クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Sym6 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第6番 カイルベルト(60)

2017.12.14 (Thu)
カイルベルト指揮バンベルク
カイルベルト/バンベルグ交響楽団(60、TELDEC)は
とぼとぼ散歩での各種遭遇。
農家だったり祭りに紛れ込んだり花火を観たり休んだり。

この演奏、一聴地味、しかし実はおもろい!
最初スピーカーで聴いていた時はいい感じの田舎の「田園」だったが、
ヘッドフォンで聞き返したら驚いた。
これは多分録音の妙。実演では絶対こうは聴こえない。

各パーツが分離して四方八方から聴こえる。融合していない。立体的。
ステレオ初期はその効果を明確にすべく左右を分離させたような録音が
多く存在した。これもその一種だと思うが凄いのは左右のみならず奥行きもくっきり。
だから弦楽セクションの各位置がはっきり。
第一、第二、ヴィオラ、チェロ後ろにコントラバス。
各グループが見えるよう。
Bamberger Symphoniker
しかもサブのパートである低弦が等価値以上で鳴るのでバランスが変。
常に右側からズンズン・ザクザク、ブーーー。
奥の管もしっかり清らかに真近でピックアップされる。
そして響きが洗練されていない。素朴な音。

第3楽章はあちこちから音が飛び交うドイツのクリスマス・マーケットを彷徨う心象。
Christmas20fair20in20Germany.jpg
第4楽章の特徴的なティンパニ、というか太鼓の音は花火。
Christmas-Market-Zagreb.jpg
終楽章はピロピロの管の音は祭の名残り。お茶目でユーモラス。
結構あちこち騒がしいが滋味に溢れた音がよい。

録音場所は不明のセッション。どこかの教会だろうか。
ドイツの名指揮者カイルベルト(1908~68)はドイツのいくつかのオケで
ベートーヴェンを入れているがこれが一番録音が明快な気がする。
響きは綺麗で混濁はない(併録の「運命」はつぶれアリ。)
とにかくくっきり分離している。

9:34  11:56  5:32  4:14  9:05   計 40:21
演奏   離A    録音  87点

ベートーヴェン 交響曲第6番 マリナー(85)

2017.12.13 (Wed)
マリナー6
マリナー/アカデミー室内管弦楽団(85、Philips)は意志の気配のない風景。
心にさりげなく入り込み癒す。ある意味、非常に不思議な感覚を持った演奏だ。

これを聴いているとき同じコンビで録音した
ヴォーン・ウィリアムズの「タリスの幻想曲」を思い出した。
要はそんな感じの音楽に仕上がっているのだ。

全編決して角を立てずスゥーーーーと流れる。
音は薄いヴェールで包まれ力は削がれる。
記憶の中でぼんやりと浮かぶ草原。剥き出しにならず朦朧とする。
心象風景
昔ながらの「精神主義」の立場からするとこれは単なるBGMとなろう。
しかし気持ちがよいというだけで説明がつかない聴後の至福感。
ベートーヴェンの音楽が潜在意識に働きかける不思議な作用を知らしめる。

「運命」で闘争的な意志の世界を描いた作曲者が同時期にこの曲を創った。
その意味を改めて考えさせられる。
終楽章の抑制された密やかでひんやりした音は火照った感情を鎮める。
これが正統派のベートーヴェンかといわれると自信がないが、
心に痛手を負った人には何よりのギフト。

録音はウォルサムストゥ・アセンブリー・ホールでのセッション。
フィリップスらしいシルキートーン。響きが多くソフトフォーカス。
カチッとした感じでなく丘陵地帯のようなムード。音の減衰はなだらか。

11:47  13:46  5:51  3:52  10:04   計 45:20
演奏   癒    録音  91点

ベートーヴェン 交響曲第6番 ネルソン(2005)

2017.12.11 (Mon)
John Nelson 56
ネルソン/パリ室内管弦楽団(2005、naive)はパキっとお洒落。
全く予備知識なくジャケ買いしたこの全集は結構気に入っている。

ジャン=ピエール・ヴァレーズが1978年に創設した約40名ほどのフランスの
「アンサンブル・オルケストラル・ドゥ・パリ(パリ室内管弦楽団)」がとにかくお洒落。
ENSEMBLE_ORCHESTRAL_PARIS_0011.jpg
モダン楽団なのだが、アカデミーやオルフェウスなどとは全く違う感触。
流麗というよりさりげない大げさでない小気味よい響き。
勿論これには指揮者ネルソンのセンスの反映もあろう。

全般的に速めのテンポで前進性がある。両翼配置で掛け合いが明快。
音はざくっとさっぱりしているが、どぎついアクセントや表情はない。
これ見よがしに変わっているでしょ、という風ではない。
オケの編成が小さい分、管が埋もれないのでメリハリはある。
これがフランスのセンスなんです、といわれると
なるほどそうか、と思ってしまう。
ENSEMBLE_ORCHESTRAL_PARIS_0014.jpg

録音はパリのL'Espace de projectionでのセッション。
01-espro.jpg
ここは現代建築ポンピドー・センターの中にあるスタジオ的ホール。
決して大きくない箱のため響きも多くない。
程よい鮮度で刺激もほどほどで案外温もりのある音。

10:46  11:42   4:54   3:41   9:51  計 40:54
演奏   A+    録音  93点

ベートーヴェン 交響曲第6番 ボールト(77)

2017.12.10 (Sun)
beethoven-symphony-no-6-mozart-symphony-no-35-adrian-boult-lpo-1-cd-emi.jpg
ボールト/ロンドンフィル(77、EMI)は淡い光の中の幸福。

これといった特徴はない。
だけど聴いているとき、聴き終わったあとにじんわり。
演奏が前面でなく曲の良さが伝わる。
どこにも指揮者の自我を感じさせない。
ピリオドを忘れる。
両翼配置にしているがその強調があるわけでもない。

ボールト(1889~1983)は英国生まれ、ライプチッヒ音楽院で学んだ。
ドイツ物が得意なはずだがベートーヴェンの交響曲録音は全集には
至っていないのではないか。
その中で数少ないステレオで残されたこの「田園」、ボールトにぴったり。

この録音時もう90歳手前だが全く弛緩がないのがまず素晴らしい。
とにかく流れがよい。
そして洒落ているのが終楽章。
ここは感動を演出するためにテンポを遅くしたりする演奏もあるが、
むしろボールトは逆。
少し速いテンポでそれとなく心の高揚を表す。

全体の響きはどこにも強引さがない。
低域からしっかりしたフルオーケストラの落ち着いた響きに浸れる。
それぞれのパッセージが自然に受け継がれていく。
ターナーの絵画を思い起こさせる。
ターナー

録音はアビーロードスタジオでのセッション。
最初聴いているときこの場所とは思わなかった。実に透明で伸びとスケールがある。
平板なアビーロード臭が感じられない。
なんだ!ここでこんな素晴らしい録音ができるのか?驚きの一枚。
当方保有盤は2012年リマスターの11枚組セット(「ボールト バッハからワーグナー」)。

12:33   11:20  5:28  3:50  8:57   計  42:08
演奏   S    録音  91点

ベートーヴェン 交響曲第6番 クレツキ(65)

2016.10.17 (Mon)
クレツキ6
クレツキ/チェコフィル(65、Supraphon) は爽やか田舎。
パウル・クレツキ(1900~73)はポーランド生まれでベルリン・スイス・
イスラエル・アメリカなどで活躍したユダヤ系指揮者・作曲家。
アンセルメのあと67年にスイス・ロマンド管弦楽団常任指揮者と
なったが病のためそれも長く続かなかった。

私がクレツキを知ったのはステレオ最初期EMIにいれたシベリウスの交響曲で。
カラヤンの穴埋め的役割。演奏自体は質実剛健で華やかさを感じない内容で、
地味な指揮者のイメージ。その時は仕掛けのない演奏に物足りなさを感じたが
いま聴くと実に逞しい演奏だった。子供にはわからなかっただけ。
そうした意味では玄人受けの指揮者だったのかもしれない。
kletzki.jpg

そしてこのベートーヴェン。LP時代は全く話題にならなかったのではないか。
私もCD化されて初めて接した。虚飾を排した率直な歌。いいではないか。

この「田園」はチェコフィルが田舎のしみじみとした音を出していて懐かしくなる。
全編無理のないテンポでどこにも違和感がない。
恣意的な部分はなく、オケを整理してすっきり聴かせる。
そのため当時の洗練されないチェコ・フィルの音が聞き取れる。
青々した弦、背筋の伸びた管。実に気持ちいい。

録音はプラハ・ルドルフィヌムでのセッション。
聴衆がいないととかく響きすぎる会場だが、この録音は非常に明快。
直接音をしっかり録っており弦の音など生々しい。
ただし、アナログテープ経年と思われるヨレが感じられるところがある。

12:00  12:38  5:51  4:01  9:14   計 43:44
演奏   A    録音  86点
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