クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Sym3 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第3番 メータ(80)

2016.11.12 (Sat)
メータ英雄
メータ/ニューヨークフィル(80、SONY)は低重心堂々。
オケの重量感が尋常でない。

意外なことにメータ(1936~)はベートーヴェンの交響曲全集を作っていない。
このコンビでは3、5、8、9番(と思われる)。
しかし彼のベートヴェンでは強烈な思い出がある。
2011.3.11の東日本大震災を受けて、4月10日東京文化会館での「第9」の熱演だ。
これには涙した。
彼自身この震災の日フィレンツェ歌劇場を率いて来日していたが急きょ帰国指示が出て
一度日本を離れた。その時、
「日本の友人たちのために何も演奏できず、去るのは悲しい」と涙しながら、
「音楽の力で人々を励ます場面が絶対に訪れると信じている」と危機的状況における
芸術の重要性を訴えた、という記事にこちらが感動した。
そして原発問題で外人が日本を去る中、すぐに日本に舞い戻りチャリティーコンサートを
敢行した(なんと、メータは同年5月に同趣旨のコンサートをドイツでも行っている)。
Mehta_2016111220425249f.jpg

メータというのはロスフィルを離れてから日本では評価が急落した。
私の中でもそうだった。
「メータのブルックナーを聴く方が悪い。知らなかったといってほしくない」とまで言う
評論家まで現れた。

確かにロスフィル時代のメータは抜群に面白かった。
録音も軽快・鮮烈だった。
その記憶を引きずると裏切られることになる。
しかし、まっさらな気持ちで接すると
それ以降も素晴らしい演奏が沢山あることに気づく。

メータはブーレーズの後継としてNYPの音楽監督を1978~91年務めた。
この間、CBS・ソニーはこのコンビでDECCA時代好評だった曲の再録音をしていった。
が、パンチのある前録音を越える評価は得られなかったと思う。

幸いにこの曲はロスフィルとの録音がない初録音。
当時ブラインドでこの演奏を聴いていたら絶対メータとは思わなかったはず。
というのはロスフィルの軽い音とは全く別の重厚な音楽だから。

とにかくニューヨークの特質のゴリッと太い低弦が効いている。
テンポは速くなく第1楽章のリピートを行うので全曲で52分以上。
決して気の抜けた演奏でなくここぞという場面でじっくりした表情を見せる。
弦の他ティンパニの打ち込みや金管の咆哮も豪快。
終楽章も圧倒する迫力で聴き終わって満足感があった。
勿論、ピリオド奏法とは無縁のロマン派型。
緻密で繊細というより、終始充実した響きが特筆。

録音はエイヴリー・フィッシャーホールでのデジタル・セッション。
左右に展開するも響きは多くない。
鮮烈ではないが十分にスケール感はある。

18:45  16:12  5:44  11:57  計 52:38
演奏  A   録音 90点

ベートーヴェン 交響曲第3番 セル(57)

2016.10.20 (Thu)
eroica-szell.jpgセル英雄
セル/クリーヴランド管弦楽団(57、SONY)は美しい筋肉。
冒頭の2発は鋭いインパクト。
そして終結まで一気に聴かせる引き締まった運びに魅了。

私がこの演奏に初めて接したのはCBSソニーの「音のカタログ」というLP。
70年代半ばこのレーベルの「ベスト・クラシックス100選」というシリーズの
サワリが聴ける販促物(@500円×2枚)。

そこに映画評論家の故・荻昌弘氏の
『名演は断片でも名演。私は1分23秒のセルの「英雄」に泣いた』
というような宣伝文句があった。
100枚のLPの中からわざわざ当時無名のこのLPを取り出して
シリーズ代表のように置いたこの意外性はパンチがあった。

なんといっても「英雄」ならフルトヴェングラーやカラヤンという時代だ。
また、このシリーズではワルターの「英雄」もフューチャーされており、
なぜセルの「英雄」が重なって投入されていたのかも謎といえば謎。

たぶんこの演奏に猛烈に惹かれていた制作側の人間がいて
意図的に潜り込ませて推したのだと思う。
その甲斐あって(?!)セルのベートーヴェンの中で一番有名ではないか。

(↓録音年の1957年 ザルツブルグでカラヤンとセル)
Herbert Von Karajan George Szell Salzburg 1957

果たして演奏は・・・。
最初から最後まで身の引き締まる音。
凝縮を伴いしなやかにしなり、一切停滞がない。
指揮者が唸りながら鞭打つ。極めて強固な意志が支配する。
ロマン的に肥大した演奏と一線を画し、
古典的にキリリとした造形がこの交響曲を実にかっこよくしている。

付け加えると、表面はクールなのだがそのすぐ下には
マグマが流れている。第2楽章では危うく噴出しそうになる。
そうした時を経るから、一気呵成の集結では鳥肌となる。

この演奏はミケランジェロのダビデ像を想起させる。
ミケランジェロ ダビデ

録音はセヴェランスホールでのセッション。
量感溢れるホールトーンはあるがこの演奏の持つ引き締まり感は損なわれていない。
モニターのような環境なら厳しいが通常の再生では
ステレオ初期のものながらリマスターもよく今でも十分聴ける。

14:46  15:34  5:33  11:27   計 47:20
演奏   S   録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第3番 オーマンディ(61)

2016.10.19 (Wed)
eroica-ormandy.jpg
オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(61、SONY)は奇を衒わない。

オーマンディ(1899~1985)はCBS時代の1961年から66年かけて
ベートーヴェン交響曲全集を録音。「英雄」はその第一弾。
同レーベルのスター指揮者バーンスタインがベト全を録音していたのが
61年から64年で「英雄」は最後の年だった。
また、セルは姉妹レーベル・エピックに57年から64年で全集録音し「英雄」が先発。
思えばすごい時代だった。アメリカの勢いを感じる。

オーマンディはその中で日本では不当な扱いをされてきた。
ポップス指揮者的イメージすらあった彼のベートーヴェンなんか
見向きもされなかったのではないか?
しかし、この頃この指揮者は頻繁にウィーンフィルに客演し
ベートーヴェンを振っている。本場では高い評価を受けていたのだ。

そしてこの演奏、先入観を捨てて聴いてみる。
ゴージャスといわれるフィラデルフィアもここでは極めて落ち着いた音。
音楽はまことにまっとうで癖がない。
各楽章がほぼ同タイムの翌年のカラヤン/BPOのほうが煌びやかだ。

とにかく最初から最後までオケをしっかり鳴らし、
「英雄」の物語性に距離を置きシンフォニックに仕上げている。
個性的ではないが不満もない。
唯一の特色は第3楽章の首席ホルンのメイソン・ジョーンズの柔らかな響き。
ums_photos.jpg

録音はフィラデルフィア・タウン・ホールでのセッション。
ホールの豊かな響きを感じる。SNを感じやや古さはあるが
左右の掛け合いや広がりは十分。当時の水準は達成。

14:46  16:59  5:46  12:18   計 49:49
演奏   A    録音  87点
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