クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Sym8 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第8番 カラヤン(46)

2017.04.03 (Mon)
カラヤンウィーン8
カラヤン/ウィーンフィル(46、EMI)は指揮者38歳、初づくしの録音。
戦後初録音。交響曲初録音。また、これはカラヤンのウィーンフィルとの
数少ないベートーヴェン交響曲初録音でもある(他に49年の9番、59年の7番)。

カラヤンが学生時代から国立歌劇場の天井桟敷に通い憧れ続けたウィーン。
しかし、戦後ナチ党員であったカラヤンは連合国軍から公の場での演奏を禁止され
実質ウィーンでもザルツブルグでも表だって活動することが出来なかった。
そこにに救いの手を差し伸べたのが
EMIの敏腕プロデューサーのウォルター・レッグ(1906~1979)。
legge3.jpg
「録音」は公の場ではないと勝手に解釈しカラヤンにウィーンフィルを指揮させた。
苦しい時にカラヤンを支えた盟友レッグとの関係は60年代に入り
この指揮者が大スターになってしまうと立場は逆転しレッグは没落する。
この手の話はよくあることだ・・・。

ともかくこのコンビの第一弾、戦後初録音がこれ。
カラヤンの「8番」といえば快速で一途に駆け抜ける演奏が特色だが
ここではまだカラヤンスタイルは確立していない。
因みに第4楽章の演奏時間を時系列に並べてみる。
46年7:44⇒55年7:37⇒62年7:07⇒77年6:31⇒84年7:09というように
70年代にスピードの頂点を迎える。

本盤はある意味普通に真っ当な「8番」の名演だ。
ダイナミクスの幅はカラヤンっぽいともいえるが、
全体に当時のウィーン様式を彷彿とさせる柔らかさも持つ。
そうした点では後年のBPOとの演奏より多彩なニュアンスを感じる。
終楽章の展開ではぐっとテンポを落とし終結の再稼働に向けた
演出をするなど意欲的。カラヤンがなぜ聴衆の人気を集めたのかが分かる。

録音はウィーン、ムジークフェラインザールでのセッション。
この時期のもとしては非常に聴きやすい。リマスターもよくウィーンの響きを伝える。
モノラルは通常デットな音響になりやすいがこの会場が寄与し量感もあり迫力を感じる。

7:44  3:41  4:24  7:44   計 23:33
演奏  初   録音  75点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ネルソン(2005)

2017.03.23 (Thu)
ネルソン全集
ネルソン/パリ室内管弦楽団(2005、Ambroisie )はジャケ買い正解。
ベートーヴェンの交響曲全集でよもやそういうことをするとは思わなかった。
中の5枚組はそれぞれパリの夜の風景。

アンサンブル・オルケストラル・ドゥ・パリ、たぶん初対面ではないか。
1978年仏文化省のサポートのもとに設立。43名という人数でモダン楽器を操り、
このベートーヴェンでは対向配置、ピリオド的奏法採用。
この程度はよくある話だが、このオケの音が気に入った。
独自のザクザク感があり、これは生々しい。
録音の威力もあろうが非常に凝縮された力感を感じる。
また、太鼓がドスンドスンと低域からくるものだがら一層どっしり感がある。
フランスだから軽いという音ではなくヤルヴィのドイツ・カンマーフィルよりも図太い音。

指揮者のジョン・ネルソン(1941~)はコスタリカ出身、アメリカ人。
Nelson-John.jpg
このオケの音楽監督は1998~2008年の10年。その間の成果がこのベートーヴェン。
解釈的には持って回ったようなところはない。
ヤルヴィが手練手管だとすればこちらは一途だ。
ヤルヴィやシャイーのように仕掛け満載より素直に最近のベートーヴェンらしい
アプローチを聴きたいならむしろこのフランスのオケのほうがよいかもしれない。
なお、指揮者の助手としてアレキタンダー・マイヤーという人が記載されているが
何をしたのか不明。

録音はパリのIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)のスタジオセッション。
ircam.jpg
ピエール・ブーレーズが設立した機関のホール。
響きはあまりなくとにかく厚みのあるしっかりした音が好ましい。分離もよい。

8:22  3:49  4:48  6:48   計 23:47
演奏   A+    録音  95点

ベートーヴェン 交響曲第8番 P・ヤルヴィ(2004)

2017.03.22 (Wed)
ヤルヴィ38
P・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィル(2004、RCA)は計算されたマッド感。
ベーレンライター+小編成モダンオケ+ピリオド奏法による激しい演奏。

この第8番、現代フルオケによる重厚かつ猪突猛進ド迫力な演奏は
1999年のバレンボイムで行き着いてしまった。
(2002年のラトル盤は超えられなかった)

21世紀に入ってからはプルトを絞り軽量化したオケのバトルに。
2002年のノリントン盤はライブで熱にうなされたような疾走感。
こちらはヤルヴィ、トゲトゲぶつかり合うのだがしっかりコントロール。
だからと言って優等生的というのではない。
音楽の美感を損なうリスクはしっかり冒してまで挑んだ演奏。
とにかく弦のアタックが激しい。しかも低域の頑張りは凄味がある。
木製バチのティンパニも爆発音のよう。
音の意識的なダイナミクスの幅が大きい。

しかし、音楽の世界も記録を塗り替えるようなところがある。
ヤルヴィの演奏に驚いていたら、今度はシャイーがやらかしてしまう。
しかもあちらはオケがゲヴァントハウスときている。

もちろん、このヤルヴィの演奏にも独自の魅力はある。
クラシックっぽくないビート感というのか、音楽が高速で走るときに
ンチャンチャと刻みながら猛烈な前進をする。脈動というのだろうか。

ただ、これまたシャイーと同じなのだが何回も聴いていると
強引ともいえる表情がくどくなることもある。

録音はベルリン、ファンクハウス・スコアリング・ステージでのセッション。
Bremer_Philharmoniker_in_the_Funkhaus.jpg
残響は少なく鋭い音。量感・低域成分は多くない。
細身ながら芯のある音。

8:05  3:50  5:30  6:43   計 24:08
演奏   A  録音  94点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ポルセリン(1999)

2017.03.20 (Mon)
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ポルセリン/タスマニア交響楽団(1999、ABC)はいろんな意味で愉しめた。

まずタスマニアである。
豪州の一部(南東部)、南極海に浮かぶ北海道より少し小さな島。
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私の中では失礼ながらタスマニアデビル、タスマニアタイガー。
Sarcophilus harrisiithylacine.jpg 
州都はホバート。人口20万人弱。
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ここのオケは初めて聴くが全く不満はない。
オーストラリアのオケはアデレード交響楽団(ヴォルメル指揮)のシベリウスに
感心したが、ローカルオケといえども水準は高い。
47人と編成は小さいが速いパッセージを難なく乗り切り時に迫力がある。

ポルセリン(ポーセリン?、ポルセライン?:David Porcelijn:1947~)は
オランダの指揮者・作曲家。欧州・豪州が活動の場とのこと。
現在は蘭・豪で教鞭をとっているようだ。
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あまり情報がないので演奏で判断するしかない。
演奏スタイルはモダン楽器によるベーレンライター版以降のきびきびしたもの。
ノンヴィブラートに近いがピリオド奏法を完全に模倣したものではない。

そしてなんといても特色はフォルテピアノを通奏低音として採用していること。
バロック時代はバス声部に絡んでチェンバロが奏されていたが、
1800年頃にはほぼこの習慣は廃止されたといわれている。

ハイドンの最後の交響曲(1795年)初演では作曲者が通奏低音でリードしたし
(ハイドンの交響曲第98番は通奏低音があえて記譜されオマージュのよう)
ベートーヴェンの交響曲第1番(1801年)でも初演時は入っていたようだ。
しかし、この全集は第1番のみならず第9番(1824年)まで全てに入っている!

ただ、ここでのフォルテピアノは奇抜さを演出するためではない。
この全集で通奏低音担当の豪州の音楽学者ランカスター(Lancaster、1954~)が
1840年代までフォルテピアノが用いられていたことを発見したからという。
ランカスター
これはきっと通説と違うのだろうし、分厚い響きをもつこの頃の交響曲で
それが鳴っていたとは俄かに信じがたいが、絶対なかったともいえない。
ランカスター自身はオーストラリアでは高名な奏者で賞をいくつも獲得しており
単なる色物師ではない。ただ、録音上では初めての試みではないか。

とにかく聴いてみる。
第1楽章少人数オケが飛び出すと確かにポロンポロンとかすかに聴こえる。
協奏曲のようにはっきりしたパートを持ったり目立ちはしないが装飾音的に。
それよりもこの演奏が素晴らしいことにすぐ気づく。
反復を実行して8分を切るスピードなのだが実に軽やかで必死感がない。
モダン楽器ということもあり音はマイルド。
そしてこのかすかに聴こえるフォルテピアノが愛らしく緊張感を和らげている。
一方ホルンなどここぞというときにはしっかり強奏し主張する。

第2楽章になると通奏低音がより自在な動きを見せるが、
音楽の勢いを邪魔することはない。

第3楽章はテンポは穏やかで長閑さが出る。
フォルテピアノは目立たないがバックでアルペッジオしてたりお茶目。

終楽章は7分を切るが血眼になるようなものでなく典雅さと迫力をもつ。

この演奏はフォルテピアノという特色を持たなくとも非常に優れたもの。
それに通奏低音という新鮮な魅力が加わり成功した演奏だと思う。
(もちろんフォルテピアノは邪道と思う人もいるだろうが・・・)

録音はキャンベラ音楽学校のLlewellyn Hallでのセッション。
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この全集はオーストラリアの各地で録音され響きが一様ではない。
ここはそれなりに大きさを感じるホールだが各楽器の明晰さも確保。
少人数の明快さがあるが終楽章など大きなスケール。
ABC(オーストラリア放送)の録音はいいものが多い。

7:55  3:37  5:27  6:47   計 23:46
演奏   愉A+    録音  93点

ベートーヴェン 交響曲第8番 ヴァント(87)

2017.03.19 (Sun)
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ヴァント/北ドイツ放送交響楽団(87、dhm)は真面目スタイリッシュ。
ただ響きが多すぎて彼の演奏スタイルを若干損ねているのが残念。

ギュンター・ヴァント(1914-2002)が日本で巨匠と崇められるようになったのは
いつごろだろうか。
多分1982年に北ドイツ放送交響楽団(現:北ドイツ放送エルプフィルハーモニー管弦楽団)
の首席に就任しブラームスの交響曲を出した頃からだろうか。
そして70年代から得意にしていたブルックナーが決定打になった。
ベームなどがいなくなった後、ドイツ本場物指揮者としてブームに。
ただ、彼は現代音楽にも精通していたように昔ながらの
本場物指揮者とは少し違う気がする。

彼のこのベートーヴェンも実に流れがよく均整がとれている。
厳しさはあまりない。全体に規範的な真面目さがある。
従来型の演奏で最近のピリオド演奏が明らかにしてきた
この曲の狂気は見えない。

録音はハンブルグ、フルードリッヒ・エーベルト・ハレでのセッション。
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Friedrich-Ebert-Halle.jpg
もともと北ドイツ放送とドイツ・ハルモニア・ムンディ(dhm)による録音だった。
ただ、このホールはセッションで使うと響きが多すぎるような気がする。
ヴァントの音楽はもっとスッキリした音響が似合うのではないか。
ただヴァン自身響きの多い録音が好きだったのかもしれない。
ブルックナーにしても残響が次の音に重なる録音が多い気がする。

9:23  3:48  4:43  7:46  計 25:40
演奏   A-   録音  87点
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