クラシックCD聴き比べ ~ Classic CD Memos ~

クラシック音楽のCDを中心に演奏者への敬意を込めて、つたないメモを書いています。

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ルービンシュタイン(71)

2017.09.20 (Wed)
ルービンシュタイン2
ルービンシュタイン(P)/オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(71、RCA)は
矍鑠悠然。テンポはむしろ速めだが、いつも余裕がある。そして誤魔化さない。

ルービンシュタイン(1887~1982)の84歳での録音。
同じく80代半ばでこの曲を録音したバックハウスのものよりタッチが明快。
1929年にこの曲の世界初録音を完遂した者の矜持というのか、
慌てず騒がすの中にビシッとしたものがある。
この人を軟なショパン弾きと考えていると間違う。
強固なアクセントに込めた意志はバックハウス以上。

第1楽章はインテンポで進む。
ピアノは大家なのに着崩したりせずまっすぐ。そして優しさと強さを仄かに見せる。
これみよがしはない。そしてオーマンディもきっちりつけていく。必要にして十分。

第2楽章も流麗と言えないが一音一音しっかりタッチしていく。

第3楽章も優美な音楽に流されない真面目さ。
保有盤最短レベルでこのロマンティックな楽章を切り上げる潔さ。

終楽章は力みがない。フレーズの最後をきっちり強く。
それによってカチッとした印象が強まる。
オケは相変わらず自己主張せずピアノと協調。
清潔で実に気持ちの良い音楽を聴いた、という感想。
Artur-Rubinstein_Eugene-Ormandy_carousel.jpg

人生の終盤においても真剣に向き合える人は尊敬できる。

録音はフィラデルフィア・スコティッシュ・ライト・カテドラルでのセッション。
ここはタウン・ホールとも呼ばれるが内部の写真が殆どなく
どのようなアコースティックかはわからないが録音で聴くと色々。
高域にピークのある硬い音で潤いのない響きの場合もある。
しかしこの録音は良い出来。
アナログ的ヒス・ゴロを探そうと思えばあるが、強音での崩れはない。
ピアノの音もしっかり。

17:25  9:20  11:52  9:14   計 47:51
演奏    S    録音  87点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ツィマーマン(84)

2017.09.19 (Tue)
bernstein zimermam brahms2
ツィマーマン(p)/バーンスタイン/ウィーンフィル(84、DG)は風圧強し。
ピアノもオケも張り出しが強く足を踏ん張って聴かないと投げ飛ばされる。

ツィマーマン(ツィメルマン、Krystian Zimerman、1956~)はポーランドの
ピアニスト。1975年当時の史上最年少でショパン国際コンクールで
優勝してからずっと第一線で活躍している。
多くのアメリカのピアニストが辿ったような音楽産業の餌食にならないよう
自己抑制を貫いたから着実に進化をしている。
また、日本人と結婚し家も持つ日本贔屓。
(↓1984年、当時はまだ髭がなく爽やかな見た目)
bernstein zimermam 1984
バーンスタインはこのピアニストをかわいがっていたようだ。
この両者は実演でも多く共演し、なかなか相性が良かったと思う。
(↓1984年バーンスタインは完全にウィーンを掌握)
bernstein zimermam brahms 1984

そしてこの演奏。二人の強い意志がそのまま演奏に表出。
第1楽章冒頭のウィーンフィルはまろやかな中に秘めているのがわかる。
バーンスタインが振るとこうなるのだ。濃密な中に繊細な表現ググッと出てくる。
相変わらずの譜読み。
そしてピアノ。録音時21歳と思えない逞しい音。
しかもうねりを持った表現はすでに自分のものになっている。
指揮者に支配されていないのでちらちら火花さえ見える。
この曲が「第1番」かと思えるほどの激しさ。

第2楽章は一層燃焼度が高くピアノが巨大、オケも負けない。

第3楽章のチェロはヘルツァー。こちらはひたすら美麗なのだが
ピアノの方は燃えている。オケは粘液質。後半のチェロは影響されてか濃厚に。

終楽章はショパンのようなロマンティックさ。
バーンスタインの指揮は表情過多の一歩手前。ピアノが強い音でそれを遮る。
ピアニストの自我の発露が素晴らしい。終結まで意志は強固だ。

録音はウィーン・ムジークフェラインでのライブ。
ただし、ノイズはなくライブと書かれなければ全く分からない。
ピアノが大きくフィルアップされ周囲をオケが囲む。ホールの響きも美しい。

18:14  9:15  14:30  9:02   計 51:01
演奏   A+    録音  94点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ポリーニ(2011)

2017.09.17 (Sun)
ポリーニティレーマン1
ポリーニ(p)/ティレーマン/ドレスデン・シュターツカペレ(2011、DG)は
ドイツのシュヴァルツヴァルトのよう。深くスケールの大きな音楽に魅せられる。
ドレスデンのオケの懐の深さに聴き入る。
Schwarzwald_20170917083628d73.jpg

ところでこれをブラインドで聴いてポリーニだと思う人はどれくらいいるだろうか。
昔の硬質強固な彼の音で刷り込まれていると気づかない。
テクニックの問題ではなく、ピアニストの音が変化した。
この音楽家の過去に捉われると違和感があるだろが、
これだけを聴いているとこれはこれで素晴らしい。
録音時、ポリーニ(1942~)は齢70近く、50過ぎのティレーマン(1959~)と
協調して温かな音楽を創る。
Maurizio Pollini, Christian Thielemann
当時ティレーマンはルイージが辞任したこのオケの後任として
首席指揮者になったが、順調にスタートした。
そして25年ぶりにこのオケとの協演を果たすポリーニは
この演奏会で十八番のこの曲を選んだ。
『伝説的ピアニストが戻ってきた』という触れ込みだったようだ。

第1楽章序奏のオケは低重心でウィーンよりも分厚い音で収録されている。
所謂ピラミッドスタイルで安定感がある。
ティレーマンはそのうえで仄かなロマンを醸し出している。
そこにポリーニが入っていくが違和感が無い。
神経に触るような音は無くむしろ温厚な表情を見せながら一体となって
ブラームスを奏でる。

第2楽章は両者の長所が出る。オケはゆったり美しい。
ベームが際立たせたような低域の意志を見せつけることは無く自然体。
そして凛としたピアノ。

終楽章も対決姿勢でなく余裕を持った音楽。
終始ヒステリックさは無く重厚さの上に清涼剤的ピアノが心地よい。

録音はドレスデン・シュターツカペレでのライブ。
マス的に音が捉えられオケの後方の分離がいまいちのもっさり感があったので
モニター型ヘッドフォンで聴く。すると木質で分厚いこのオケの良さを味わった。
ピアノの音はさほどオンではなく溶け合いながらも綺麗に録れている。

21:03  12:32  11:55   計 45:30
演奏   A+    録音  91点

ブラームス ピアノ協奏曲第1番 ポリーニ(79)

2017.09.16 (Sat)
ポリーニベーム1
ポリーニ(p)/ベーム/ウィーンフィル(79、DG)はオケの香りを聴く。
ポリーニ(1942~)の3つあるこの曲の録音の最初のもの。

ベーム(1894~1981)は最晩年に差し掛かっていた。
録音時85歳だがここでは弛緩は感じない。
多分指揮の動きは少ないのだろうが、長年付き合ったウィーンフィルが
読み解いて音にしているのだろう。そして結局はこのオケの音に魅せられた。
時に秋の風。時に月夜。か細い室内楽であったり巨大な包容力を見せたり。

一方、ポリーニは十分情熱的。
ただアナログ録音の限界なのか最強音でも綺麗な音を維持できているか
というと、どうだろうか。オケは熟成し、ピアノは青春の中にいる。
Pollini-Maurizio-005[1979]

録音はムジークフェライン大ホールでのセッション。
アナログ末期でオケは良いのだが、ピアノは少し厳しい場面がある。
ピアノソロの録音ならばもっと綺麗にポリーニの音を捉えたであろうが、
オケと同時録音では制約は多い。

20:45  13:23  11:50   計 45:58
演奏   A   録音  88点

ブラームス ピアノ協奏曲第2番 ワッツ(68)

2017.09.14 (Thu)
ワッツとバーンスタイン
ワッツ(p)/バーンスタイン/ニューヨークフィル(68、SONY)は驚いた。
ピアノもオケも素晴らしい。
「驚いた」というのは、正直全く眼中になかった盤に目を醒まされたから。
他の有名ピアニストで同曲を聴いていたがつまらなくなって、
たまたま持っていたこの盤に手を伸ばした。そして先述の通り驚愕覚醒した。

アンドレ・ワッツ(André Watts, 1946~)は1960年代にアメリカで一世を風靡した
ピアニスト。ハンガリー人の母とアメリカ陸軍下士官でアフリカ系アメリカ人の父を
持ちニュルンベルクに生まれた。幼少の頃に母親から音楽の手ほどきを受け
フィラデルフィア音楽院でピアノを専攻。
10代半ばでバーンスタインに見いだされ、グールドの代役で注目を集めた。
André Watts b
見た目は完全に黒人ピアニスト。
1968年1月23日21歳の時に録音したのがこの盤。
当時米国は過激化する黒人運動やベトナム戦争などで揺れていた。
そしてキング牧師が暗殺されたのが同年の4月4日。
勿論そのようなことは関係ないのだろうが、この音楽を聴いていると
ピアニストと指揮者の時代を背負った意志を感じる。

その後70年代以降はワッツは商業ベースに乗らなくなったのか
音盤製作は途切れてしまう。従って我々の視界からは消えてしまう。
でも今でもリサイタルなどはやっている。
AWatts.jpg

さてこの演奏、まずはバーンスタイン。結構本気だ。
この若武者を盛り立てるとともに主導する。
オケは凝縮し力強くアクセントは明快。
音楽の高揚に合わせて伸縮するバーンスタイン節が聴ける。

一方ワッツは竹を割ったようなまっすぐでしなりも十分。
楽章間の性格付け、変化が乏しいと言われる可能性はあるが
剛直なまでの音は気持ちいい。バックに全くひけをとっていない。
グランドキャニオンのスケール感というより大陸横断鉄道の逞しい突進力。
音は濁らずコントロールが効いているのは天才の証。
これは思わぬ拾いものだった。

録音はエイヴェリー・フィッシャーホールでのセッション。
この会場の音響は比較的デットでスケール感や潤いが乏しい憾みは
あるがリマスターもよく当時の水準は確保。
ピアノの音も濁らずちゃんと録れている。

18:07  9:09  13:57  9:18   計 50:31
演奏   A+   録音  88点
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