クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Prokofiev VnCon1 の記事一覧

プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番 パパヴラミ(96)

2016.12.31 (Sat)
パパヴラミvncon
パパヴラミ(Vn)/ヴィド/ポーランド国立放送交響楽団(96、NAXOS)は
綺麗事で済まされない力。この訴えかける力は何なのだろうか。
この曲でこれほど情念のようなものを感じる演奏は初めて。
シゲティのような気迫のが剥き出しになるのでなくほの暗く内に秘めたもの。
バランスの良い名盤というには憚られるが思わず惹きこまれそして感動した。

テディ・パパヴラミ(Tedi Papavrami, 1971年~)はアルバニアの首都ティラナ生まれ。
アルバニアは九州より小さい東欧の国。
albania_20161228093248903.jpg
このヴァイオリニストが生まれた頃から1990年代まで鎖国・国民皆兵政策がとられ
独裁国家で貧しかった。パパヴラミは4歳から父の手ほどきで始めたヴァイオリンで
「アルバニアのモーツァルト」と言われた神童。
パパヴラミ1
しかしこの国では十分な活動ができず11歳で渡仏(フランスからの奨学金)。
家族も報復の危機から亡命を余儀なくされたらしい。
困難の末、才能が国家の体制を乗り越え最近では活動の幅を広げている。
そんな彼を早い段階で見出し本盤に起用したナクソスは恐るべし。
パパヴラミ

ナクソスはクラシックのエンサイクロペディアを目指してきたので
強烈な意志を持った演奏は少なかったがこれは例外。

第1楽章から単に夢見て綺麗という音楽でなく、メラメラしている。
第2楽章は白眉。「スル・ポンティチェロ」の部分の強調など恐ろしい。
終楽章も流麗だけで済まさない。テンポは保有盤最長。
後半は一段一段上るような表情。不死鳥のように立ち上がる自分と重ねるよう。
終結は天上の美しさ。

録音はカトヴィツェのポーランド放送コンサートホールでのセッション。
これまたナクソスの好調を示す優秀録音。
ホールトーンとオケ、独奏のバランス感がよくこの迫真の演奏をうまく伝える。

9:32  3:54  8:57   計 22:23
演奏   情S    録音  94点

プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番 キョンファ(75)

2016.12.28 (Wed)
キョンファ
キョンファ(Vn)/プレヴィン/ロンドン交響楽団(75、DECCA)はやはり素敵だ!
独奏は勿論、バックも万全。
この曲のリリシズムを理解しながらロマンティックな演奏を繰り広げる。
もっと濃厚な表情かと思っていたがそんなことはない。
当時27歳の彼女はまだ繊細だ。聴き直して再確認した。
そしてプレヴィンの棒も品がいい。
この曲の代表的名盤といっていいと思う。
previn chung

第1楽章の初々しく丁寧な運び。孤独感、寂寥感とほのかな希望。
終結のテンポを落としたクリームが蕩けるような儚さは素晴らしい。

第2楽章も極めてデリケート。
スケルツオだからといって不用意に荒々しくしない。
これはプレヴィンのセンスかもしれない。

終楽章も独奏とオケの掛け合いのバランスが良い。
そしてここでも儚い終結の表情が絶妙。

録音はキングスウェイ・ホールでのセッション。
ヴァイオリンを主軸の据えた音作り。かといってオン過ぎない。
音場は適切。

9:48  3:51  7:51   計 21:30
演奏   S   録音 88点

プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番 フリードマン(64)

2016.12.27 (Tue)
フリードマンラインスドルフ rainnsudorufu.jpg
フリードマン(Vn)/ラインスドルフ/ボストン交響楽団(64、SONY)は良識派。
ヴァイオリニストの個性なのか指揮者のそれなのか分からないが、極めて落ち着いた演奏。

フリードマン(Erick Friedman, 1939~2004年)はジュリアード卒のアメリカのヴァイオリニストで
晩年はイェール大学音楽科で教鞭をとのこと。この人の他の演奏を聴いた記憶がない。
曲想に応じて弾き分けるが極端な表現を持ちこむことは回避され、
ひたすらヴァイオリンを丁寧に歌わせる。バリバリ見せつける感はない。
テンポは遅めで情動感は少ないが、なんか好ましい。
音色はさらりとした感触ではなく、肉厚でヴィヴラートはしっかりあり、ポルタメントも見られる。
そうした意味では懐かしい時代を感じさせないではない。
フリードマン

一方、ラインスドルフ(1912~93)はプロコフィエフをかなり取り上げている。
しかし、この作曲家のモダニズムを強調するのでなく客観的な姿勢が見て取れる。
ここでもボストン響の恰幅の良さと相まってしっかりサポートしている。

録音はボストン・シンフォニーホールでのセッション。
フォルテシモで飽和感があるがそれを感じるのは一部。
このホールの良さを感じさせる。

9:29  4:09  8:00   計 21:38
演奏   A   録音  86点

プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番 オイストラフ(54) 

2016.12.20 (Tue)
オイストラフ
オイストラフ(Vn)/マタチッチ/ロンドン交響楽団(54、EMI)は濃厚な迫力。
昨今の軟な若者をなぎ倒す図太さ。

冒頭からものすごく自信に満ちた音。
表情は大きく歌舞伎を見るよう。
一方、若きプロコフィエフのか細い心の震えは、
アンプリファイアーで増幅され凶暴さの片鱗すら見せる。
これも若さの一つの表現かもしれないと思わせるほど説得力は強い。
終楽章の悶絶はヴァイオリンがオケを完全に引っ張っている。

オイストラフ(1906~74)はプロコフィエフ(1891~1953)と
国と時代を共有しているとともに、作曲家の苦難に共感している。
オイストラフはこの曲を青春の記録としてではなく
その後のプロコフィエフの困難な精神状況として捉えているのだろう。
Oistrakhと

録音はアビーロード第一スタジオでのセッション。
モノラルではあるがヴァイオリンがオンマイクで明晰。
いかにもスタジオ収録らしく通常はここまでソロが大きくない。
バックのオケもしっかり聴こえる。

9:45  3:51  7:44   計 21:20
演奏   共    録音  78点

プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番 シャハム(95) 

2016.12.19 (Mon)
シャハム
シャハム(Vn)/プレヴィン/ロンドン交響楽団(95、DG)は甘美&メロウ。
ギル・シャハム(Gil Shaham、1971年2月19日 - )は、イスラエル人のヴァイオリン奏者。
あくまで作曲者の意図に忠実ながら、高いテクニックと非常に流麗な演奏が魅力、
とWikiにあるがその通りだと思う。妙な癖がなく新鮮さを残す。

そしてこの演奏の立役者はプレヴィン。
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しつこくならない範囲で表情豊か。絶妙なセンス。
このコンビで93年に録音された「バーバー/コルンゴルド」の協奏曲は
非常な名盤だと思うがあの路線が継承されている。

第1楽章もヴァイオリン独奏の厳しい表情はさほどなくむしろオケに
耳が行ってしまう。耽美の夢の世界に誘う。

第2楽章ヴィヴァチッシモも軽く決して濁らない。
オイストラフなどががりがり弾いていた部分も美音。
緩急を巧みにつけ聴かせる。

終楽章もヴァイオリンもロマンティックに歌いそれをオケが優しくサポート。
シャハムは自我をあまり出さず丁寧。それがいい。
ここでも夢見心地。

録音はロンドン・ヘンリーウッドホールでのセッション。
henry-wood-hall_201612192125536e1.jpg
広い空間を用いて美しい音を作る。EMIが自社のスタジオを飛び出し
ここでこのような録音を残していてくれたらと思う。
低域から高域まで量感も適度の素晴らしい音。

9:24  3:52  8:16   計 21:32
演奏   A+   録音  95点
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