クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Tchaikovsky Sym1 の記事一覧

チャイコフスキー 交響曲第1番 プレトニョフ(95)

2016.03.23 (Wed)
プレトニョフ全集
プレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団(95、DG)は独自の耽美演出。
47分半の演奏時間は保有盤最長。2011年の再録より長い。
他の交響曲はこれほど遅さが際立っていないので、この第1番のみの特徴。
そして聴こえてくるのは今まで聴いたことのない抒情の世界。
しかし、作曲家20代半ばの若書き交響曲の本来的姿と言えるかは疑問。

第1楽章は遅いテンポでそっとを音を置いていく。
主部に入ると表情を変え金管の輝かしさが春の訪れを感じさせる。
音を潜める部分と張り出す部分の対比の大きさが独特な表情をもたらす。
凭れる寸前のテンポの場面もあり、この曲の若さゆえの突入感が薄まっている。

第2楽章も繊細の極み。優しく丁寧な進行。各楽器の音の出し方がとてもソフト。
後半ホルンとともに胸の高鳴りを伝えるが
その後の弦の包み込む羽毛のような音色にはゾクゾク。

第3楽章はリズムよりも横の流れを重視した音楽。弦がまとわりつく様な際どさ。

終楽章は4分間の長い序奏を得て主部に突入。それでもむちゃくちゃな感興を出さない。
10分過ぎてようやくフィナーレが開始されるが、弦は豊かなヴィヴラートを駆使して
歌いながら盛り上がる。独特だ。
最後は加速することもなくピロピロと不思議なお気楽気分を炸裂させながら幕。
不思議ワールド。

録音はモスクワ・音楽院大ホールでのセッション。
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響きの多めのホールだが混濁を免れ各楽器の粒立ちがいい。
弦なども人数が多くないように感じるほど一本一本聴こえる。

13:32  11:57  8:29  13:35   計 47:33
演奏   耽   録音 93点

チャイコフスキー 交響曲第1番 スヴェトラーノフ(67)

2016.03.22 (Tue)
スヴェトラーノフ1(←LP CD→)スヴェトラ初期
スヴェトラーノフ/ソヴィエト国立交響楽団(67、MERODIYA)はもうぴったり。
欧米の洗練された音ではなく今はなきソヴィエト連邦の音。
特に変哲はない解釈だが、有無を言わせないぞという意志が最後に現出。

スヴェトラーノフ(1928~2002)は1965年からソ連国立交響楽団
(現ロシア国立交響楽団)首席指揮者に就任し、すぐにこの第1回目の
チャイコフスキーの交響曲全集をいれた。
90年代にもより恰幅のいい再録音があるが、この曲の素朴な力を
体現しているのはこちらかもしれない。
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第1楽章は土の匂いの湧き立つ音。
ゴリゴリ蠢く低弦をベースにヴァイオリンのメロディが流れるとき
ロシアの平原が脳裏に広がる(行ったことはないが…)。
金管のやや粗めの音も素敵だ。

第2楽章は懐かしい。
管のソロパートなどまさにロシアで、ホルンは今では聴けない独自の
切なさ充満しそれだけで泣ける。

第3楽章もぎこちないし、ラフといわれるかもしれないが
独自の力が漲る。

終楽章はパワー全開。
3分間のじりじりした序奏のあとの
きりりと引き締まった疾走。何か目覚めたような勢い。
このオケの底力を感じさせる。
フィナーレ手前ではじっくり音を溜めて声を潜めるが、力感だけは
しっかり維持される。ここら辺が最近のヤワなロシアのオケとの違い。
そして終結のオケの止まらない轟音と勢力に魅せられる。

録音はモスクワ音楽院大ホールと思われるセッション。
LPで聴いていた時はもっと窮屈な音のイメージだったが、
BMGのリマスターでは滑らかに鳴り音のつぶれもない。
音は近景というわけでなく鮮度も落ちるが、
終楽章など大音量で聴くと痛いくらい。

11:11  11:24  7:48  11:47   計 42:10
演奏  S   録音 86点

チャイコフスキー 交響曲第1番 アブラヴァネル(73)

2016.03.21 (Mon)
アブラヴァネル全集
アブラヴァネル/ユタ交響楽団(73、VOX)は軽くさらさら。

アブラヴァネル(1903~93)はギリシャ生まれのユダヤ系指揮者。
ユタ響の育ての親ともいえる存在で1947年から79年まで音楽監督を務めた。
オケの本拠地にこの指揮者の名前を冠していることからも貢献が窺える。
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現代音楽をも得意としたアブラヴァネルは1960~70年代にVOXを中心に膨大な
録音を残した。が、この人でなければ…という極めつけのものが思いつかないのは、
このコンビに共通する”サラリ感”が支配するからではないか。

何を聴いても淡泊で、ずかずか心に踏み入るようなことはない。
モルモン教徒に支えられたソルト・レイクシティのこのコンビは、
「金持ち騒がず、喧嘩せず」で脂ぎる必要がなかったのかも。
オケの人数も多いようには思えず室内楽的な地味感がある。

このチャイコフスキーもそよ風のようだ。
この指揮者はライナーのような恐ろしさはなく穏やかな人だったのではないか?
アンサンブルもほどほどで厳しい感じはしない。そよ風のように流れる。
迫力を求めるのはお門違い。
チャイコフスキーはドロドロしていて厭だという向きには良いかも。

録音場所の記載はないが、アブラヴァネル・ホールができる前の録音。
響きは適度にあり、ヌケよいが重量感はない。
ティンパニなどポンポンという感じ。アナログなので特有のヒスはあるが
60年代のVOXに時折見られたDレンジの不満はない。

12:00  10:23  7:00  11:44   計 41:07
演奏  A-    録音  86点

チャイコフスキー 交響曲第1番 マルケヴィッチ(66)

2016.03.20 (Sun)
マルケヴィッチ12
マルケヴィッチ/ロンドン交響楽団(66、PHILIPS)は決然とした迫力。
「冬の日の幻想」という標題を持つこの曲にはちょっと図太すぎかもしれないが
オケの威力が素晴らしい。特に最後の劇的な追い込みは痺れる。

マルケヴィッチ(1912~83)はウクライナ生まれながら2歳にしてスイスに
移住している。ロシアものが得意とされるが、血のなせる故だろう。
しかしこの人天才作曲家だけあって、譜読みが鋭く楽器管のバランスや
音楽の持っていき方など知的な裏打ちを感じさせる。
マルケヴィッチ

第1楽章はすぐに立派な音楽になる。冬の旅路の心細さとかはいまいち。
純音楽的に攻めてくる。音の歯切れがよく気持ちいい。

第2楽章はべとつかない。

第3楽章もリズム感が素晴らしくメロディに絡む管の合いの手が表情豊か。

終楽章は立体的に音楽を作り、溜めもみられるなど意欲的。
最後の2分間の奔流は素晴らしく、パーカッション、ブラスの切れ味は最高だ。

録音はウェンブリータウンホールでのセッション。
低域からどっしり感のある好録音。
響きは適度にありフィリップスらしい柔らかさを持つがぼやけ感はない。
鮮度は流石に落ち、CDリマスター後もヒスもあるが聴きやすい音。

10:52  10:24  7:38  12:14   計 41:08
演奏   A+   録音 86点

チャイコフスキー 交響曲第1番 アニハーノフ(92)

2016.03.19 (Sat)
アニハノフ
アニハーノフ/サンクト・ペテルブルグ国立交響楽団(92、Audiophileclassic)は
ソ連崩壊の混沌を感じる。

アンドレイ・アニハーノフは1965年レニングラード生まれで毎年渡り鳥のように日本に来て
全国の市民会館を行脚して帰っていく。
1991年から1996年にかけては 当該オケの首席指揮者となったが
他にサンクトペテルブルク・フィル、ロシアナショナル交響楽団、
サンクトペテルブルク・アカデミックカペラ管、シチリアシンフォニカ、サンタフェ交響楽団、
リトアニア国立交響楽団、グラスラン劇場管、ヴァネムイネ劇場管、ベッリーニ歌劇場管、
ボリショイ歌劇場、ノボシビルスク歌劇場管などを振っているとのこと。
ただし殆どのオケは何が何やらわからない。
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都市レニングラードはソ連崩壊後サンクトペテルブルグに改名したが
このオケはムラヴィンスキー振っていたレニングラード・フィルとは違うようだ。
ムラヴィンスキーが聴いたら絶対激怒する箇所が多発する。
演奏を聴く限りは巧いのか下手なのかよくわからない。
金管は強いし、バランスは気にしない。

第1楽章録音のせいか低弦が聞えずハイだ。
盛り上がると主旋律でないラッパが必ずプープー叫ぶ。

第2楽章も基本的にわかりやすい楽曲だが通常の演奏と違うバランス。

第3楽章はまっとう。弦の人数は少ないように聴こえる。

終楽章は妙な改変カットがある。物凄く切り詰めているわけではなく数小節。
趣旨は不明。
テンポは極めて遅く始まり3分ほどたってスピードが上がったかと思うと、
3:32で不思議な改変でストップする。
また何もなかったように始まるが5:30にはまたもや改変。
ひょっとしてチャイコフスキーが作った前の版を参照しているのか?
知る由もない。
音程が不安定な弦をひきつれリズムに乗れないシンバルがバシンバシン。
これにロシアン・ブラスが加わり、叫び終わる。

録音はサンクトペテルブルグ録音スタジオ。これまたよくわからない場所。
ハイ上がりで金属的・人工的な音がする。
残響はひょっとしてエフェクト?鮮度は悪くないのだが。

11:57  10:21  7:06  11:58   計 41:22
演奏   変    録音  87点
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