クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Mozart Sym41 の記事一覧

モーツァルト 交響曲第41番 ホグウッド(82)

2017.03.24 (Fri)
hogwood4140.jpg
ホグウッド/エンシェント室内管弦楽団(82、L'OISEAU-LYRE)は端正。
20世紀ロマン的威容を誇る「ジュピター」とは無縁。
ホグウッド(1941~2014)の壮年期の記録。
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冒頭の出だしから全く力みがなく、ある意味淡々と進む。
終曲までこの調子だ。現在までのピリオド群の中では興奮とは離れたところにある。
テンポは遅くも速くもなく、インテンポ。まさに彼らのモーツァルト。
聴いた後に強烈な感動はないが爽やか。
この曲でここまで純水的な演奏もないかもしれない。
一方では刺戟が少なく退屈ともいえる。

しかしクリスタルな響きでこの曲にこれほどの美しさがあったのだと気づく場面もある。
フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、
ヴァイオリン2部14(第Ⅰ8、第Ⅱ6)、ヴィオラ4、チェロ2、コントラバス2の弦楽部は
現代オケの半分。この少人数の有利さをそのまま生かしている。

なお、このコンビが2001年に東京で演奏した際はもっとアグレッシブな表現で
テンポも速かった。しかし、この録音の頃は古楽器演奏の黎明期。
何か演奏上の特徴を打ち出さなければならないという観念はなかった。

録音はロンドンのキングスウェイホールでのデジタル・セッション。
recording-in-the-80s.jpg
編成が小さいため窮屈感はなく澄んだ音で録れている。
低域成分は多くなくスリムだがうるさいことはない。

11:01  9:14  5:54  11:50   計 37:59
演奏   A    録音 91点

ドヴォルザーク 交響曲第6番 コシュラー(1977)

2016.04.18 (Mon)
コシュラー全集
コシュラー/スロヴァキアフィル(77、OPUS)は爽やか癒し系。
パストラルな演奏。

コシュラー(1928~95)はドヴォルザークの交響曲全集を残しているが
派手さのない音楽作りのためノイマンなどに比べると目立たない存在。
しかしこの第6番などはぴったり。
Zdeněk-Košler-1928-1995-

第1楽章は草原に吹く風、サラサラ流れる白い雲を想起。
第2楽章も実にやさしいそよ風のような音楽。物思いにふける。
第3楽章は激しさはほどほど。ここでも軽やかサラリ。
終楽章も力みがない。最後だから盛り上げてしめようという
作為は全くない。どこまでも軽やかにステップ。

録音はスロヴァキア・フィルハーモニーホール「レドゥタ」でのセッション。
温かさを持った録音で鮮度はほどほどながら伸びはよく心地よい。
ティンパニなど楽器のフォーカスは甘い。
ソフト&シルキートーン。
チェコのスプラフォンに対してスロヴァキアのオーパスだが
音の傾向は似ている。響きの多いホールを使っていることもある。
このホールは1773年建造のバロック様式で石造りなのでよく響く。
スロヴァキアpohall

12:52  10:56  6:55  10:34   計 41:17
演奏   A    録音 88点

モーツァルト 交響曲第41番 スウィトナー(73)

2012.08.21 (Tue)
スウィトナー4041
スウィトナー/シュターツカペレ・ドレスデン(73、DS)はなにもかも高次元。

録音は聖ルカ教会の豊かな響きで美しい。
もちろん70年代のアナログ録音なのでDレンジや分離はそこそこだが、
この曲では不満にならない。

第1楽章を今聴くと何か懐かしい。速めのテンポで颯爽と進む。
古楽器のようなとげとげしさはなく、豊かな響きは安心感をもたらす。
オケの音色も素敵。

第2楽章も美しい。シルクの弦と木管の織りなす綾が何とも言えない。

第3楽章は古典的均整とはこのようなものだということを知らしめる。

終楽章はこのオケの合奏能力の高さを見せつけられる。
速いテンポで人数も相当数いるのに、整然とした凄い疾走。
決して力づくでない端正なままの疾走。
そして、知性の枠を一歩越えたより積極的な躍動感。
ティンパニのリズムも抜群。

何事もないかのような演奏をやってのけているが、
これは恐ろしく次元が高い演奏。

7:41  8:11  4:11  8:05  計 28:08
演奏  A+   録音 87点

モーツァルト 交響曲第41番 フェルツ(2005)

2012.08.20 (Mon)
フェルツ41
フェルツ/シュトットガルトフィル(05、Dreyer)は企画・演奏が面白い。
まず、このアルバムのカップリング。
 1曲目がR・シュトラウスの「ツァラトゥストラ」
 2曲目がリゲティの「アトモスフェール」
 3曲目が「ジュピター」!
前2曲なら「2001年宇宙の旅」だが、この映画では木星(ジュピター)探査は
ミッションとして登場するが、モーツァルトの音楽はでてこないはず…。
(フェルツ自身のコメントには映画を意識している風の話は出てこない)

また、曲に合わせて編成と使用楽器、さらには録音方針まで変えている。

次に演奏だが、20世紀の曲(名演)は極めてロマンティックに鳴っているのに対して、
モーツァルトは爽やかで先鋭。モーツァルトの革新性、現代性が浮き彫りになる。

私はこの若い指揮者の「アルプス交響曲」(02年録音)で注目したが、
このアルバムを聴いてますます興味を持った。
単に奇策を弄するのでなく、音楽自体が主張を持ったしっかりしたものだからだ。
この1971年生まれの若いドイツの指揮者から目が離せない。

録音はグスタフ・シーゲルハウス(またはStiftskirche Stuttgart)での
セッション。このアルバムは通常のCDのほかにデジタルdtsサラウンドの
ボーナスCDがついているほど音響にこだわっているようだが、
通常のCDで聴く限りいじくりまわしておらずまっとうな音。

第1楽章はリゲティの曲が静謐の中に終焉を迎えた後、突然始まる。
これはなんともショッキングな開始だ。
何事もなかったかのように軽快な運動を見せる。
オケを絞り込みピリオド奏法で、変な力みがない。
インテンポで10分そこそことリピートありの演奏としては最速クラス。
音量の上下は意識的に行われる。

第2楽章もそそくさと進むが念を押すようなアクセントが面白い。

第3楽章は自然体。

終楽章も重厚さはなく疾走する。リピートせずに一気に終結に向かう。
若武者のように突き進むが、オケはしっかりコントロールされ粗っぽくない。
知性と曲者ぶりを見せつける。
ひょっとしたら、この指揮者は今後マゼールのような
鬼才ぶりをどんどん発揮するかもしれない。
彼の挑戦に期待したい。

10:10  6:55  4:20  5:55   計 27:20
演奏  挑A   録音 91点

モーチァルト 交響曲第41番 ノリントン(90)

2012.08.18 (Sat)
ノリントン38-41
ノリントン/ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ(90、Virgin)は
この指揮者らしい明るく元気。
古楽器とその奏法による独自の演奏の可能性を追求したような開拓者魂がある。
肥大化した演奏様式へのアンチテーゼとして十字軍的役割。
今となってはこれも時代の産物かもしれない。
日本は録音当時バブルの真っ最中。
しかしこの演奏を聴いていると、その後の世界の価値観の大変化、多様性の出現、
そうした世相を先読みしているように思える。

録音はアビーロード第一スタジオでのセッション。
こじんまりしたこの音響はこの演奏方向と合致。
ヌケや響きの純度はヴァージンレーベルなので不満は残る。

第1楽章は打楽器のシカと打たれるアクセントをベースに進む。
キレのいいリズムは気持ち良く、大オーケストラによる演奏とは違う爽快感。
壮大さはなく、ラモーあたりの舞曲を聴いているような錯覚。

第2楽章も速めのテンポで前進する力を持つ。
但し、この楽章の憂鬱な側面はさっぱり削ぎ落されている。

第3楽章はまた非常に元気な音楽。音を割らんばかりのホルンには驚く。
全奏時の音の濁りは残念。

終楽章は相変わらずアクセントが激しい。
デモーニッシュな迫力という点ではブリュッヘンに譲るが
ティンパニの強打をベースとした力強さ凄い。
筋骨を駆使した首尾一貫した音楽。
但し、ジュピター主題の重層的展開という面では、もうひとつ。
近代オケの名演では高みを目指して音楽が広大に拡がる演奏もあるが、
これはもっと凝縮した一途の音楽。
これはこれで満足。

11:07  8:28  5:14  11:48  計 36:37
演奏   A打   録音 88点
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