クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

バッハ ブランデンブルグ協奏曲第6番 ヴィンシャーマン(77)

2017.11.23 (Thu)
ヴィンシャーマン
ヴィンシャーマン/ドイツ・バッハ・ゾルステン(77、RCA)は健全爽快。

ヴィンシャーマン(1920~)はドイツのオーボエ奏者、指揮者、教育者。
Winschermann-Helmut-2[1998]
今となっては懐かしい名前。最近は全く聞かないが、考えてみるともう百歳目前。
イメージとしては真面目な感じだがこの演奏は全く堅苦しくない。
むしろウキウキ感がある。そして弦の音が何だかとても良い。
ここでは各声部一人で奏されるがその割にスケール感があるのは、
非常に伸びやかに歌うからか。

第1楽章の湧き立つリズムと引き締まった弦は栗毛馬のトロット(速足)のよう。愉しい。
trot.jpg
第2楽章は弦の掛け合いバランスが見事。もたれることなくスクッと進む。
終楽章は非常に明晰な歩み。澄み切った空気の中で朝日を浴びるような魅力的な音楽。

録音はハンブルグのセオン・ムジクフィルムでのセッション。
アナログの優秀録音。会場も広すぎずしかしすっきり伸びた音は気持ちいい。
各楽器の定位、フォーカスも優秀。

5:52  4:40   5:36   計 16:08
演奏   A+     録音    93点

バッハ ブランデンブルク協奏曲第6番 パウムガルトナー(78)

2017.11.22 (Wed)
パウムガルトバー
パウムガルトナー/スーク他(78、DENON)は丁度いい塩梅。
ルドルフ・パウムガルトナー(1917~2002)はスイスの指揮者、ヴァイオリニスト。
長きにわたりルツェルン音楽祭の音楽監督を務めた。
Rudolf Baumgartner
オーストリア人でモーツァルテウムの音楽院長でカラヤンの師であった
ベルンハルト・パウムガルトナー((1887~1971)とは別人。

本演奏は指揮者のほかヴィオラ2、ヴィオラダガンバ2、チェロ1、
ヴィオローネ・コントラバス1、ハープシコード1という構成。
主導的な立場であるヴィオラ1はチェコのヨゼフ・スーク(1929~2011)が
ヴァイオリンを持ちかえ担当しているのも本盤の特色。
(なお、第6番以外はルツェルン弦楽合奏団が更に加わる)

バロック音楽演奏がモダンからピリオドに移行する時期。
編成はピリオド楽団的、一方楽器・奏法はモダン。
丁寧に奏されイ・ムジチのような解放感とは別な王道を行く演奏。
でもドイツ楽団ほどアクセントが強くない。
まるでスイスという国の立ち位置のようだ。
(同じコンビの1959年の旧盤はもっと堅い演奏だったような記憶があるが・・・)

演奏全般は穏やかなテンポで中庸の美。
特に第2楽章のヴィオラの情感豊かな二重奏が印象的。
これはピリオド奏法では難しい表現。
(↓ルツェルン音楽祭の開かれるこの街はアルプス観光の経由地で美しい)
Lucerne.jpg
録音はスイス、アールト・テアターザールでのアナログセッション。
木質感ある小ホールという印象。
オンマイクで現実的でかっちりしたデンオンらしい音。
個人的にはもう少し柔らかさがあると一層弦が映えると考える。

6:58  5:25  5:32   計 17:55
演奏    A   録音  87点

バッハ ブランデンブルク協奏曲第6番 シャイー(2007)

2017.11.21 (Tue)
シャイー
シャイー/ゲヴァントハウス管弦楽団(2007、DECCA)は独伊新旧融合。
Riccardo-Chailly1.jpg
ゲヴァントハウスというバッハゆかりのオケとイタリア人シャイーという
先入観だろうか、落ち着いた中にもヴィヴァルディの歌と光を感じる。

1960年代までのオールドスタイルのバッハとは全く違う。
1980年代以降のピリオド旋風をすっかり吸収している。
そして大ホールで聴衆を前にしたライブということも念頭に置く必要があろう。
つまりモダン・オケの今のコンサートピースとしての”ブランデンブルク”。
。シャイーゲヴァントハウス
シャイーはこのオケのマイスター(2005~16年)となってから
古典派以降の音楽にかなり踏み込んだ解釈を見せた。
ただ、この録音当時は来て間もないということと
地元のバッハということもあってか奇抜さや斬新さはない。
かくして印象は1970年代のモダン楽器のバロック団体のそれに近い。
例えば、ヴィンシャーマン/ドイツ・バッハゾリステン(77)のような。
だからどこか既視感がある。

特に第6番は全体は溌剌としながらも中庸なテンポでよく歌う美しい演奏。
ソロ浮き立たせてスッキリした音響を作る。
自然な起伏、優しいアクセント。

録音はゲヴァントハウスでのライブ。
但し聴衆ノイズは全くなく、ゲネプロ収録かとも思う。
マイクとオケは少し距離があり小さな会場のセッション収録とは少し違う音像。

6:03  4:25  5:43   計 16:11
演奏    A        録音  93点

バッハ ブランデンブルク協奏曲第6番 カザルス(64)

2017.11.20 (Mon)
カザルス6
カザルス/マールボロ音楽祭管弦楽団(64、SONY)は舞踏会。
深刻でなく屈託ないバッハ。
今の耳からすると実に大柄で洗練されない響きだが聴いていると楽しくなる。
完全なオールド・ファッション。
カザルス(1876~1973)にしてみれば『だからなんだ』だろう。
この独特の楽しさは彼の音楽性もあるかもしれないが、
マールボロ音楽祭という祝祭的雰囲気も手伝っているのだろう。
marlboro64.jpg

第1楽章の弦楽合奏は大編成のローカルオケ的。
ざらつき感はあるがリズムはしっかり刻まれ、動感は高い。
合わせるためか「コツ、コツ」という杖で床を叩くような音が聞こえる。
第2楽章の弦は讃美歌を聴くように歌われる。カザルスの本領発揮。
終楽章は再度活気ある舞踏。
村のみんなが輪になって踊る。独特なアクセントが面白い。

録音はアメリカ北東、バーモント州マールボロ大学構内ホールでのセッション。
college-photo.jpg
この音楽祭での演奏の前後に収録されたと思われる。
この場所はほんとに田舎の森の中の小さな大学、音楽学校という環境。
響きはデットで木質。体育館的音響。
Marlboro-Music-Festival-.jpg

6:27  4:59  5:33   計16:59
演奏   舞     録音  85点

バッハ ブランデンブルク協奏曲第6番 クレンペラー(60)

2017.11.19 (Sun)
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クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(60、EMI)は擬新古典的。
力みは無くスッキリ感がある。ただ不思議感も。

クレンペラー(1885~1973)は巨匠として日本で崇められているが、
彼の演奏は正統派というより風変わりな印象が強い。
道徳的に疑問符がつくような破天荒な面がある指揮者だが、
常に自分の音楽を貫いたという点では独自の芸術家。
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この演奏は勿論ピリオド系ではないがかといってロマン的な演奏でもない。
ストラヴィンスキーの「プルチネルラ」を聴くような、現代音楽視点を持ったバッハ。

なお、第6番は弦のプルトを大幅に絞り込みソロを多用した室内楽的な響き。
しかし全体はピリオド系的な溌剌感は無く、遅めのテンポで淡々と歩む。
当時としては対位法書法を浮かび上がらせた革新的演奏と言えるかもしれない。

第1楽章は脱力した行進。能面的表情とリズムがミニマル的。
第2楽章はお世辞にも美しいとは言えない。ヴィブラートのかかった萎びた系。
終楽章も遅いテンポで生気のない歩み。
終結部だけ大きくテンポを落とすのはお茶目。

全般を通じて通奏低音(チェンバロ=G・マルコム)は
あまり目立たず非常に地味な音で終始。
ゆったりとした渋い第6番でよく言えば安定感があるが、
愉悦感よりも色彩を抑えた不思議な世界を覗いた気分。
漆
録音はロンドンでのセッション。教会的でなくデットな響き。
クレンペラーの音作りの特色でもある渋柿のような音。

7:03  5:11  6:04   計 18:18
演奏   漆      録音   86点
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