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クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ブルックナー 交響曲第5番 ギーレン(89)

2019.05.19 (Sun)
ギーレン5
ギーレン/バーデンバーデン南西ドイツ放送交響楽団(89、INTERCORD)は
静謐な祈り。重厚長大な行き方と一線を画す。

ギーレン(1927~2019年)の大いなる遺産の一つ。
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この指揮者兼作曲家が四角四面のクールさから
清らかな情感を交えるようになった時期の演奏。
こののちはもっと大家風になっていくが、
私はこの頃のギーレンが好き。

第1楽章冒頭はドスを効かすのでなく敬虔な雰囲気で始まる。
金管の起立とその後の淀みない流れは毅然と清潔。
第2楽章以外はレーグナー張りの速めのテンポ。
流れる景色の中、美しい場面が何度も現出する。
大きなテンポの伸縮や劇的な表情は無い大人のブルックナー。

長尺のアダージョも音を短めに切り上げもたつくことは無い。
ディヴィジする弦と木管の絡みの美しいこと。

スケルツォでは運動性が際立つ。
全奏場面以外では音を潜ませる。

終楽章も整理の行きとどいた潔い表情が心地よい。
テンポは速く音は切り詰めるが全休止はしっかりとる。
地響き立てて鳴るのでなく、大聖堂でミサを聞いているよう。
さらりとした肌触りに物足りなさを感じるかもしれないが、
ある意味近時のブルックナー演奏の方向性を先取りしていた。

録音はカールスルーエ、ブラームス・ザールでのセッション。
Karlsruhe_02.jpg
Stadthalle - Johannes-Brahms-Saal
聴衆がいないのでホールトーンが生まれているが、
どちらかといえばクール。
オケ全体を捉える事が主軸だが、混濁は無い。

19:00  18:05  12:15  20:40   計 70:00
演奏   S   録音  92点

ブルックナー 交響曲第5番 ヴァント(91)

2019.05.18 (Sat)
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ヴァント/ベルリン・ドイツ交響楽団(91、Profil)はガッツリ素朴な力。

ヴァント(1912~2002)が得意としたこの曲にはいくつもの盤がある。
特に90年代はBPO、ミュンヘンPOとも記録がありどれも入魂だった。
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私はやや肥大化した音響が気になることもあったがやはりこ人は巧いと思った。

この盤もそうなのだが、この指揮者には生硬さの中に息遣い・ロマンを感じるのだ。
重いものを頑張って持ち上げるような粘り腰の迫力。
それでいながら森の中で小さな花を見つけた時のような密かな喜び。
そしてこの盤にはベルリンのような機能集団とはまた違う
無頼漢的響きに魅力がある。
それは洗練されておらず時には野卑ぎりぎり。
野人ブルックナーにはこちらの方が相応しい気もする。

録音はベルリン・コンチェルトハウスでのライブ。
3-format43.jpg
Konzerthaus-Berlin-3.jpg
響きはたっぷりで低域はもう少し締まった方が好みだが、
ヴァントの後年の録音はこの手のものが多い。指揮者の好みだったのか?
演奏中の聴衆ノイズは殆ど聞こえず良好。終了後の盛大な拍手はある。
放送曲収録だけあってバランスがいい。

21:31  15:47  14:12  24:15   計 75:45
演奏   A+     録音  92点

ブルックナー 交響曲第5番 ドホナーニ(91)

2019.05.17 (Fri)
ドホナーニ5
ドホナーニ/クリーヴランド管弦楽団(91,DECCA)は端正と重厚の構造物。
音楽づくり丁寧ながらもクール・モダン。いざとなればフルオケの威力を打ちだす。

ドホナーニ(1929~)と
doh2.jpg
ブルックナーと
bruckner.jpg
はイメージがあまり繋がらないが、
3番から9番まで録音している。
独墺系指揮者なのだが、アメリカで活躍してきたため結びつかないのかも。
また日本ではアメリカのオケによるブルックナーはあまり人気がないこともあり
本盤もひっそりしていたように記憶する。
私はセルとクリーヴランドによるブルックナーの8番が好きだったので
この盤は興味があった。
セルは5番を録音していないが、もしセルだったらどうなのだろうかと。

この演奏は基本的に正攻法でテンポは落ち着いている。
時々駆け足(ex1st 8分半~.)は謎だが、
オケのパーツの強調は無くマッシブな迫力がある。金管は華やか。
特徴は全奏でガンガン鳴るところでなく、むしろ静かな部分での室内楽的な響き。
謳わせ方はロマンティックではなく人間の情感をあまり入れない。
それならばもう少しテンポを速めてもいいのではないかとも思った。
第2楽章の18分超えは少し長く感じた。

しかし、無機的ともいえるこの音響の綾は近代建築を見るよう。
modern architecture
クリーヴランドの機能性も極めて有効だ。
一聴すると変哲のない演奏だが無表情に爆発する音塊が恐くもなる。

録音はセヴェランスホールでのセッション。
Severence Hall, Cleveland
スケール感と量感を持ちながらも一定の分解能を持つ優秀録音。
DECCAの安心できる仕事。

19:41  18:11  13:05  22:53   計 73:50
演奏    A    録音  93点

ブルックナー 交響曲第5番 N.ヤルヴィ(2009)

2019.05.16 (Thu)
Nヤルヴィ5
N・ヤルヴィ/ハーグ・レジデンティ管弦楽団(2009、CHANDOS)は
ヴェンツァーゴが出るまでは最速最短演奏時間だった。
特にアダージョはぶっちぎりで今でも最速。
ただ、ヴェンツァーゴ盤の創意に満ちたテンポという感じではなく、
ひたすら切り詰めていったという感じ。

パパ・ヤルヴィは勿体ぶるのが嫌いらしく時にこんな感じの演奏をして見せる。
njarvi_201905162240516f4.jpg
ショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」もバーンスタインの劇的演奏で
親しんでいた耳には驚きのそっけなさだった。
でも、あれはあれで説得力があった。

しかしこのブルックナーはそうしたものを感じない。
要は踏み込みが浅く、それなりに鳴らしました感が強い。
職人指揮者的な感触なのだ。
N・ヤルヴィのブルックナーは少ない。本盤以外では8番くらいか。
あまり共感性がないのか。

終楽章などとってつけたような表情が現出するがそれが必然なのか戸惑う。
9分半からは突如ギアが入りあれよあれよのテンポ。
ここまで来るとこの畳み掛けは面白い。

録音はハーグのDrアントン・フィリップス・ザールでのセッション。
Dr_anton_philipszaal.jpg
Dr. Anton Philipszaal
SACD盤。ホールトーンを適度に入れてブルックナーに相応しいいサウンド。
重量感は今一つだが強調は無く自然体。

17:57  11:15  12:56  19:41   計61:49
演奏   A-    録音 93点

ブルックナー 交響曲第5番 ヴェンツァーゴ(2014)

2019.05.15 (Wed)
ヴェンツァーゴ5
ヴェンツァーゴ/タピオラ・シンフォニエッタ(2014、CPO)は新たな地平を拓く。
ブルックナー演奏の革新。

ブルックナーは2管編成でこの曲を書いたが
2管で演奏されることはまずなく倍管以上。
そして重々しく立派に演奏されるのが常。
それはそれで気宇壮大な宇宙を示して感動的だ。

しかしこの演奏の目指すところはバッハ。
2管、ノンヴィブラートで奏されるコラールやフーガは実に新鮮。
粗雑物を排しこの交響曲を見事に解きほぐす。
テンポは快適で演奏時間が60分を切る(シャルク版ではない!)。
この曲に潜む動力機関のような運動性も明らかになる。

ブルックナー演奏においてすっきり系のレーグナーが好みだった私は
この演奏にすぐに馴染んだ。勿論今まで権威とされる演奏とは全く違うので、
この演奏を受け付けないことも十分ありうる。
しかし、ここでしか見えてこない世界があるのも事実だ。

指揮者ヴェンツァーゴ(Mario Venzago, 1948~)は、
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スイスの指揮者でウィーン国立アカデミーでスワロフスキーに師事した。
べったりせずザッハリヒともいえる指揮ぶりの源流はここにあるかもしれない。

タピオラ・シンフォニエッタは40人程度のオケ。
tapiolasinfonietta.jpg
この演奏を聴いているとそこまで少ないのか俄かに信じがたいが力量は確か。
金管のハリやティンパニのパンチもある。
単にスリムなだけでなく筋肉質。体脂肪率一桁。

とにかくこの曲が好きな人は挑戦してみる価値のある演奏だ。
(拒絶反応を起こされても責任は持てませんが)

録音はフィンランド、エスポー、タピオラ・ホールでのセッション。
残響フワフワではこの演奏はいきない。
かといってデットではなく一定の響きを確保。この演奏方針にあった録音。

1878年版
15:55  12:13  13:11  18:37   計 59:56
演奏   S    録音  94点
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