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クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 タン(fp)

2019.10.21 (Mon)
タン皇帝
タン(fp)/ノリントン/ロンドンクラシカルプレイヤーズ(89、Virgin)は
フォルテピアノによる「皇帝」。そしてバックはピリオド楽団。

ベートーヴェンの交響曲では次々にオリジナル楽器による
演奏が出てくるが、ピアノ協奏曲ではそうならない。
なぜだろうか。

思うにフォルテピアノはあまり人気がないのではないだろうか?
かくいう私が苦手感あり。

オケはピリオドでもいいのだが
モダン・ピアノの煌めく音で刷り込みされた耳では
やはりくすんだ音色ではトキメキが薄れる。

初期の曲ならまだしも特に「皇帝」のような壮大な曲では
音量の非力感も否めない。

オケは方は不足感はないのだが終始ピアノのコロコロ音に
もっと頑張れと応援したくなってしまう。

またフォルテピアノは高域に行くと伸びがなく苦しさが漂う。
ベートーヴェンの時代はこの音を聞いていたのだろうが・・・。
この曲では苦手感が最後まで払拭できなかった。
演奏者には申し訳ない。また違う気分の時に聴き直したい。

録音はアビーロードスタジオ1でのセション。
楽器の音がそうなのか録音のせいなのかソフトフォーカス。
低域は軽く少し平板に感じる。

18:40  5:48  9:26   計 33:54
演奏   苦    録音  90点

ベートーヴェン 交響曲第3番 シャイー(2008)

2019.10.20 (Sun)
シャイー34
シャイー/ゲヴァントハウス管弦楽団(2008、DECCA)は快速陣営の名演。
もしリピートしなければ40分を切るスピード。

モダンオケ最速だったレイボヴィッツを彷彿とさせるが、
オケの音や録音を考えるとこの演奏に指を折る。
あまりの速さに感動している暇がないと言われるかもしれないが、
私はこの突き詰めた潔い演奏が好きだ。

シャイー(1953~)がこのオケの楽長時代の録音は注目すべきものが多い。
巨匠然として安定を求めるのでなくリスクテイクを恐れないところがいい。
これは自信の裏返しだ。
chaillt2010.jpg
第1楽章は息つく暇がない。常に前傾でありながらフォームが崩れない。
インテンポの中細部の目配りも十分。両翼配置も効果的。
コーダトランペットをワインガルトナーの改定に従っているので
原典主義というわけではない。
第2楽章はピリオド派もいれ保有盤最短の12分ちょい。
昔フルトヴェングラーの演奏を聴いてこの楽章のあまりの悲痛な重さに
辟易とした思い出があるが、この演奏ではその心配はない。
音の間を切り詰めたこの演奏は別のやり方で悲愴感を出している。
第3楽章は違和感がない。
終楽章は9分半!オケの響きが渋く室内楽的精度を持つので浮つかない。
その中で変奏の妙を出していくのは流石。

録音はゲヴァントハウスでのセッション。
gewandhaus-eventlocation-leipzig-michaelis-slider.jpg
程よく鮮明さを出しながら一定の距離と響きを取り込み
自然な感じに仕上げる。昔のDECCAとは違う音作り。

15:11  12:11  5:29  9:29  計 42:20
演奏   A+   録音  94点

ベートーヴェン 交響曲第3番 レイボヴィッツ(61)

2019.10.19 (Sat)
Rene Leibowitz
レイボヴィッツ/ロイヤルフィル(61、SCRIBENDUM)はかっ飛ばす。
全曲で42分半。痛快なスピード、前進性。そして打ち込み。

ピリオド奏法など時代考証が進んだ1980年代以降の演奏では肥大化した
ベートーヴェンの演奏様式が大きく変わってきた。それとともに作曲者の
メトロノーム指定が見直されテンポもスッキリしたものが多くなってきた。
しかしこの録音の1960年代初頭はまだまだロマン派的演奏が普通であった。

その中に突如現れたレイボヴィッツ(1913~72)
ren-leibowitz1.jpg
の演奏は全くの異端、キワモノに聴こえただろう。

しかしこの演奏は単に速いだけではない。
指揮者の深い譜読みによる各声部の明快な表出に成功している。
フルオケでこのような聞こえ方をするのは録音のマジックもあると
思うが指揮者のコントロールが効いているから。

レイボヴィッツはこの録音以前からベートーヴェンの交響曲が
スコア通り演奏されていないことを指摘していた。
保守的なリーダース・ダイジェストが会員向けの全集に
この指揮者を選んだのは知的な挑戦だったのかもしれない。
リーダーズダイジェスト
第1楽章はこの演奏の白眉。
冒頭の間髪いれない打撃に驚いている暇もなくトップギアで進行する。
しかもしっかり楔は打ち込まれ、各パーツは主張する。
終結のトランペットは補足される。
第2楽章は14分でさほど速さは感じないがしつこい重さから解放する。
第3楽章は弦の躍動が決まる。
終楽章も速いながらもごまかすことなく明確な運営。
楽器のスピーディなバトンタッチが快感を呼ぶ。
終結のブラス群の咆哮は英国オケの面目躍如。

録音はウォルサムストウ・タウンホールでのセッション。
録音陣にケネス・ウィルキンソンがプロットされ
DECCA的な明快な音作りがされている。
スクリベンダムのリマスターはややハイがきついが
鮮度を上げようとする方向なのだろう。

12:39  13:57  5:12  10:34   計 42:22
演奏   鮮    録音  87点

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 アファナシエフ(2001)

2019.10.18 (Fri)
Afanassiev12.jpg
アファナシエフ(p)/スダーン/モーツァルテウム管弦楽団
(2001、OEHMS)は耽溺思考でデリケート。

アファナシエフ(Valery Afanassiev、1947~)はロシアのピアニストであり
詩人・作家・哲学者・劇作家でもある。
彼の多方面に亘る活躍は目を見張るし著述や発言から
現代社会に対して問題意識が高いことがよくわかる。

そして彼のピアノはいつもかなり独特だ。
顕著なのはテンポで、この第1番に43分超かけている。
これは保有盤の平均35分より相当長い。
ピアノの音色は重くならず綺麗なのは好感が持てる。
ただこのテンポでは旋律線が持続できないところが散見される。
勿論そんなことは分かったうえで新たな表現に挑戦しているのだ。
ポツリポツリとしたつぶやきの中に威圧的なベートーヴェンではない
独自の寂しさや美しさを見出そうとしている。
第2楽章は完全に秋から冬の景色が見える。
Snow-in-the-forest-Late-Autumn-season.jpg
終楽章は冬の室内での寛ぎの時。無条件に大はしゃぎという感触はない。

ピアノはいつも繊細な音を出している。
蘭の指揮者スダーン(Hubert Soudant、1946~)は同世代のピアニストに
合わせている。モーツァルテウムの響きは軽く素朴な温もりがある。
最初は違和感を持って聴き始めたが次第に彼らの世界に引き込まれた。

録音は本拠地でのライブ。
Salzburg Mozarteum
しかし全く聴衆のノイズや拍手はない。
響きはこじんまりしており響き過ぎていないのでよい。

20:30  12:59  9:52   計 43:21
演奏   耽    録音  93点

ベートーヴェン 交響曲第3番 バルビローリ(67)

2019.10.16 (Wed)
バルビローリ英雄
バルビローリ/BBC交響楽団(67、EMI)は物語性。
そして「英雄」というより「悲劇的」。
バルビローリにかかるとこの曲は完全に濃厚ロマン派になる。

この盤を手にしたのは比較的最近のこと。
そもそもこの指揮者にベートーヴェンの交響曲録音があることを知らなかった
(Pye時代に1、8番があるらしい)。
しかもハレ管ではなくBBC交響楽団。
どうした事情でこの録音がされたのか知る由もない。

しかし、ちょうど同時期にこの指揮者はブラームスの交響曲全曲を
VPOといれている。それが超個性的名盤だった。
よって本盤を買わざるを得ない。

しかして、またもや個性的演奏に出会うこととなった。
演奏時間は繰り返しなしで54分超。

第1楽章の尖った雰囲気はハイ上がりの録音のせいだけだろうか。
指揮者の唸りも飛び交う。
木管の音が強調されるのは先述のブラームスと同様。
低弦が時にゴリゴリしてドスを効かせる。

第2楽章は18分超えで保有盤中チェリビダッケに次ぐ遅さ。
ここでも響きはどちらかというとガリガリ痩せてぎらついている。
よたよたとした歩みの中悲痛な音響が鳴り響く。マーラーの後期のよう。
なんと暗く陰鬱な音楽なのだ。

第3楽章は通常のテンポで進行。「英雄」を聴いて感じる前楽章との落差を
ここでは更に感じる。あの暗さはなんだったのか。

終楽章も14分と演奏時間が長い。各変奏は念を押すようにアクセントが明確。
響きを磨かずひたひた行くのはクレンペラーのよう。
変奏が一段落した中間部(7分あたり)からオーボエがしみじみ歌い
ギアダウンし回想の雰囲気が漂う。テンポは極端に沈み込んでいく。
終結にはガタゴトしながら辿り着く。
この時期のバルビ節満開。
バルビローリ
録音はアビーロードスタジオでのセッション。
録音場所の響きの乾燥が演奏の艶のなさを強調する。
リマスターはやや高音がきついと思う。同時期のVPOとのブラームスも
EMIだが場所とオケの違いが大きく出ている。

16:12  18:14  5:49  13:55   計 54:10
演奏   悲   録音 87点
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