クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Sym6 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第6番 クレツキ(65)

2016.10.17 (Mon)
クレツキ6
クレツキ/チェコフィル(65、Supraphon) は爽やか田舎。
パウル・クレツキ(1900~73)はポーランド生まれでベルリン・スイス・
イスラエル・アメリカなどで活躍したユダヤ系指揮者・作曲家。
アンセルメのあと67年にスイス・ロマンド管弦楽団常任指揮者と
なったが病のためそれも長く続かなかった。

私がクレツキを知ったのはステレオ最初期EMIにいれたシベリウスの交響曲で。
カラヤンの穴埋め的役割。演奏自体は質実剛健で華やかさを感じない内容で、
地味な指揮者のイメージ。その時は仕掛けのない演奏に物足りなさを感じたが
いま聴くと実に逞しい演奏だった。子供にはわからなかっただけ。
そうした意味では玄人受けの指揮者だったのかもしれない。
kletzki.jpg

そしてこのベートーヴェン。LP時代は全く話題にならなかったのではないか。
私もCD化されて初めて接した。虚飾を排した率直な歌。いいではないか。

この「田園」はチェコフィルが田舎のしみじみとした音を出していて懐かしくなる。
全編無理のないテンポでどこにも違和感がない。
恣意的な部分はなく、オケを整理してすっきり聴かせる。
そのため当時の洗練されないチェコ・フィルの音が聞き取れる。
青々した弦、背筋の伸びた管。実に気持ちいい。

録音はプラハ・ルドルフィヌムでのセッション。
聴衆がいないととかく響きすぎる会場だが、この録音は非常に明快。
直接音をしっかり録っており弦の音など生々しい。
ただし、アナログテープ経年と思われるヨレが感じられるところがある。

12:00  12:38  5:51  4:01  9:14   計 43:44
演奏   A    録音  86点

ベートーヴェン 交響曲第6番 ラトル(2002)

2016.10.16 (Sun)
ラトル46VPO
ラトル/ウィーンフィル(2002、EMI)は意欲作。
ラトル(1955~)はバーミンガム時代にベートーヴェンの全集を残していないが、
2002年にウィーンフィル、2015年にベルリンフィルと全集をつくった。
世界のトップ2といわれるオケと全集を正規に作ったのはラトルだけ。
(失礼しました。ご指摘いただきました。先輩アバドさんがいましたね)
それぞれ評判はいいと思う。

本盤は、ベーレンライター版ということだけでまだ話題になる時代のもの。
最初聴いたときは新鮮でなかなか面白いと思った。
版の問題というよりも指揮者の表現意欲に溢れている。
ウィーンフィルもさすがにいい音。
プルトを絞った弦はピリオド的な奏法なのでいつも音とは違うが。

いろんなアイデアを盛り込んでいる。
が、まだ消化しきれてない印象。

ギーレン盤のように一本ビシッと筋が通っている演奏とも、
ブロムシュテット盤のように自然体の心地よさとも違う。
ましてやワルター盤の酸いも甘いも脱した演奏とも違う。

こうした過去の名盤と比較すると、たとえば終楽章の気持ちの
こもった祈りがちょっとわざとらしく感じてしまう。
2015年のベルリン盤は表面的な刺激が少なくなっている。
ラトルは英国に戻ったこれから、と期待する。

録音はムジークフェライン大ホールでのライブ。
客席ノイズはほとんどなくこのホールの豊かな響きが感じられる。
EMIだからと期待していなかったが思った以上に普通の音。

12:36  12:20  5:24  4:00  10:20   計 44:40
演奏   A    録音  92点

ベートーヴェン 交響曲第6番 ブロムシュテット(77)

2016.10.15 (Sat)
ブロムシュテット6
ブロムシュテット/ドレスデン・シュターツカペレ(77、Deutsche Schallplatten)は
多く語る必要なし。最初の数秒聴いただけでこれはいいとわかる。
音楽の流れ、オケの音色が素晴らしく惚れ惚れ。

肩の力を抜き、自我を出さず、オケに任せたら凄い名演になってしまった
と言ったら指揮者に失礼だろうか。
手練手管を尽くした他の演奏の苦労を水泡と帰してしまう無為。
いや、この指揮者の品格、センスが滲んでいるというべきなのだろう。

とにかく何も気にせず身を任して大丈夫という安心感。
案外、演奏・音色・録音とここまで揃った盤はないのではないか。

自然で澱まないテンポ、爽やかな呼吸。清涼な空気。
オケの音色ははっきり言ってベルリンフィルよりこの曲に相応しく綺麗。
この時のSKDは名手揃い。また弦の音が実にいい。

小細工は全くなく、指揮者の存在も消え去り音楽が入る。
個々の楽章に言及する気も湧かない、一貫性と説得力。
聴いた後のなんとも言えない心地よさ。
これぞ「田園」だ。
Claude-Lorrain-Pastoral.jpg

録音は聖ルカ教会のアナログセッション。
ヒスはなく実によく伸びた透明な音。夢見るような美しさ。
今はなき東ドイツのシャルプラッテン・レーベルの
この教会での録音はほんとに素晴らしい。
これを聴くと西側のほうが進んでいた、などと言えないことがわかる。
Lukaskirche.jpg

9:31  12:40  5:44  3:42  9:51   計 41:28
演奏   S    録音  94点

ベートーヴェン 交響曲第6番 バレンボイム(99)

2016.10.14 (Fri)
バレンボイム6
バレンボイム/ベルリン・シュターツカペレ(99、TELDEC)は壮麗な情感。
最初から最後まで思いが詰まっている。フルオケでたっぷり鳴らす。
音を重ねて濃厚にやっているかと思いきや案外見通しは良い。
細部は透けている。対抗配置で弦の掛け合いはよく聞こえる。
しかし、表情は全編ぽってり。

第1楽章フレーズごとに情感を盛り上げ場合によっては溜めて見せたり。
このオケの木質の響きがゆったりしたテンポの中で清らかに響く。
古楽器オケと違い音は短く切られずしっかり伸ばされる。
それが何か余韻を惜しむよう。

第2楽章は前楽章を引き継ぐ。たおやかな時が流れる。

第3楽章も余裕。リズムは軽くなくトロリとした運び。
少しこのテヌート感に抵抗はある。

第4楽章「嵐」は見せつけてくれる。堂々。
結構細かい表情がついていて遠のく雷鳴など面白い。

終楽章は鳴りがいい。あわてず騒がず。
と思いきや終結にかけて感情の昂ぶりを示すようにテンポを微妙に動かす。
フルヴェンが少し顔を覗かす?

録音はベルリンのドイツ放送第1スタジオでのセッション。
GDRベルリン放送局ホール
ここは広い空間が確保されていると見え響きはすっと伸びている。
コンサートホールや教会とも違うがすっきりしたきれいな音。
響きが多いからか少しハイ上がりで弦が硬質になるの感じはある。
弦の前のマイクはオンでその他楽器もオフではなく明瞭。

13:11  12:05  5:30  4:03  9:49   計 44:38
演奏   A     録音 93点

ベートーヴェン 交響曲第6番 ジンマン(98)

2016.10.13 (Thu)
ジンマン56
ジンマン/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団(98、ARTE NOVA)は愉悦感。
ディベルティメントのよう。

“モダン楽器によるベーレンライター原典版世界初録音”という謳い文句の全集で
注目を集めたが後から実はベーレンライター版準拠といえるものでないこと、
独自の装飾音などはジンマンのアイデアということが分かり評価が迷走。

確かに第1楽章第2主題のトリルなど、ベートーヴェンは一音たりとも変えてはならぬ
という信念を持っていると許しがたい。
全体にあまりに軽くスイスイ行くので威厳が無くて3大Bとして如何なものかとも。

しかし、そんなことを頭で考えるよりも、この演奏を初めて聴いた時の
ワクワク感が忘れられない。

ピリオド奏法とかいうよりもジンマンの音楽づくりが既成概念を打ち破るものだった。
編成を刈り込み、きらきら透明な音で紡ぐ「田園」。
ピリオド楽器よりもスッとしているので清涼感がある。
そしてリズムがなんといってもよい。アンダンテの第2楽章ですら前進性を感じる。
軽やかにステップ、実に愉しい。

第3楽章は一層躍動する。潔いアクセントが爽やか。
管の相槌も聴いたことのない効果。

第4楽章の嵐ですら明るい。

終楽章はチャーミング。軽すぎるといわれればそれまで。
しんみり感はないのだが最初から最後まで筋は通っている。
大上段な幸福というより、市井の人々のちょっとしたした喜び、
という雰囲気。

録音はチューリッヒ・トーンハレでのセッション。
素晴らしいホールで小編成オケをうまく録った優秀録音。
むき出しの音でなくヴェールをかぶっているが雰囲気はよい。
トーンハレ

10:21  12:01  4:49  3:37  9:08   計  39:56
演奏  A+    録音  93点
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