大編成のものを小さくした場合、演奏における実用上の理由や
聞き手側にしてみれば透ける構造による発見という面白さがある。
ということでナクソスのこのシリーズは結構好き。

しかしここではもともとが室内楽。
しかも単純に言えばピアノ1人は重なっているので、
残り1人のピアノが弦楽3人を受け持つ構図。
原曲との違和感が少ないとはいえるのだが、ピアノの音色が重複感。
これだったら、あと2人足してピアノ四重奏で演奏してほしくなる。
ということで原曲の良さを見直すことになった。

もちろん、マティースとケーンはここでも誠実に仕事に取り組んでいて
好感が持てる。
(↓Haus der Klaviere Gottschlingサイトから二人の近影)
Christian Köhn

録音はハイデルベルク・クララ・ヴィーク大講堂でのセッション。
明確にピアノを捉えた録音。会場の響きは自然に入り綺麗。

14:47  8:30  10:06  8:57   計 42:20
演奏   惜    録音  92点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) クレンペラー(38)

2017.02.17 (Fri)
brahms-complete-symphonies-ein-deutsches-requiem-ect-klemperer-memories-4cds.jpg
クレンペラー/ロサンジェルス・フィル(38、MEMORIES)は歴史的初演記録。
クレンペラー(1885~1973年)はユダヤ系ドイツ人であったため、
ナチス・ドイツを逃れて1933年(48歳)にアメリカに亡命する。
ここでロス・フィルの音楽監督の職を得て活躍する。

時を同じくして亡命してきたユダヤ人のシェーンベルク(1874~1951年)に
この曲の編曲を依頼した(1937年)。
初演は翌年1938年になされその時の記録が本盤。

シェーンベルクの主要曲は亡命前に出来上がっており、
この時期は作曲というよりUCLAなどで教育活動が中心だった。
12音技法にのめり込む前に傾倒していたブラームスの作品を
扱うとあって編曲に前向きだったことが伝えられる。

さてこの演奏、貧しい音の向こうで聞こえてくる音楽は実に颯爽としている。
50代のクレンペラーの健康で率直な音楽づくりに感心する。
テンポはどの演奏より速いが寂しさを湛えながら走る。
この曲は初演の時から名演だったのが分かる。

しかし、この初演の翌年1939年に脳腫瘍に倒れたクレンペラーは、
言語障害や身体の麻痺といった後遺症との戦いを余儀なくされ、
このオケの音楽監督の座も失うことになる。
この病をきっかけに元来患っていた躁鬱病も悪化、奇行が目立つようになり、
以後アメリカでのキャリアは完全に断たれる。
10年間の不遇の時を経て1950年代になって復活を果たし
VOX・EMIにも多数の録音を残した。

大男・奇人変人・色情狂の名をほしいままにしたクレンペラー。
この編曲を依頼したことは彼の功績だ。
otto-klemperer.jpg

録音はロスでの初演ライブ。
SPからの復刻でスクラッチノイズと音の脱落があり一般の鑑賞には適さない。

12:02  8:35  9:12  7:22   計 37:11(一部脱落あり)
演奏   颯   録音  55点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) ラトル(2009)

2017.02.16 (Thu)
ratoru.jpg
ラトル/ベルリンフィル(2009、EMI)は堂々、堂に入っている。
ラトルが得意とする曲でおりにふれて取り上げている。

このコンビは2004年のアテネでのヨーロッパコンサートでこの曲を演奏した。
その時の映像は放映もされたが会場(ヘロド・アティクス音楽堂)も含めて
実に印象深いものだった。
Berliner_Odeon.jpg

その五年後に録音されたこのCD。
『室内楽版では到達できないブラームスの深遠に迫るラトル。
シェーンベルクの編曲に生き生きと反応。』という宣伝文句も納得させられる。

第1楽章冒頭からベルリンの深々とした音にゴージャスなスケール感を感じる。
ラトルの指揮は丁寧で力まず余裕を持って歌いあげる。
呼吸感も実に決まっている。

第2楽章第3楽章も落ち着いたたっぷりした演奏。
シェーンベルクよりブラームスを感じさせる。

終楽章では本領発揮。
ぶっといベルリンの音を活かしながらも破綻の無いスピート感を併せ持つ。
ベンツでアウトバーンを走る感覚?終結はド迫力。

録音はベルリン・フィルハーモニーでのセッション。
低域からたっぷり感がある。ただ、この会場の録音でいつも思うのは
もう少し立体感と締まりがあったら・・・ということ。

14:02  8:38  10:34  9:03   計 42:17
演奏   A+    録音  91点

ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編) ライスキン(2006)

2017.02.15 (Wed)
ライスキンPQ
ライスキン/ライン州立フィルハーモニー管弦楽団(2006、CPO)は真っ当。

このオケはコブレンツの歌劇場のオケとしても活動しているが、
1654年宮廷楽団として誕生したというから相当な歴史。
(1919年設立のラインランド=プファルツ州立フィルとは別団体)

コブレンツは人口10万人のライン川沿いの小都市だが、
NEU_Deutsches_Eck_Koblenz.jpg
ドイツの場合はそんな街にも立派な技量のオケがある。

ライスキン(1970~)はサンクトペテルブルグ生まれで
dirigent_1.jpg
2005~08年このオケの首席だった。
もともとヴィオラ奏者で当方もブリテンの協奏曲の盤を保有している。

さて演奏だが全く奇を衒わないし主情的でもない。
基本的にインテンポで進み、凭れることが無い。
ブラームスらしい落ち着いた響きが基調。
オケの音がしっとり収録されておりこの曲をじっくり味わうことができる。
ただ真面目すぎるので、もう少し踏み込んで欲しくもなる。

なお、本盤の併録はブラームスのクラリネット・ソナタ第一番を
ベリオが管弦楽伴奏つきに編曲した珍しいもの。
実演で一度だけ聴いたが(シェーンベルクとは違い)実に渋い編曲。

録音はコブレンツのライン・モゼル・ホールでのセッション。
Rhein-Mosel-Halle_01_Koblenz.jpgRhein-Mosel-Halle,_Großer_Saal
どちらかというと体育館のような会議場だが、知らずに聴くと
下手なコンサートホールよりいい音場だ。
シューボックス型で適度な響きが弦を滑らかにする。
CPOの録音陣もセンスがよく上質感のある音がする。

14:16  7:37  8:53  8:59   計 39:45
演奏   A   録音  94点
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