クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Beethoven Sym5 の記事一覧

ベートーヴェン 交響曲第5番 マゼール(95)

2014.07.23 (Wed)
マゼールBRSO5
マゼール/バイエルン放送交響楽団(95、DREAMLIFE)は自在な豪快さ。
マゼール65歳、ベルリンやウィーンでの地位の固執から解放され
バイエルン放送響の機能性と大音響を得て好き勝手に音楽を作り始めた
第五期の到来を告げるような演奏。
ライブで精度は高いとは言えないがスリルと迫力は素晴らしい。

録音はボンのベートヴェンホールでの作曲者生誕225年記念演奏会のライブ。
バイエルン放送収録の映像(DVD)。
広いホールで響きが多く前の音の残響が次の音に被ることがある。
但し、マルチマイク収録のため個々の楽器もよく捉えられている。
低域は締まりが緩いが量感はある。
なお、マゼールは記念演奏会という状況もあってか渾身の指揮ぶりが見られる。

第1楽章冒頭の運命の動機は速くたたみかける。フェルマータは途中で切られる。
その後のテンポも快速で過去のどの演奏より早く6分台。
巨大な音響にも関わらずこの速さ。金管やティンパニも豪快に鳴らされる。
ピリオド楽器演奏など糞喰らえ的。

第2楽章は一転テンポを落として濃密なムード。このオケの深い音がいい。
映像からも丹念に表情付けをしているのが分かる。

第3楽章は弦が活躍するがここでは現代型配置でチェロを中央右、
右手前にヴィオラを持ってくる若干の変形型。
フーガも、もたれないテンポで緊迫感を強める。

終楽章は怒涛の進撃。息もつかせぬスピードと大音響。
よって繰り返しはせず終結に向かって走り続ける。
マゼールは目を剥いている。
マゼール渾身
ティンパニがバシッと決め聴衆の大歓声が続く。
何にもこだわらずひたすら聴衆を喜ばすことに徹した境地に達した瞬間だ。

さて、私のマゼールの「運命」の保有盤の記録はここまでだが、
実演では最後までベートヴェンを取り上げてきた。
2010年大晦日の午後、ベートヴェンの交響曲全曲演奏を日本のオケで行った
マゼールの演奏について日経新聞(2011/1/18記事)は下記のように書いた。

『アクの強い表情、微妙にねじれるリズム、クライマックスでの派手な
見えの切り方といった「マゼール節」が一気に爆発した。
ウィーン・フィルやベルリン・フィルなど、べートーヴェンと同じ文化圏の
オーケストラなら「恥ずかしくてできない」と
突っぱねる容貌魁偉なデフォルメを日本の精鋭集団は逆におもしろがり、
徹底して再現するから、演奏の「変態」度は止めどなく上がる』

マゼール80歳にして経済紙にこの書かれ方。聴きたかった。
御冥福をお祈りします。

7:04  11:12  5:19  8:28   計 32:03
演奏  A+   録音 90点

ベートーヴェン 交響曲第5番 マゼール(80)

2014.07.22 (Tue)
マゼール5vpo
マゼール/ウィーンフィル(80、SONY)は仕掛けのあるまっとうな名演。
変な表現であるが一聴すると普通の良い演奏なのだが、なかなか仕掛けがある。
しかし、2年前のクリーヴランドとの進歩的?演奏とまた全然違う。
マゼールの千変万化面目躍如。マゼール第三期50歳。

録音は名古屋市民会館ホール(現在の日本特殊陶業市民会館フォレストホール)
でのライブのデジタル収録。この会館は多目的ホールでオケの音響特性は
必ずしもよくないがマイクはうまく拾い当時の普通の音にしている。

第1楽章は気張った感じはなく中庸の力でスタート。
但し2年前のクリーヴランドとの軽々しさはなく当時の演奏様式に沿っている。
重厚一本やりでなく細部の整理はされ、ウィーンの弦を前面に歌わせる見せ場も作る。

第2楽章は12分をかけ極めてゆったりで腰の重い表現。
微細を穿つこの粘りけのある表情はこの後このコンビのマーラーで更に拡大する。

第3楽章は両翼配置ではなく右の引き締まった低弦から左の高弦に移行する。
ウィーンの弦の音がいい。

終楽章は2年前の録音ではリピートをしていたがここではライブの感興を優先し
反復せずに突き進む。終結は人が興奮するようにオケを全開にさせる。
ティンパニも力強い。観客はブラボーを叫ぶ。
CDで冷静に聴くと手玉に取られた感があるが、いい演奏なことは確か。

8:00  12:01  5:12  8:43   計 33:56
演奏  A   録音 90点

ベートーヴェン 交響曲第5番 マゼール(78)

2014.07.21 (Mon)
マゼール全集
マゼール/クリーヴランド管弦楽団(78、SONY)は発売当時全く理解不能。
こんな軽くて小気味よくて深刻でないベートーヴェンはダメだったのだ。
ピリオド楽器がでてくるのが80年代で
それに影響された現代オケの演奏がでてくるのが90年代。
15年くらい早かった。ここにマゼールの天才の悲劇がある、
と言いたいところだが、そんなことは百も承知で
予言的で実験的な全集を作ったのではないか。
今聴くとクリーヴランドの端正な合奏力を活かした爽快な演奏で、
逆に当時の他の演奏がベタに聴こえるのだから困る。
マゼールにようやく気付きましたか?とニヤリとされているよう。
マゼール第二期48歳。

録音はマソニック・オーディトリウムでのセッション。
適度に拡がりのある空間で角のない綺麗な音。
音作りはピラミッドでなくフラットで伸びがある。

第1楽章冒頭の運命の動機でまずびっくり。軽く弾む。
58年盤のベルリンフィルとのオケの違いでは説明できない。
明らかに目指すものが異なることにすぐ気付く。
今でこそピリオド楽器をはじめとする軽量級の演奏が出回っているが、
ベートーヴェン=重厚との常識を完全に裏切った演奏。
濃厚な表情は消え、スッキリ。全ての音が塊りにならず聴こえる。

第2楽章も軽やかで綺麗。木管のハーモニーの美しさは特筆。
音はさっぱりべとつかず爽やかに流れる。
テンポは速くないので草原の風に吹かれている感じ。

第3楽章のホルンの進軍も威圧的でない。
なお、旧盤では両翼だった弦もここでは通常パターン。
低弦を軽くしている。室内楽を聴いているようだ。

終楽章も決して汗を飛ばさない。軽快そのもの。
そしてマゼールがこの曲の4回の録音の中で唯一反復を実行している。
音が厚ぼったく重ならないので普段は叫ぶ木管もヒステリックにならず涼しげだ。
しつこいこの曲の終結も軽々と終えてしまう。
マゼールのしたり顔が浮かんでくる。

7:26  10:30  4:54  10:09   計 32:59
演奏  透A   録音 90点

ベートーヴェン 交響曲第5番 マゼール(58)

2014.07.20 (Sun)
マゼール5DG58
マゼール/ベルリンフィル(58、DG)。
2014年7月13日、ロリン・マゼールが亡くなった。84歳だった。
追悼の意味を込めてマゼールの軌跡を少し振り返りたい。
そうした時に思い出されるのは音楽評論家の竹内貴久雄さんが書かれた「マゼール論」。
これほど端的にマゼールの本質をついている文はないので引用させてもらいたい。
(1996年6月洋泉社『クラシック名盤・裏名盤事典』p.189)

『時代の先端の感性というものは絶えず変貌してゆくが、
ひとりの演奏家個人の変貌の振幅は、たいていの場合、決して大きなものではない。
ところが、マゼールは、その中で数少ない例外だ。
マゼールは自身の過去を否定しながら、大きな振幅で別人のごとくに変貌する。
それが、彼の天才たる所以だが、それが、ことさらに、
マゼールの変貌の真意を分かりにくくさせている。(中略)
マゼールは次々と別の場所へワープしているわけだから、昔は良かったなどと言って、
最初のマゼールのイメージから一歩も動かないでいると、
完全に置いてきぼりを喰ってしまうことになる。』

まさにその通りだと思う。
マゼールの変遷は竹内さんの分類と同様で以下の通り考える。

①肉食鬼才時代(50年代~70年代)・・・ベルリン・ウィーン
②俯瞰達観時代(70年代)・・・・・・・・・・・クリーヴランド
③粘着再稼働時代(80年代~90年代)・・フランス国立・ウィーン
④病的抒情時代(90年代前半)・・・・・・・・ピッツバーグ
⑤自由巨匠時代(90年代半ば以降)・・・・バイエルン・ニューヨークその他

①で度肝を抜かれ②で期待外れの経験をすると
「マゼールは若い頃がよかった」となってしまう。
小細工ばかりで人を見下すようなところも鼻につく、ともなる。
しかし、毀誉褒貶の激しいこの指揮者には固定観念を捨て去る必要がある。
また、上記分類も演奏ごと当否がある(人間そんなに単純ではない)。
また、欧州オケとやると大胆で、
米国オケとやる方がそつなくまとめる傾向もある(バーンスタインと逆)。

そんなことを考えている時今手元にあるマゼールの4種の「運命」が想起された。
(2010年大晦日東京でマゼールは半日でベートーヴェンの全交響曲を振って
「80歳の怪人指揮者」呼ばわりされニュースになったがそれは聴いていない)。

まず①の時代(第一期28歳)のこの盤から。
録音はベルリン・イエスキリスト教会で、ステレオ初期と思えないくらい完成度が高い。
全体と個々の楽器のバランスも良い。CDのリマスタリングがよいのかヒスや
左右強調もなく自然に拡がる音場の中で当時のベルリンフィルの重厚な音が楽しめる。
この後のDECCAでののウィーンフィル録音より誇張がない。

第1楽章冒頭の動機の音が既に素晴らしい。
ベルリンのピラミッド型で強靭筋肉質の音だ。そこに木管が綺麗な音とハリのある金管。
テンポも全く妥当(後年の方が速くなる)。終結部は意志的な表情。
誠に堂々としており、ブラインドで聴いたら28歳の青年指揮とは思えないはず。

第2楽章も強い。一生懸命ベルリンをドライブしている。
10:45かけてじっくりとしたドイツ音楽だ。

第3楽章もベルリンフィルの弦の威力を感じる。
すぐ後のカラヤン盤と違ってレガートはかからずピッチがそれほど高くなく、
中低域が厚いく無骨に聴こえる。なお、録音で聴く限り両翼配置だ。
パワーを充填して次になだれ込む。

終楽章も重厚な迫力を持つが木管を目立たせたり、
力感を巧みにコントロールするなど没我でない余裕を見せる。
終結に向かっては金管を強奏させ盛り上げる。

意欲満々さを素晴らしいベルリンフィルの音が巧くカバーして
鬼才戦闘開始の名演が仕上がった。

7:58  10:45  4:51  8:34    計 32:08
演奏 A+    録音 87 点

ベートーベン 交響曲第5番 バーンスタイン(76)

2010.06.13 (Sun)
バーンスタインBET5
バーンスタイン/バイエルン放送交響楽団(76、DG)はアムネスティ・インターナショナルの
ための慈善演奏会の記録。かつて、LP2枚組(演奏会全容のアラウのピアノ協奏曲第4番、
レオノーレ序曲第3番を併録)で発売されたが権利関係の問題からCD化されず幻の名盤と
されていたもの。O7年にDGのコレクターズBOXで一度出ていたが、この度タワーズ
ヴィンテージコレクションでオリジナルジャケットで復活したのはうれしい。
私はLPの思い出を胸にかつてこの演奏の記録を求めて海賊盤に手を出していた。
とにかく演奏は私の聴いた「第5」中、最高。
世の中ではクライバーやフルトヴェングラーが有名なのだろうが私は30年前からこれがNO.1。
「隣の車が小さく見えます」というCMがあったが(古い!!)、まさにそれだ。
まず凄いのはオケの音。
これほど「第5」にマッチした響きはない。全体は硬く引き締まり筋肉質。
そして無骨なまでの力強さ。低弦はゴリゴリしながら木質の音。
金管はここぞと言うときに風圧を感じさせる大吹奏。硬いティンパニがだめを押す。
そしてバーンスタインだ。
彼のニューヨークやウィーンとの録音も独自の素晴らしさがあるが
これは緊張感において別格だ。繰り返しは全部行なうが確信犯。
重量感がありどっしりしているのに音楽は途方もない推進力を有する。
全編随所に低弦が前に前に進む鼓動を刻むのが聞こえる。
こけおどしでも小手先でもないとてつもなくスケールの大きな演奏。
バーンスタインならタイタニックの氷山を粉砕して突き進む。
そんなエナジーを放出する。
録音はミュンヘン・ドイツ博物館、コングレスザールでの優秀ライヴ録音。
会場ノイズは殆どない(LPで聴いたときより残響成分が多い気がする)。
なお、本CDはLPと同様の収録だが「レオノーレ第3番」も異常な大迫力演奏だ。
特に終結(12:49から)の速いパッセージ。
指揮者が足を踏み鳴らしてオーケストラを煽る煽る!
それに乱れを見せずに整然と加速し大音響の中ティンパニが絞める。
鳥肌が立つこと間違いない。

8:05  10:25  5:17  11:18   計 35:05
演奏  S   録音 93点
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