クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Varèse Amériques の記事一覧

ヴァレーズ アメリカ メッツマッハー(2007)

2016.07.17 (Sun)
ヴァレーズメッツマッハー
メッツマッハー/ベルリン・ドイツ交響楽団(2007、CHALLENGE CLASSICS)は
初稿復刻版(2005年)使用。職人的捌き。

インゴ・メッツマッハー(1957~)が2007~10年このオケの芸術監督だった時の録音。
2013~15年の新日本フィルの常任の最後に
この曲や「アルカナ」(なんと日本初演)をやっている。
20世紀音楽のエキスパートで「新しい音を恐れるな~ 現代音楽、複数の肖像」
という著述をなしている。
キャリアのスタート時にミヒャエル・ギーレンに師事しているから筋金入りだ。

さて、演奏だが、
無用な感情移入をせずドラマを持ちこまず極めて整理された音響。
初稿版ならではの異様な打楽器等は殆ど強調されない。
また、ダイナミクスも大きいと言えずくある種淡々と行く。
管理はしっかりされているが肩の力が抜けているというべきかもしれない。
「春の祭典」が一昔前熱血的に演奏されていたが、
今はスイスイ演奏が多くなったのと同じことを感じる。
ブーレーズの新盤のような弛緩はないが、
個人的には、どうせやるならもっとダイナミックなのが好み。

なお、こCDのメインはR・シュトラウスの「英雄の生涯」(終結が静かな初稿版)。
ヴァレーズは若いころにR・シュトラウスと接点があり管弦楽法を学んでいるので
このカップリングになったのかもしれない。
R・シュトラウスの方も力みがなく、スッキリ美しい演奏だ。
R・シュトラウス⇒ヴァレーズと聴いても案外違和感を覚えない演奏。
それがこの指揮者の狙いかも知れない。

そういえば、先述の新日本フィルとのラストコンサートは
①ティル → ②アメリカ <休憩> ③アルカナ → ④死と変容
とヴァレーズをR・シュトラウスで挟んでいた。

(↓パウル・ザッハー財団のヴァレーズ資料集の表紙がカッコいい)
vareseイメージ

録音はベルリンのフィルハーモニーで、ライブっぽい気もするが
書いてないのでゲネプロかセッションか。
ドイツ文化放送の収録らしく素直な音。
空間の広さと一定の距離を感じさせ刺激音は少ない。
低域の量感は適度に止まる。

25:12
演奏   A    録音 93点

ヴァレーズ アメリカ リンドン=ジ-(2005)

2016.07.16 (Sat)
ヴァレーズリンドンギー
リンドン=ジー/ポーランド国立放送交響楽団(2005、NAXOS)はスタイリッシュな原典版。
シャイー盤で復活した1921年初演版を2005年にヴァレーズ直系作曲家の周分中が
再度手を加えた版による演奏。いずれにせよ奏者155人を要するもの。
ナクソスがこのコストのかかる版を録音した英断に敬意。

初演版は楽器が沢山鳴り、バンダによる遠近法など面白いのだが、
中間部にあてもなく彷徨い拡散の印象を与える面もある。
改訂版の方が凝縮されており緊張感が持続するともいえる。

さて、リンドン=ジーの指揮だが実にうまくオケをコントロールしており引き締まった演奏。
Christopher-Lyndon-Gee.jpg
シャイー盤が独自の空間音響ならば、こちらは直截に切り込む金属の音響。
明快な響きは力強い。先述の初演版の拡散もあまり感じさせない。
終結は細身だがクラリネットの絶叫が鳴り続け阿鼻叫喚の世界となる。

ポーランドのこのオケに不足はないばかりかパワー漲る音を放出している。

録音はポーランド、ガトヴィッツのGrzegorz Fitelberg Concert Hallでのセッション。
Katowice-Konzertsaal-Ph-Sammy-Hart.jpg
このオケの本拠地。広さを感じる。
シャイー盤よりも先鋭な音で優秀録音。ナクソスの録音は本当によくなった。

23:55
演奏    A+     録音 94点

ヴァレーズ アメリカ シャイー(96)

2016.07.15 (Fri)
chailly_varese.jpg
シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(96、DECCA)の
初稿版初録音は驚異の空間芸術。

《アメリカ》(Amériques)は、1918年~21年にかけて作曲され26年に
ストコフスキー/フィラデルフィア管弦楽団で初演された。
この時155人以上の奏者を必要とした。
木管各4、ホルン8、トランペット6、トロンボーン4、チューバ3、
拡大弦楽5部にハープ2台。更に別途バンダ。
打楽器はティンパニ2組、バスドラム2、スネア・ドラム、シンバル、シロフォン、
グロッケンシュピール、トライアングル、タンブリン、ゴング、カスタネット、
鞭、ラチェット(歯車音)、鈴群、ライオンズローア、サイレン、ホイッスル、
ウインドマシーン、チェレスタ、クロウ・コールを15人程度の打楽器奏者で割り振る。
(↓ライオンズローア:太鼓の皮に紐を結び擦ってライオンの唸り音を出す)
ラアイオンズローア
(↓クロウコール:これを吹いてカラスを呼び駆除する。もはや楽器なのか?)
クローコール
さすがのストコフスキーもこれはでかすぎると作曲家に注文をつけ、
ヴァレーズは1927年素材と楽器を圧縮しバンダを除いた改訂版を作った。
これでも5管編成と多彩な打楽器群は健在。これが従来の聴いてきた「アメリカ」。
ヴァレーズを尊敬する直弟子の周文中による改訂版の決定稿が出版された(1973年)。

しかし、DECCAのプロデューサー、アンドリュー・コーナルは初稿版の復活を目論み
周を口説き落とし、ヴァレーズの手稿から1921年初演版を再構成させた。
その記念すべき記録が本盤だ。
周はこの後1998年に初稿版を出版し2005年に更に改訂している。

さて、この演奏、原典版ということに加えコンセルトヘボウ収録である
ことも相まって今までの「アメリカ」とは印象が相当異なる。

冒頭のアルト・フルートの後に叫びをあげる金管が”バンダ”となる効果は絶妙。
そこに改訂版では聞かれないクロウ・コール(カラス音)やライオンズ・ローアの淋しげな声。
広大な空間に飛び交う音に幻惑。浮遊感の中にブラスの俊立音。
今までとは違う宙の彷徨が続く。ホールとオケが一体となって鳴る。
シャイーが時にそれをギュッと締めるので緊張感が維持される。

後半になるとスピードを上げバーバリスティックな迫力を増す。熱気が滾る。
特に最後の4分間は、バスドラによる空爆を受けつつ小銃の雨降る中、
ムチで叩かれ、ヤカンで頭突きを食らわされ逃げ惑う。
やはり、シャイーは演出巧者だ。
Chailly-Riccardo-09[Hiroyuki-Ito]

録音はコンセルトヘボウ大ホールでのセッション。
現代音楽にこのまろやかなホールはいかがかと思ったが
この曲では見事な効果。前例のない巨大なスケールを表出するとともに、
鋭角音も見事にブレンドする技を見せる。流石DECCA。
低域の迫力、レンジの広さ、言うことない。再生が難しい。

24:38
演奏   S   録音  97点

ヴァレーズ アメリカ ブーレーズ(95)

2016.07.14 (Thu)
ヴァレーズブーレーズシカゴ
ブーレーズ/シカゴ交響楽団(95、DG)は円熟の蹉跌を思う。

ブーレーズの再録音。しかもシカゴ響との演奏となれば期待は高まる。
しかし…。

75年盤と20年後の本盤。
録音のDレンジは明らかに20年後のデジタル録音であるこちらの方が優秀。
しかし演奏が違う。
打楽器の打ち込み、金管の起立、弦の張力…みんな緩い。
テンポは保有盤最長で音響、演奏時間両方で弛緩している。

これはブーレーズの「円熟」なのか?
丸みを帯びた表現で疲れなくて済むのだが、
この曲を聴くときはおおよそ覚悟はできている。

厳しい表現があるからこそ、その合間のリリシズムが生きる。
この演奏はその欠落を痛切に感じさせる。

終結の大音響の連続も追い立てないので
確かに色んな楽器が聴こえる。
しかしそのことと音楽の目指すものとは一致していない。

あまりにも75年盤を好き過ぎた故の反動かもしれない。
ピエール・ブーレーズ(1925~2016)のコロムビア時代とDG時代の演奏の
変遷はよく言われるが、この曲では残念な方になったと言わざるを得ない。
(↓1975年のブーレーズ)
Pierre-Boulez-1975_20160710194749c43.jpg
(↓1994年のブーレーズ)
1994_20160710194810011.jpg

録音はシカゴのオーケストラホールでのセッション。
量感十分なのだが、鮮明さは今一歩。
もう一皮剥けたおとを期待していた。これは演奏の責任かもしれない。

25:12
演奏   A-    録音  92点

ヴァレーズ アメリカ ドホナーニ(93)

2016.07.13 (Wed)
ヴァレーズドホナーニ
ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団(93、DECCA)はニヒルな高機能爆発。
単にクールというレベルではない。
無表情で平気で人を打ん殴るような演奏。
こりゃいかんだろう。道徳的に問題あり。R指定が必要。

精緻な演奏なのだが、整然とし過ぎている攻撃性が恐い。
テンポは前傾し21分台。
ティンパニほかパーカッション群の硬質さ、
ブラスのみならず木管のパルスの強さではピカイチ。
この曲に潜む抒情を無視しひたすら突き進む。
ある意味一面的な演奏なのだが、徹底している。
これは恐い。
「騒音音楽」といった長閑さはなく、スネアドラム・シンバルは畳み掛ける。
18分以降の容赦のなさはどの演奏もかなわない。
金属杭が何度も何度も打ち込まれる。これでもかこれでもか。
ドホナーニがターミネーターに思えた。
ヴァレーズターミネーター

なお、このディスク、この曲のあと
アイヴスの交響曲第4番、「答えのない質問」と続く面白さ。
最後に癒しが待っているが、そこまで辿り着けるか?

録音はセヴェランスホールでのセッション。
この大編成をDECCAは平然と捉えている。
こけおどしの音はなくこの演奏からすればもっとド派手な収録をすれば
更に恐怖は増したと思う。マッシブな迫力はある。   

21:41
演奏   徹A   録音  94点
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