2022.08.09 (Tue)

カンゼル/シンシナティポップス(83、TELARC)はキワモノでない立派な演奏。
本盤は通常の5曲が終わったあと
「コオロギと遠くの雷鳴」「(雷鳴の効果音入り)豪雨」が収録されている。

オケパートは同一演奏だが通常の「豪雨」とは別トラックで収録されているのが見識。
ここで使われる雷音を収録するために5年かかったと記載されている。

と同時にこの曲は電光と雷鳴のイメージを見事なオーケストレーションで
表現しているのであくまで実験的試みであるとしていることも好感が持てる。
とにかく雷鳴の威力は凄くこの部分をヘッドフォンで聴くのは非常に危険だ。
ということでそのことばかりに目が行くが本盤の価値は演奏そのものにある。
カンゼル(Erich Kunzel,1935~2009)と

彼のオケの演奏の素晴らしさとユーモアを兼ね備えたものだ。
全く手抜きせずにこの曲を愛しんでいる。
ふとしたフレーズの表現にそれが表れる。そして下品にならないのもいい。
私はバーンスタインンでこの曲に親しんできたが、これから聴くという方には
この盤をお勧めするだろう。ただし、終曲はなんの記載もないがカットされた
部分があり通常の演奏より2分ほど短い。そこが残念ではある。
録音はシンシナティ、ミュージックホールでのセッション。

テラークはデジタル初期にその録音のダイナミックさで有名になった。
これも「雷鳴の実音入り!」と宣伝されオーディオマニアも含め大いに
売れたと記憶する。オケの部分は誇張のない自然体の優秀録音。
ドンシャリではない。
5:13 5:19 8:00 4:41 7:37 計 30:50
演奏 A+ 録音 95点
2022.08.08 (Mon)

バーンスタイン/ニューヨークフィル(63、SONY)は素晴らしい描写力。
これを聴くだけでグランド・キャニオンにいった気になる。

知らんけど。(注:当方は行ったことがない・・・)
バーンスタインは大峡谷を見た時の作曲者の感動をおおらかに膨らませる。
「日の出」のスケールの大きさはいかばかりか。

「赤い砂漠」の淋しく乾いた心象風景。

「山道を行く」のとぼけた雰囲気。

「日没」のロマンティック。

「豪雨」での力感溢れるゴージャスな響き。

指揮者は乗っており、この録音時のNYPは名手揃い。
千変万化のこの風景をとらえきって最高だ。
録音はフィルハーモニック・ホールでのセッション。
このホールでの録音は出来不出来があるが
本盤はリマスターよく(2014年盤)迫力ある音を楽しめる。
5:13 5:48 7:22 5:26 8:57 計 32:46
演奏 S 録音 88
2022.08.07 (Sun)


ストロンバーグ/ボーンマス交響楽団(98、NAXOS)は
知名度ない演奏家ながら素晴らしい。
アメリカの指揮者ストロンバーグ(William Stromberg、1964~)は

ナクソスにグローフェの曲をCD2枚に6曲録音している。
「ミシシッピ組曲」(1926年)
組曲「グランド・キャニオン」(1931年)
組曲「ナイアガラ大瀑布」(1961年)
「ハリウッド組曲」(1935年)
「ハドソン川組曲」(1955年)
「デス・ヴァレー組曲」(1949年)
グローフェの作曲した管弦楽曲は数えきれないくらいあるが
今ではほとんど音盤として残っていないのでこれらは貴重だ。
演奏・録音ともに水準が高く、グローフェファンにとって必携盤。

まず「大峡谷」は正統派かつシンフォニックで妙な崩しがなくクラシック音楽的。
ただ終曲の「豪雨」の迫力はすさまじい。
それが終わり一息つく暇なく「ナイアガラ」が始まるのだが
この1曲目「瀑布の轟き」がこれまた大音響。
モソロフの「鉄工場」を思い出した。
そういえば本盤の最初の「ミシシッピ組曲」の4曲目は
「懺悔の火曜日」といってもわからないが、
「アメリカ横断ウルトラクイズ」のごきげんなテーマがいきなり流れる。
ということでお気楽にとても楽しめるCDだ。
録音は英国ドーセット、ブーレ芸術センター、ウェセックスホール
でのセッション。

広大な響きでバスドラもしっかり捉えた優秀録音。
のびやかで抜けのよい音が気持ち良い。
5:27 5:21 7:39 5:10 8:22 計 31:59
演奏 S 録音 94点
2022.08.06 (Sat)

オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(67、SONY)はこのコンビに任せて安心。
オーマンディ(1899~1985)にとってステレオ2回目の録音(初回は1957年)。
ソニーからRCAに戻った1968年以降この曲の再録音はなかった。
1957年盤はステレオ感を強調するあまりソロパートが左右に大幅に偏っていたが
この盤はそのようなことはない。全体としての完成度も上がっている。
「山道を行く」でのヴァイオリンソロのたっぷりした表情は面白い。
終曲「豪雨」はじっくり時間をかけてスケールが大きい。
旧盤はウィンドマシーンの力を盛大に借りていたが
本盤はオケのパワフルさで押し通す。
録音はフィラデルフィア、タウンホールでのセッション。
オーマンディ時代のフィラデルフィア管はホールに恵まれず、
それゆえ大きな音を無理やり出していたという噂もあるが、
最強音で硬調になる面がある。
5:14 5:33 7:54 4:42 9:23 計 32:46
演奏 A+ 録音 87点
2022.08.05 (Fri)

プリンツ(Cl)/ベーム/ウィーンフィル(72、DG)は無為自然。
聴かせてやろうとか技巧を見せびらかそうとかいう雰囲気は皆無。
流しているようにすら思える。ただ、それがいいのだ。
プリンツ(Alfred Prinz, 1930~2014)はウィーンフィルでウラッハを継ぐ名手。

自分たちのモーツァルトをやるだけ、という感じ。
演奏が始まるとウィーンフィルの音が溢れそこにそっと溶け込むクラリネット。
ただ淡々と揺らぎのように進む。楽章間のメリハリも大きくない。
終楽章は9分半を越え保有盤最長。
ロンド的ウキウキ感はそれほどなく普段の散歩を楽しんでいる風。
ということで一聴すると平板にも聴こえるが、
何とも言えない安らぎを与えてくれる。
録音はウィーン、ムジークフェラインでのセッション。

DGの勝手知ったる場所での優雅な響き。
アナログ時代の録音だが優秀。
13:01 8:06 9:31 計 30:38
演奏 S 録音 89点