クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

プーランク 2台のピアノのための協奏曲 ゴールド&フィッディール(61)

2017.05.25 (Thu)
プーランクバーンスタイン
ゴールド、フィッツデール(p)/バーンスタイン/ニューヨークフィル(61、SONY)は
プーランクの愉しさを教えてくれた。
LPではショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲(プレヴィン)のB面に入っていた曲。
目当てはA面だったが初めて接したこの曲も気に入ってしまった。

当時はプーランクを殆ど聴いていなかった。
EMIの「フランスのエスプリ」シリーズもまだ出ていなかった。

なんとも変わった曲だ。聖と俗、夢と現実、天国と現生が同居。
とりとめないのだが、メロディはしっかり甘く入っているのでとっつきやすい。
そしてプーランクの曲はデジャヴがある。
この作曲家には消化されていないモーツァルトやショパンやジャズが
混在しているからではないか。

第1楽章フォルテで始まり軽やかに空を飛ぶ。
すぐにテケテケの下界の喧騒が紛れ込む。
それもすぐに止み、物憂い感傷の中に浮遊する。

第2楽章はモーツァルトで始まる。
すぐにそれがフランス仕立てに変容。お洒落な音楽。

終楽章はパリの街をスキップしながら早足で。
明るいだけでなく必ず憂いを含んだメロディが差し込む。
屈折した心模様が面白い。
ブレントヘイトン

録音はマンハッタンセンターでのセッション。
この時期のここでの録音は優秀なものが多いがこれもその一つ。
センスの良い軽やかで伸びやかで美しい音。
CDリマスターも成功し現役で通用する。
2台のピアノは左右にくっきり分かれ掛け合う。
明晰だが距離感も適切でトーンがシルキー。

8:01  5:15  5:36   計 18:52
演奏   S   録音  90点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 ベロフ(74)

2017.05.24 (Wed)
マズア
ベロフ(p)/マズア/ライプチッヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(74、EMI)は
ゴツゴツのぶつかり合い。ロマンティックさはそぎ落とす潔さ。
最近の繊細な演奏もよいが、この直截なパワーを聴くと青春の無邪気な一面を感じる。

ミッシェル・ベロフ(1950~)はフランスのピアニストで67年第1回オリヴィエ・メシアン国際
コンクールの覇者。当然フランスもの近代ものに適性があるが、
このプロコフィエフが出た時には驚いた。
(録音のせいもあるかもしれないが)美感より打感重視。
第1楽章の後半のピアノ独奏はバリバリ。
それゆえ荒々しく非洗練の激しさでフランス的といえず意外だった。

対するはマズア/LGOというがっちりドイツコンビ。
これはまさに彼らの響きでドスこい。
金管は昔のヴィヴラートはかかるし、ペッペッという吐き捨てるような音。
時に積極的な主張を見せる。
この相乗効果で全体は岩石のぶつかりのような音楽に。

録音はライプチッヒのVersöhnungskircheでのセッション。
Versoehnungskirche_Leipzig.jpg
教会なのだがそれらしい豊かさというよりも直接的の収録。
あまり美しいとは言えないし懐かしいフォルティッシモでのぎりぎり感もあり。
底力のある音。
同年録音のアシュケナージ(DECCA)盤とは方向性の違う音。

10:15  2:33  5:46  10:43   計 29:17
演奏   剛A    録音 85点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 アシュケナージ(74)

2017.05.23 (Tue)
アシュケナージ全集
アシュケナージ(p)/プレヴィン/ロンドン交響楽団(74、DECCA)は品のある気迫。
よくアシュケナージ(1937~)は「中庸」といわれるが、際どい所で踏みとどまる天才。
外形的に目立つ作為は無いが、ピアノ表現の幅は非常に広大。
これが指揮活動になると、オケの介在で微妙な線が出なくなる。

このピアニスト若いころはもっと才気走っていたようだ。
1955年のショパン国際ピアノコンクールでハラシュヴィッツに次いで2位。
この2位に納得できなかった審査員のミケランジェリが降板したことで
かえって有名になった。1980年ポゴレリッチ事件に先立つ逸話。
一方、あの鬼才アファナシエフも国際コンクールの勝者。
彼は逆に昔は端正で真っ当な音楽づくりをしていたから勝てたらしい。

こうして考えてみると20世紀後半以降活躍しているピアニストは
良くも悪くもコンクール抜きでは語れない。
そうした事情は中村紘子著「チャイコフスキー・コンクール」に詳しい。

さて、この演奏、良い意味でソツがない。
平衡感に優れているが、打鍵は実にしっかり。深い音まで出している。
抒情と迫力を備える。
(↓1974年のアシュケナージ)
1974アシュケナージ
プレヴィンの伴奏もしっかり踏み込む。バランスは崩さない。
当時の両者の組み合わせはベスト。

録音はキングスウェイ・ホールでのセッション。
奥行き感と量感と適度な鮮度・分離。アナログ録音だが
現在でもしっかり通用。アシュケナージはDECCAでよかった。

12:08  2:36  6:22  11:26   計 32:32
演奏   A+   録音  92点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 トラーゼ(95)

2017.05.22 (Mon)
トラーゼ全集
トラーゼ(p)/ゲルギエフ/マリンスキー劇場管弦楽団(95、philips)は思いが重い。
トラーゼ(1952~)はこの第2番に特別な感情移入。
全集の最初に録音しこの第2番だけライナーノートを書いている。
この曲は作曲時に親友の自殺や自筆譜の焼失による10年後の再記譜などの
経緯があったが、トラーゼは親友の件をこの曲の解釈の主軸にする。

第1楽章は苦悶の日々
第2楽章は現世から逃避
第3楽章は現実回帰と直面
終楽章は混乱と浄化

と要約できようか。
このストーリーで聴いてみると確かにそのように演奏している。
自殺する人間の心象風景であり、内奧の葛藤やドロドロが噴き出す。
このため全体のテンポはじっくりで重く覆いかぶさる。
モダニズムを前面に出したベロフ盤より7分も長い。

但し、この演奏は非常に迫り狂うものがあり第3楽章あたりまで
進むと息苦しさを覚える。
この曲の新解釈ともいえるが真剣に向き合うと疲れる。
ゲルギエフも完全にトラーゼを尊重している。

録音はフィンランドのミッケリ・コンサートホールでのセッション。
ここはヘルシンキの北西210キロの小さな町でサイマー湖岸にある。
mikkeili hall
ここでゲルギエフ音楽祭が毎年7月行われていて
本録音はそれに並行して95年から3年に亘り収録。
旧フィリップスらしい量感のある音で安定感がありバランスが良い。
それにしてこんな美しい場所でこのような重い演奏が収録されたとは。

13:19  2:17  7:31  12:57   計 36:04
演奏   鬱    録音  94点

プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 ポストニコワ(83)

2017.05.21 (Sun)
prokofiev-piano-concertos-nos-2-3-postnikova.jpg
ボストニコワ(p)/ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団
(83、Melodiya)は濃厚露西亜。

ヴィクトリア・ポストニコワ(1944~)はモスクワ音楽院在学中の65年にショパン国際
コンクールで入賞。67年に卒業後69年にロジェストヴェンスキー(1931~)結婚した。
本盤はその夫婦協演となる。
ポストニコワ
ピアノは悠然と太い音を出し、慌てず騒がず進む。
女流と侮ってはいけない。
微妙なタッチに拘泥せずゴジラのような迫力。

これでまたオケが噎せ返るような妖艶幽玄な響きを上げる。
プロコフィエフの「炎の天使」を聴いているよう。
時にグロテスクな金管も登場し雰囲気満点。

こうなると細身のモダニズムとか青春の青白さとは離れる。
全曲通して聴いていると太い道をトラックに揺られている風情。
周りは明らかに今は失われたロシアの風景だが
最初から最後まで一本道だった。
beautiful-russian.jpg

録音はモスクワ音楽院大ホールでのセッション。
現在の聴いているのはヴェネチアレーベルによるリマスター盤。
デジタルの恩恵で大太鼓を伴う全奏フォルテでも飽和することなく
聴けるのでこの大ホールのホールトーンを安心して味わえる。
低域の量感が十分だが高域のキラキラ感が薄いのは
そもそもの演奏に起因することかも。

12:39  2:42  7:35  12:01   計 34:57
演奏   露A   録音  91点
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