クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Schubert SonataD960 の記事一覧

シューベルト ピアノ・ソナタ第21番D.960 舘野泉(91)

2016.12.04 (Sun)
舘野泉18192021
舘野泉(91、Canyon classics)は凛とした思索。

舘野はこのCDの解説の中で
「現代のシューベルト弾で、私はブレンデルとルプだけが素晴らしい
と思うがこの二人ともリヒテルに比較すると小さい。
作品の核心に至るまでに、あまりにも多くのことに
気配りしすぎるように思うのだ。」
「(一方リヒテルはそうしたことを感じさせず)運命とデモンそのものが
目前に在るという感じであった」
と記している。

確かにこの演奏はリヒテルとタイムが似ている。
但し、タッチはこちらがすっきりしているし音の粒が立っている。
前2楽章はポツリポツリ感があり寂しさが漂う。
流れるよりも思索的。
後半2楽章は一気呵成だが決して粗くならない。
知的なコントロールが効いている。

ある作家はこの演奏をルービンシュタイン的と評したけれど、
私には違った方向に聴こえる。
1936年生まれのこのピアニストが55歳だった時の記録。
まだまだ明快な意識・意欲が見える。

録音はフィンランド、ヤルヴェンパーのシベリウス・サリでのセッション。
ヤルヴェンパザール
響きも粒たちもよいホール。低域も濁らず澄んだ音が聴ける。
北欧の冬の録音といわれるとそうかと思う。
Rikkumaton.jpg

23:08  10:14  3:43  8:01   計 45:06
演奏   A   録音  95点

シューベルト ピアノ・ソナタ第21番D.960 バレンボイム(2014)

2016.12.03 (Sat)
バレンボイム
バレンボイム(2014、DG)は流石というしかない。
前後半の音楽の分断がなく、自然で温もりのある音楽が溢れている。
私は死の間際に作られたこの曲を深刻に奏するよりも流れる演奏が好き。
以前は暗い演奏が沁みたのだが・・・。

この演奏はツァハリアスの爽やかさとは全く違う。ケンプほどの達観もない。
でも作為のない歌がいい。素敵なピアノ曲を聴いていると感じる。
録音もよくピアノの音がキラキラ綺麗。
流れる中でこれほど音色が多彩な演奏はないのではないかと思う。

第1楽章など健康的に過ぎるという感想も出ると思う。
ただ、明るさの中ふと訪れる心の揺らぎを感じさせるのもこの演奏の特色だ。

第2楽章も平易に綺麗。漆黒の闇を感じない。

第3楽章になると途端に雰囲気が変わる演奏も多いが
バレンボイムはそれを感じさせない。少し遅いテンポでデリケートな表情。

終楽章も歌を歌いながら力まずに進行する。
最後まで充実している曲であると感じさせる。

録音はベルリンのテルデック・スタジオ。
teldex.jpg
スタジオ特有の癖は感じさせず伸びのある音。近すぎず響きも美しい。

20:07  10:09  4:24  8:37   計 43:17
演奏   S   録音  96点

シューベルト ピアノ・ソナタ第21番D.960 ルプー(91)

2016.11.18 (Fri)
ルプー21
ルプー(94、DECCA)は流動の中の意志。
第1楽章提示部反復ありで40分を切る演奏。
平均的に全楽章のテンポが速い。
分かり易い意味深さを求める向きにはこのテンポはなじまないだろう。
しかし、私はあまりに深刻さを見せつる演奏はあざとさを感じてしまう。
そうした意味では好ましい。

ルプー(1945~)はルーマニア出身のピアニストで、
デビュー当時「千人に一人のリリシスト」というキャッチコピーが有名になった。
こういうコピーがつくといつまでも演奏を色眼鏡で見てしまう。
それがこのピアニストにとって良かったのかどうか?

この演奏を聴く限りこのコピーのようには感じない。
比較的淡々と弾きいざというときにはぎりぎりに叩きつける。
強すぎてはっと我にかえる瞬間がある。
もっとデリケートにやってほしい、とさえ思ってしまう。
リリシストという言葉ならツァハリアスのほうに当てはまる。

録音はスイス・レマン湖畔の街コルソーのSalle de Châtonneyreという
ホテルのホールでのセッション。
コルソー
スイス録音
それほど大きな会場ではなく室内楽などに利用されている。
標準的な音質は確保されているが、クリアーさがもう一歩という感じ。
折角風光明媚なところで録音しているのだからもっと爽やかな音がほしかった。
音のとらえ方はオン気味。DECCAのピアノ録音はこの傾向がある。

18:17  9:33  3:50  7:41   計 39:21
演奏   A   録音 90点

シューベルト ピアノ・ソナタ第21番D.960 ポリーニ(87)

2016.11.11 (Fri)
192021ポリーニ
ポリーニ(87、DG)は快速快適。
シューベルトの「晩年」というより31歳の凛々しい「青年」を感じる。
ロマンティックな要素を表面から削ぎ落し基本はポリーニのピアノの美学を聴く。
ポリーニ(1942~)ミラノ生まれの技巧派といわれた彼の転換期の時期の演奏。

第1楽章は呈示部の反復をしたうえで19分を切る。
アファナシエフのような意味深な間はとらない。
粒立ちは明晰でよくコントロールされている。強音でも濁らない。

第2楽章もテキパキ。

第3楽章・終楽章は一層明快。キレのいい音が快速で流れる。
弱っている人にはこの完全な音楽は強すぎるかもしれない。

録音はミュンヘンのヘラクレスザールでのセッション。
München, Herkules-Saal
響きは抑え込まれ、オンで音をしっかりとらえる。
それでも角が立つような音ではないのはこのホールのおかげ。

18:52  9:54  3:49  7:28   計  40:03
演奏  A    録音 90点

シューベルト ピアノ・ソナタ第21番D.960 レオンスカヤ(97)

2016.11.08 (Tue)
レオンスカヤシューベルト
レオンスカヤ(97、TELDEC)は例えると近所のおばちゃんとの会話。
平易で神経質ではなく、ただ時にややがさつ。
引きづりこまれれてすごく感動することもないが、緊張して疲れることもない。
もちろんテクニックは抜群。ただもう一つ何らかの感興を求めてしまう。
心に深く入ってくるとか、癒されて穏やかになるとか。
そうした意味ではこの演奏はどちらにも属さない。
瑕疵はないのだが特長も薄いという感じ。

レオンスカヤ(1945~)はジョージア共和国の首都トビリシ生まれ。
なお、ジョージアとは最近までグルジアと呼ばれていた南コーカサスの国。
map_georgia.jpg
トビリシ
1991年まではソ連内の一国だった。そのため彼女は1964から71年まで
モスクワ音楽院で学んだ。1978年以降はウィーンに定住し、リヒテルとの
二重奏などを盛んに行った。そういえばこのピアニストの音楽はリヒテルに
似たようなところもある。リヒテルのD960とテンポがそっくり。

録音はベルリンのテルデック・スタジオでのセッション。
くっきり近く力強い。スタジオ的で色付けはなく安定的な音。
不満はないが繊細さが出るとさらによし。

23:58  10:05  4:08  8:18   計 46:29
演奏   A-    録音  90点
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