クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

Sibelius Tapiola の記事一覧

シベリウス タピオラ オラモ(2003)

2016.01.31 (Sun)
oramo シベ67
オラモ/バーミンガム市交響楽団(2003、ERATO)は軽やかに舞う。
テンポは一貫してとても速い。音楽が息づきさらさら進む。
弦の圧を弱め、木管のひらひら感が強い。密やかさが押し出される。
雷鳴もおどろおどろしくない。金管も驚かさない。

あっという間に聴き終え、夢を見ていたのではないかと思う。
最初はあまりに速すぎるテンポ、深刻さはなく厳しさもほどほどのこの演奏に
少し戸惑った。しかし、シベリウスは終盤に向かいどんどん削ぎ落した
軽やかな音楽を作っていった。
とするとこの速くて軽い演奏は真髄を衝いているのではないかとも思う。

録音はバーミンガムシンフォニーホールでのセッション。
薄いヴェールを纏ったような品のある音。むき出しでなく幻想性を高める。

15:42
演奏    舞A+    録音    93点

シベリウス タピオラ カラヤン(84)

2016.01.29 (Fri)
karajan84.jpg
カラヤン/ベルリンフィル(84、DG)は劇的な効果を追求。
ワンフレーズ・ワンフレーズが仕組まれている。
何かここにストーリーを持ち込もうとしているかのようだ。

ゆっくりしたテンポで含むような表情を見せながら進む。
過去のベターっとしたカラヤンの「タピオラ」よりも強烈な演出臭が漂う。

このアルバムは以下の通りの曲集。

1. 交響詩《フィンランディア》作品26 (1899年)
2. トゥオネラの白鳥 作品22の2 (1893年)
3. 悲しきワルツ 作品44の1 (1903年)
4. 交響詩《タピオラ》作品112 (1925年)

いわゆる名曲集で全部で44分ほどしか入っていない。
カラヤンは「タピオラ」をシベリウスにおける通俗名曲のように捉えて
何度も録音しているが併録の1~3とは思いっきり違うところにある曲。
しかしカラヤンの棒でこの曲を聴くと確かにつながっている。

考えようによっては4楽章の交響曲のようだ。
勇ましいフィンランディアに始まりアンダンテのトゥオネラ、
悲しき「ワルツ」と来て錯綜するタピオラ。
あたかも北欧版ブルックナーのようだ。
そう思って聴くと合点がいく。

録音はベルリンのフィルハーモニーでのセッション。
他の3曲と同じ2月に録音された。
奥行きや明快さを持ち一定のスケール感を確保。
強奏部分ではやや硬調になるが、ベルリンの音が凄すぎるのかもしれない。

20:15
演奏    演     録音  91点

シベリウス タピオラ ブロムシュテット(92)

2016.01.28 (Thu)
ブロムシュテット全集
ブロムシュテット/サンフランシスコ交響楽団(92、DECCA)は爽快な森の神。
録音もスカッとしていればオケもバリッと。
テンポはむしろじっくりだが全く湿り気がない。

各パーツのこそこそした動きが180度あちこちから飛び出す。
その様は森の小動物か精霊が現れ隠れるよう。
精緻な合奏が研ぎ澄まされた世界を表出するが、
凍てつく厳しさがないのはオケの音色が大きい。決して重くならない。明るいのだ。

私はこのコンビのシベリウスが好きだ。それは北欧勢のものとは全く違う。
このタピオラ、陽光に煌めくダイヤモンドダストを感じさせる。
daiamondsust.jpg
録音はサンフランシスコのデイヴィス・シンフォニーホールでのセッション。
いつもながら抜けよく分離の明快なスカッとした音。

19:28
演奏   爽A+     録音   92点

シベリウス タピオラ アンセルメ(63)

2016.01.22 (Fri)
アンセルメタピオラ
アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団(63、DECCA)は表情の見えないパントマイム。
スイス人、アンセルメ(1883~1969)のシベリウス録音は
私の知る限り交響曲第2番、第4番とこの「タピオラ」のみ。
ポピュラーな主要管弦楽を総ナメしていたこの指揮者の選曲として非常に不可思議。

演奏を聴いてみると北欧の演奏者とかなり違う音楽作り。
演奏時間の短さは音の隙間を作らないようにどんどん進行させていくから。
表情の彫は深くなくある面バレエ音楽のようにも聴こえる。

世界で有数と言われる日本人のシベリウス受容の背景には
音楽の「希薄さ」や「無」を享受する感性があると思う。
北欧人のそれと似たものだが、アンセルメにとっては範疇外。
音の「間」は合理的な意味がないので次の音で空白を埋めて行く必要がある。
この演奏にはそうした感覚が働いているのではないか。
数学者アンセルメは「0」をどのように捉えていたのだろう。
Ansermet-Ernest.jpg
しかし、それにしてもなぜこの曲をわざわざ選んだのか。謎だ。

録音はジュネーブのヴィクトリア・ホールでのセッション。
本拠地での手慣れた録音。経年による鮮度の低下はやむをえないが、
良くまとまった音。寒さはあまり感じられず、響きも多くない。
フォルティッシモは潰れないが、Dレンジはそこそこそに収まっている。

16:23
演奏    埋     録音   88点

シベリウス タピオラ サラステ(87)

2016.01.21 (Thu)
サラステ56タピオラ
サラステ/フィンランド放送響(87、FINLANDIA)は悲愴な強靭さ。
率直に抉り、真正面から深層を穿つ。
俊英サラステがフィンランド放送交響楽団の首席指揮者に就任した年に
交響曲全集が録音された。これはそれと同時期に録音されたもの。
指揮者31歳。ロックスターのような風貌だった。
saraste.jpg
(その後同じコンビは93年に交響曲全曲をライブ録音しているが
その時にはタピオラは含まれていなかった)

当時のサラステは贅肉を削ぎ落し引き締まった音楽を作っていたが、この曲でも同じ。
また、特有のビート感があり音楽が前進する。16分半という短い時間に思いを凝縮。

冒頭の弦はひきつった表情。ロマンティックな幻想性はなくひたすら切り込む。
後半の雷鳴は恐ろしいばかりに容赦ない。ムラヴィンスキーが振ったら
こんな感じか。真剣勝負のような音楽作りは非常に説得力がある。
カヤヌスの演奏を遅い、と言ったシベリウスが聴いたら「合格」というのではないか。
先輩カムのような多様な織り込みはないが、一途さがいい。

録音はヘルシンキ文化センターでのセッション。
残響はあまりなくデットだが音の詰まり感はなく音場の窮屈さも感じず。
真っ当な音がする。

16:30
演奏    A+      録音  90点
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