クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Grainger Warriors の記事一覧

グレインジャー 戦士たち(ピアノ版) ジョーンズ(91)

2016.11.15 (Tue)
マルティン・ジョーンズ
M・ジョ-ンズ(p)(91、Nimbus)は6手2台のピアノによる演奏。
グレインジャーはグリーグもびっくりのピアノの名手。
パーシーグラインジャーピアノ
「戦士たち」は1916年に完成したが1922年にピアノ連弾用に編曲した。
管弦楽版は巨大すぎるのでピアノ版に圧縮、
といっても4手では間に合わないので6手になった。

英国のピアニスト、マーティン・ジョーンズ(1940~)は全5巻の
グレインジャーのピアノ曲集を完成させているがこれはその中の1曲。
マルティンジョーンズ
フィリップ・マーティンとリチャード・マクマホンというピアニストが参加している。

このピアノ版の他の盤は知らない。これはこれで愉しい。
勿論オケ版のスケールや多彩さはないが、
パルス的なピアノの使い方が面白くキラキラが続く。
ピアノは力強いがやや単調になる点があるのは演奏者のせいなのだろうか。
アルゲリッチがその友人とやってくれないか。

録音はグラスゴー郊外のWyastone Leysというニンバス所有の館でのセッション。
Wystone_Leys_02.jpg
響きは大きくなく適度な広さ。芯のある音。

20:03
演奏   A    録音  90点

グレインジャー 戦士たち コーポロン(2001)

2016.11.10 (Thu)
グレインジャーコーポロン
コーポロン/昭和ウインド・シンフォニー(2001、CAFUA)は吹奏楽版(編曲:フランク・パジョン)。
グレインジャーはブラス・バンドが盛んな英国で活躍したこともあって吹奏楽曲を多数作っている。
この曲はフル・オケ用に作曲されているが、吹奏楽的にも魅力があるので編曲されている。

本盤は、この分野の権威のコーポロンを招いてこの吹奏楽版の日本初演をした時の記録。
abm00000223.jpg
この編曲版は海外ではすでに音盤となっている。

さて演奏だが一流のプロのフル・オケと比べるのは酷。
この曲はパーカッションと管が異常に活躍するが、やはりそれは弦の支えがあって
雄大さが出ることがわかる。これは仕方ない。
また、初演ということもあってか(海外盤に比べて)やや安全運転気味。

ただ、そうしたことを捨象してこの編曲・演奏を楽しむ。
さすれば金管や木管に打楽器がむき出しになりキラキラが強調される。
そして最後はド迫力だ。愉しい。
学生主体と思われるが実演に接していたら彼らの精一杯の
輝かしい演奏にウルウルしたはずだ。
とにかくフル・オケでやるには非常なコストと手間のかかるこの曲。
なかなか実演に接することは難しそうだ。
となれば、日本の高度な吹奏楽でどんどん取り上げていってほしいものだ。

録音は昭和音楽大学吹奏楽部 第2回演奏会2001年6月25日
オペラシティコンサートホールにてライブ収録。
HDCD仕様で生々しい音と空間がとらえられている。
コーポロン&昭和WIND

20:24
演奏   吹   録音  93点

グレインジャー 戦士たち ラトル(96)

2016.11.09 (Wed)
ラトルグレインジャー
ラトル/バーミンガム市響(96、EMI)はぴったり。
ラトルはグレインジャー擁護者の一人。
明るくリズミックなこの作曲家の作風とは相性がいい。
そして大規模管弦楽曲の「戦士たち」とはばっちり。
聴く前からわかる。
一言でいえば非常に聞かせ上手。
この曲をダイナミックに面白く演奏している。
ノリノリである。

一点残念なのは終結部でオケの楽器が各所で咆哮する場面、
響きが混ざり合いすぎて各方面から聴こえるはずの音が塊になること。
これはラトルのせいではない。
なお、アシスタント・プロデューサーのシュテファン・フロストが
サブ指揮者を務めている。

また、このアルバムの選曲はラトルらしい拘り。
冒頭第1曲目『組曲:早わかり(1916) 第1曲:到着ホームでうたう鼻歌』は
最後に収録のこの「戦士たち」と同じフレーズが出てくることを気付かせる。
また「リンカーンシャーの花束」というポピュラー曲を挟んで
ラヴェル「鐘の谷」やドビュッシー「版画」の編曲を置いていたり。
この作曲家の才能の多彩さを明らかにする。

彼の小品はパッと聴くとライト・ミュージックのようだが、斬新なアイデアを
発揮していたことを教えてくれるアルバム。
しかし、「戦士たち」がディアギレエフのバレエとして上演されていれば
もっとグレインジャーに大作の依頼が来ていたことだろうにと思うと
(歴史のいたずらといえど)残念だ。
simon-rattle-1976.jpg

録音はバーミンガム、シンフォニーホールでのセッション。
EMIとしては奥行き感に優れた録音。Dレンジの極大な曲なので
レベルが少し抑え気味に収録されている。
バスドラ含むオケのトッティではEMIにしては珍しいゆるがせにする音響が
味わえる。スケール感はいいのだが、個々の楽器の掴みがもっとできていれば
更にこの曲の面白さを伝えられていたと思う。微妙に飽和感がある。

18:42
演奏   A+    録音  93点

グレインジャー 戦士たち ヒコックス(97)

2016.11.04 (Fri)
ヒコックス戦士たち
ヒコックス/BBCフィルハーモニック(97、Chandos)は痛快。

この演奏は、シャンドスのグレインジャー・エディション第6巻の最後に収録。
このシャンドスのグレインジャーを総ざらえしようとする試みは
1992年から2002年まで続き19巻出ている。
これで打ち止めなのか復活継続するのかは不明。

しかしこの中に今は亡きヒコックス(1948~2008)の指揮で
「戦士たち」が収録されたのは有り難い。
ヒコックスとグレインジャーの相性はぴったり。
この指揮者はリズミックで溌剌とした音楽が得意なのだ。
Richard-Hickox_2016103023051882d.jpg

演奏は予想通り最初から息もつかせぬ音楽が展開されうきうき。
このオケの分厚いブラス、パーカッションがドスを効かせる。
チューブラベルがキラキラ。ガーディナーより一層のメリハリあり。

中間で騒ぎが収まり11分からコールアングレがフォーク調のメロディを
たっぷり奏でたあと、左奥からブラスの6重奏が勢いよく登場(12分半)、
そこにテンポとリズムの異なる弦が鬱蒼と覆いかぶさる。
この曲の聴きどころだ。並走する二つの音楽が絶妙で面白い。

そして15分からフィナーレへむけ各種民族=エナジーが集結し
17分には巨大な集団に成長。
フルオケに乗っかるホルンの壮大な下降音型が出るときには鳥肌。
カッコいい。これはオーケストラのビッグバンだ。
Big-Bang.jpg

とにかく流石ヒコックス。BBCフィルも素晴らしい。
因みにこのアルバムには管弦楽曲が14曲収録されているが、
この曲までの13曲とこの曲では小学生と大学生くらいの差があるので
心の準備が必要だ。

録音はマンチェスターのニューブロードキャスティングハウスでのセッション。
シャンドスらしい華やかさを伴いスケール感とパワー溢れる音で収録。

18:47
演奏   S    録音  95点

グレインジャー 戦士たち ガーディナー(94)

2016.10.31 (Mon)
ガーディナー
ガーディナー/フィルハーモニア管弦楽団(94、DG)はこの曲の世界的伝道者。
華麗・流麗でスケールが大きい。

ガーディナーは人気曲ホルストの「惑星」と抱き合わせでCDを作り、
しかも付録でなく冒頭にこの曲を置き、メジャーレーベルから発売させた。
そして私は指揮者の戦術に乗りこのCDを手にして驚異的な作品を知る。
はっきりいってこのCDで「惑星」(いい演奏だが)を聴いた記憶があまりない。
それほどこの曲、この演奏が素晴らしいのだ。

指揮者J・E・ガーディナーの大叔父である英国の作曲家バルフォア・ガーディナー
(Balfour Gardiner, 1877~ 1950)はグレインジャー(1882~1961)と親交があり擁護者。
(↓デリアス邸で和む左からグレインジャー、B・ガーディナー、作曲家のフィアンセ)
grez-garden-percy-ella-grainger-balfour-gardiner_R.jpg
そんな所以もありこの指揮者も小さい頃にこの陽気な作曲家に会っていた。

演奏も上記経緯からか共感溢れる。
曲は①ヴィヴァーチェ(Tempo1)-②レント(Tempo2)-③Tempo1-④レント、より速く
-⑤僅かに遅く-⑥Tempo1(熱狂的舞踏)-⑦レント非常に荘厳に(頂点)
-⑧プレスト(熱狂的舞踏)の連続した8部から成る。
この演奏は溌剌とした壮大な部分も素晴らしいが
レント部分での歌が綺麗で丁寧。
また、遠方からのバンダは夢の中の響きのよう。
とにかくこの曲の魅力を優秀録音とともに教えてくれた素晴らしい演奏。

録音はロンドン、オール・ハロウズ・ゴスペル・オークでのセッション。
All Hallows, Gospel Oak
聖堂らしい広大な空間でスケール大。適度な距離感を持ち雰囲気豊か。
バスドラの量感からグロッケンの粒立ちまで見事。
弦は潤いがある。オーディオ的にチャレンジングな曲。
終結部はオルガンのような響き。

18:21
演奏  S   録音  96点
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